ヤクザと煙草だけじゃない!笑えて驚く「異色・コメディ麻雀マンガ」傑作8選

麻雀マンガ【異色・コメディ編】
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麻雀マンガといえば、煙草の煙、ヤクザ、命のやり取り――そんなイメージを持っている人も多いだろう。確かに王道は重厚な勝負ドラマだ。だが麻雀という題材の懐は深く、政治家パロディ、ギャグ、ホラー、ドキュメンタリー、奇想天外な設定まで、ありとあらゆる方向に振り切った傑作が数多く存在する。

今回は、麻雀マンガの中でも王道から外れた異色作・コメディ作・変化球作品を8作紹介したい。「こんな麻雀マンガがあるのか」と驚いてもらえる作品が並ぶ。麻雀のルールが分かる人にも分からない人にも楽しんでもらえる、振り切ったマンガたちだ。

目次

ムダヅモ無き改革

著者:大和田秀樹/近代麻雀(竹書房)/全16巻

ムダヅモ無き改革

各国首脳が役満を撃ち合う、麻雀外交のバカバカしき大絵巻

舞台は現代の政界。日本国総理大臣・小泉ジュンイチローが、ブッシュ親子、プーチン、金正日、ヒトラー(?)といった世界各国の首脳と麻雀で激突する。麻雀の勝負で国の命運を決めるという、前代未聞の政治パロディ麻雀マンガだ。

2006年から2015年まで連載され、2017年から2022年にかけては続編「ムダヅモ無き改革 プリンセス オブ ジパング」が全13巻で完結した。2010年にはOVA化もされている。本作の魅力は、何といっても破天荒な発想とギャグセンスの炸裂ぶりだ。役満どころか役満を超える役満が次々と繰り出される。小泉ジュンイチローの代名詞「国士無双十三面待ち(ライジング・サン)」をはじめ、麻雀のルールを完全に逸脱した必殺技の数々。

麻雀のルールを知らなくても全く問題なく楽しめる。むしろ知っていると「そんな役あるか」とツッコみたくなる。実在の政治家をモデルにしたキャラクターたちが、誇張に誇張を重ねた姿で繰り広げる闘牌は、もはや麻雀マンガの皮を被った政治戯画だ。前代未聞の26ページ見開きという演出もあり、紙の媒体ならではの圧倒的迫力を体験できる。

ぎゅわんぶらあ自己中心派

著者:片山まさゆき/ヤングマガジン(講談社)/全8巻完結

ぎゅわんぶらあ自己中心派

麻雀ギャグマンガの金字塔、片山まさゆきの原点

1982年から週刊ヤングマガジンで連載された、片山まさゆきの代表作にして麻雀ギャグマンガの金字塔だ。当時の片山まさゆきはまだ学生から漫画家になったばかりの新人。新人離れした筆力と独特のセンスで一気に人気作家へと駆け上がった。

主人公・持杉ドラ夫。麻雀の裏プロで、超強運の持ち主。彼を取り巻く雀荘の常連や、各話に登場する個性派の雀士たちが繰り広げる悲喜こもごもをコミカルに描く。当時の麻雀ブームと世相のパロディを背景に、麻雀打ちたちの生態や心理を笑いに変えていく筆致は痛快そのもの。一般誌連載ということもあり、麻雀の専門用語は少なめで、ルールを知らない読者にも楽しめる構成になっている。

本作のヒットによってヤングマガジンに「麻雀ギャグ」というジャンルが定着し、後の片山まさゆき作品はもちろん、他の作家にも大きな影響を与えた。麻雀マンガといえばシリアスな勝負劇画というイメージだった当時、徹底的にギャグで通したこの作品は、麻雀という題材の幅を一気に押し広げた歴史的な一作と言える。

根こそぎフランケン

著者:押川雲太朗/近代麻雀(竹書房)/全8巻完結

根こそぎフランケン

バカヅキの大男フランケンと、屈折した雀ゴロ竹井の珍道中

地方の小さな雀荘で素人相手に細々と稼ぐ雀ゴロの竹井。かつては「コンピュータの竹井」と呼ばれた天才ギャンブラーで、カジノのオーナーまで務めた男だが、部下に裏切られて全てを失い、今は身を潜めて生きている。そんな彼の前に現れたのが、フランケンシュタインの怪物のような風貌の大男。本名も経歴も不明、ただ天衣無縫の打ち筋と聖者のような豪運だけを武器に麻雀を打ち続ける、純粋な麻雀バカ。竹井はこの大男を「フランケン」と呼んだ。

