中高生におすすめの文豪小説19選 (日本近代文学)

2022年8月16日

中高生におすすめ日本近代文学 文豪小説

中学生・高校生に読んでもらいたいおすすめの文豪小説を集めました。
日本近代文学なんて堅苦しくてつまらないと思う人も多いかもしれません。確かに旧仮名づかいで書かれていたり、今ではあまり使われない言葉があったり、慣れないと読みづらいものはあります。
でも、いまでも残っている著名な作品は、やっぱり「名作」と呼ばれるだけの面白さもあるのも事実です。

文学小説に読み慣れてない人は短編小説から読むのをおすすめしたいですね。個人的には芥川龍之介の小説は短くてストーリーも面白いものが多いと思います(ちょっと説教臭いかなと思うところもありますけれど😅)

後はやっぱり現代小説と同じで、例え名作と言われていても、合う作家と合わない作家はあると思います。太宰治の作品などはハマる人にはもの凄くハマったりしますが、合わない人には大嫌いという人も多いようです。
いまでは読みやすいように現代語に近づけている本とかもありますし、堅苦しそうと避けないで、のんびりとした気持ちで色々と読んでみてもらいたいですね。

「たけくらべ」樋口一葉

たけくらべ

<あらすじ>
明治文学を代表する小説家、歌人である樋口一葉の長篇小説。初出は「文學界」[1895(明治28)年]。全十六章から成り、吉原遊廓に接する大音寺前を舞台に、千束神社の夏祭りから、大鳥神社の酉の市までの季節の推移を共に展開していく少年少女の、いわば初恋の物語である。

明治の吉原を舞台とした、思春期の恋と友情

14歳の男女の友情や淡い恋などがテーマなので、時代が違うとは言え中高生にとって親しみを感じやすい作品なのではないかと思いました。
それまで子ども同士で遠慮なく遊んでいた関係が、思春期に入り少し変わっていく、というストーリーで、特に女子が読むと成長とともに変化する切なさのようなものが感じられ、興味深く読めるのではないかと思います。(30代女性)

明治の下町に咲いたひそやかな初恋

描かれたのは明治の半ば、作者の樋口一葉は旧士族の娘でしたが明治の時代は経済的に困窮し、母と妹を養う為彼女は遊廓近くの下町で、ささやかな駄菓子屋を営みながら小説を書いていました。「たけくらべ」はその下町を舞台に描かれています。
子供と大人の狭間で揺れる淡い恋や、生まれた家によって逆らい難い将来に導かれる子供たちの姿が生き生きと描かれます。中でも寺の息子の信行と、売れっ子の花魁を姉に持つ美登里の切ない「初恋未満」のやりとりがほろ苦い名作です。(40代女性)

「銀河鉄道の夜」宮沢賢治

銀河鉄道の夜

詩情あふれる美しい日本語でかかれた友情物語

銀河鉄道の夜は中高生におすすめの近代日本文学小説です。
東北岩手がうんだ作家、宮沢賢治による詩情あふれる文体はうつくしく、旧仮名遣いではなく現在の仮名遣いでかかれたバージョンならば、ふだんあまり本を読んでいない中高生にも読みやすいとおもわれます。
ジョバンニとカムパネルラの友情と、かれらが銀河鉄道で出会う人々とのふれあいと別れをつづったこの作品は、年齢を問わず多くの人の心をつかんだ名作です。(40代女性)

「羅生門」芥川龍之介

羅生門

男の心の変化が見事に描かれている。

都が荒れている様を羅生門の上が死体の投棄場所となっていることで表しているおそろしい描写と、老婆と下男のやり取りから、下男が、最初は迷っていたが最後には覚悟が定まっていくまでの心境の変化が、直接的にでなく書かれているのに、かえってよく伝わってくるところが良いです。下男が老婆の着物を剥ぎ取って闇の中へ走り去っていくところも恐ろしさを表しています。