押川雲太朗の代表作の一つで、近代麻雀オリジナルにて1994年から2000年まで連載された。タイトル通り主人公はフランケンだが、物語は屈折した竹井の視点で進むことが多いという独特の構成を取る。バカヅキの権化が行く先々で勝負の場を荒らし、後にはペンペン草も生えない――その奔放な強さに振り回される竹井と、彼を勝手に師として慕うフランケンのコンビが、街から街へと渡り歩く。

物語が進むにつれてフランケンの豪運に翻弄されていた竹井の中で、何かが変わっていく。諦観に身を委ねて生きていた男が、純粋なフランケンに触発されて再び真剣な勝負へと向かう過程が本作の白眉だ。麻雀漫画でありながら、登場人物たちの博奕への向き合い方とその人間性を深く掘り下げた稀有な作品。同じ押川作品でも『麻雀小僧』のような正攻法とは違う、屈折した人間ドラマが堪能できる。

ワシズ -閻魔の闘牌-

著者:原恵一郎(協力:福本伸行)/近代麻雀オリジナル(竹書房)/全8巻完結

ワシズ -閻魔の闘牌-

あの鷲巣巌、戦後混乱期の若き日

『アカギ』に登場する闇の帝王・鷲巣巌。彼が血液を賭けた麻雀でアカギと戦うようになる、その遥か以前。昭和23年、GHQの占領下に置かれた日本で、若き日の鷲巣がいかにして「闇の帝王」へと成り上がっていったかを描いたスピンオフ作品だ。

『アカギ』の福本伸行が協力し、作画は原恵一郎が担当する。2008年から2012年まで連載された。本編とは違う、若い鷲巣の姿を見られるのが最大の魅力だ。後に「ヒヒヒ」と笑いながらアカギを追い詰めるあの怪物は、もともとどんな男だったのか。占領下の日本で、米軍将校を相手に高レート麻雀で無敗を誇った鷲巣が、どうやって裏社会のトップに登り詰めたのか。

戦後の混乱期を背景にした麻雀闘牌劇という意味では『哲也』との共通項もある。ただし主人公が「これから闇の帝王になる男」だという前提があるため、物語に独特の凄みが漂う。すでに『アカギ』を読んでいる読者には、鷲巣の原点を知る楽しみ。読んでいない読者には、強烈な悪役の若き日を描く青春群像として楽しめる。

東大を出たけれど 麻雀に憑かれた男

原作:須田良規/漫画:井田ヒロト/近代麻雀(竹書房)/全3巻完結+続編

東大を出たけれど 麻雀に憑かれた男

現役プロ雀士による、リアル麻雀ドキュメンタリー

東京大学工学部を卒業した青年・須田は、就職せずに新宿の雀荘でアルバイトを始める。そこで出会うのは、麻雀に人生を懸けた男たち。常連客、雀ゴロ、ヤクザ、サラリーマン。彼らが繰り広げる麻雀と人間ドラマを、須田の視点で描き出す半自伝的なドキュメンタリー麻雀マンガだ。

原作の須田良規は、東京大学工学部卒の実在のプロ雀士。日本プロ麻雀協会に所属し、第5期雀王のタイトルを獲得した経歴を持つ。連載は2006年から2010年まで、その後2019年から2020年にかけて続編「東大を出たけれど overtime」が連載され、単行本は全2巻で完結している。

本作の魅力は、何といってもそのリアリティだ。役満が乱れ飛ぶような派手な勝負はほとんどない。あるのは、東京の雀荘で日々繰り広げられる、地味で、生々しく、それでいて忘れがたい人間ドラマ。打ち手たちの会話、賭場の空気、勝った時の高揚と負けた時の絶望。実体験に基づくエピソードが、麻雀マンガの王道とは違う角度から、麻雀という遊戯の本質を照らし出す。雀荘という空間に流れる時間そのものを描いた稀有な作品だ。

牌賊!オカルティ

著者:片山まさゆき/近代麻雀(竹書房)/全7巻完結

牌賊!オカルティ

デジタル対オカルト、麻雀界の二大思想バトル

競技麻雀の世界。確率と効率だけを信じる「デジタル」派のカリスマ・梨積港が、麻雀界のタイトルを次々と独占していた。そこに突如現れた男・群鴎刈人。「オカルトシステム」と呼ばれる独自理論で不合理な勝利を重ね、デジタル一色の麻雀界に殴り込みをかける。両者の間で揺れ動く若手プロ・朧夏月の選んだ道とは。

片山まさゆきが2000年から2004年にかけて連載した、麻雀界の根源的な命題「デジタル対オカルト」をテーマにした作品だ。当時、麻雀界では「流れ」を否定しデータと確率に基づく打ち方を提唱する「デジタル麻雀」が広まりつつあった。本作はその時代背景を反映し、デジタルとオカルトという二つの思想を、麻雀というゲームを通じて真正面から対決させる。

魅力は、両者の打ち手たちのキャラクターと理論がどちらも魅力的に描かれている点だ。「効率の極致」を求める梨積も、「不合理を信じ続ける」刈人も、それぞれの信念に基づいて勝ち続ける。そして主人公・夏月が、二人の極端な打ち手の間でどちらにも染まらずに自分の麻雀を見つけていく成長譚としても読める。麻雀打ちなら誰しも一度は考える「ツキって本当にあるのか」という問いに、片山まさゆきが正面から挑んだ意欲作だ。

バード -砂漠の勝負師-

著者:青山広美/近代麻雀(竹書房)/全2巻完結

バード -砂漠の勝負師-

ラスベガスの天才マジシャンVS全自動卓天和

ラスベガスで活躍する天才マジシャン・バード。日本の裏麻雀界では「蛇」と呼ばれる男が、無敗を誇っていた。蛇のイカサマは「全自動卓天和」――全自動卓で意図的に天和を完成させるという、常識を超えた裏ワザだ。般若組の依頼で蛇との勝負に臨むことになったバード。箱根湖畔の対局室で、二人の常軌を逸した手品師対決が幕を開ける。

2000年に近代麻雀で連載され、わずか全2巻で完結した短編作品。だが麻雀マンガファンの間では「数ある麻雀漫画の名作と言えば?」と問われれば必ず挙がる伝説的な一作として、絶大な評価を受けている。

本作の最大の魅力は、麻雀のイカサマというモチーフを徹底的に突き詰めた緻密な構成にある。一見不可能に見える「全自動卓天和」の謎を、バードが少しずつ解析していく過程はミステリー小説のような緊張感だ。麻雀漫画の枠を超えて、漫画好きから評価される完成度を持ち、後にセルフリメイク版や続編シリーズが作られるほどの人気作となった。短編ゆえの密度の濃さが、本作を特別な存在にしている。

鉄牌のジャン!

作画:西条真二/脚本:森橋ビンゴ/近代麻雀(竹書房)/全7巻完結

鉄牌のジャン!

「30年無敗」の祖父に育てられた、麻雀荒らしの料理人

上野にある雀荘「サンバンチ」(三番地)に現れた一人の若い男。名は黒鉄雀(ジャン)。「30年無敗」と謳われた伝説の雀士・黒鉄幹二郎の孫で、祖父のスパルタ教育により料理の腕も麻雀の腕も、そしてイカサマの知識まで叩き込まれて育てられた。彼は雀荘で客に一品物の料理を振る舞いつつ、卓を囲んでは強敵を次々となぎ倒していく。

週刊少年チャンピオンで一世を風靡した料理マンガ『鉄鍋のジャン!』の作者・西条真二による、麻雀をテーマにしたスピンオフ作品だ。2015年から2018年まで近代麻雀で連載され、続編「鉄牌のジャン!VR」(全3巻)も生まれた。脚本は森橋ビンゴ、闘牌監修にはASAPINが参加するという布陣だ。

最大の魅力は、いわゆる西条版スターシステムが使われている点。『鉄鍋のジャン!』の秋山醤を彷彿とさせる風貌と性格の黒鉄雀をはじめ、原作ファンには見覚えのある顔ぶれが続々と登場する。麻雀勝負の合間に料理勝負まで挟まれる独特の展開もあり、料理マンガと麻雀マンガという全く異なるジャンルが融合した稀有な異色作だ。「勝つためなら何でもやる」というジャンの哲学が、料理から麻雀へと舞台を変えても揺るぎなく貫かれている。


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