「坊ちゃん」夏目漱石

坊ちゃん

<あらすじ>
松山中学在任当時の体験を背景とした初期の代表作。物理学校を卒業後ただちに四国の中学に数学教師として赴任した直情径行の青年“坊っちゃん"が、周囲の愚劣、無気力などに反撥し、職をなげうって東京に帰る。主人公の反俗精神に貫かれた奔放な行動は、滑稽と人情の巧みな交錯となって、漱石の作品中最も広く愛読されている。

今読んでも面白い痛快小説

文豪夏目漱石の痛快小説としても有名ですが、現代に生きる私たちが読んでも笑える箇所はたくさんあると思える作品です。
教師として松山に赴任してきた主人公は、多くの教師や生徒と折り合いが悪いのですが、その仲の良くないありさまを暗く描くのではなく、読者にとっては「笑える」ようにユーモアたっぷりに描いています。
この作品は元々、俳句雑誌に連載されていたのですが、俳句が好きな人々をディスる箇所もあり、いまのサブカルチャー雑誌にも見受けられる「読者にとっての自虐ネタ」のような部分も時代を先取りした、笑える小説だと思います。(40代女性)

「よだかの星」宮沢賢治

よだかの星

<あらすじ>
みにくい鳥だと、みんなからいじめられるよだか。タカからは「名前を盗った」とどろぼう扱いまでされ、返さないと殺すと脅される始末。居場所がなくなったよだかは、あちこちをさまよい、ついには……。

現在のいじめ問題にも語りかける宮沢賢治の切ない名作を、原文のままに読みやすく改編しました。

醜いよだかが自分の存在に嘆きそして力強く空に飛んでいく物語

外見が醜くて周りから嫌われているよだかが自分の不運に嘆きながらも力強く命を輝かせるお話です。

周りの鳥からまるで存在を許されないような扱いを受けてしまったりそんな弱い立場でありながらも、最後まで自分の力を振り絞るよだかの姿はまるで「自分はここに存在しているんだ!」とでも言わんばかりにどの鳥よりも強く存在感を表します。そんなよだかの姿に感動し、またよだかという存在が私達の心の中に力強く残ります。(30代女性)

「高瀬舟」森鴎外

高瀬舟

<あらすじ>
弟殺しの罪で島送りとなる喜助。彼を高瀬舟で護送する同心の羽田庄兵衛。同心は罪人である喜助の晴れやかな態度に疑問を持ち、理由を聞く。喜助は島送りに当たって二百文の銭をもらったと喜んでいる。また、弟殺しの経緯を聞くにおよんで、これが果たして殺人に当たるかどうか。同心、羽田は疑問を感じる。

罪人と船渡しの対話から安楽死の是非を問う物語

時は江戸。主人公羽田庄兵衛は罪を犯した人間を島へ流す船渡しをしている。ある日庄兵衛は実の弟を殺した喜助の船渡しを担当するが、喜助は他の罪人と違って人柄がよい。けれども人を手にかけたにも関わらず晴れ晴れとした表情をしていた。長年船渡しをしていた庄兵衛は好奇心が抑えられずにその理由を尋ねるが、そこには衝撃の理由があった、という内容です。

この本を読んで自分が喜助の立場だったら、どう行動するか絶対考えてしまうでしょう。加えて、現実でも似たような事件が実際に起きているので、ある意味現代のとある社会問題をこの小説では捉えています。だから将来医療系や介護系の職業を目指している人だけでなく、今を生きる全ての中学生や高校生に一読してほしい作品です。(20代女性)

誰のための「法」なのか

人のことを考えて行動してそれがよい結果となるのは好ましいです。しかし、その結果が好ましくない結果になることも多々あります。
このお話は相手を思やるばかりに弟がとった行動により兄が罪人となり流されていく話です。しかし、ここには「法」で裁かれた兄は本当に法で裁かれなければならなかったのか。その原因を作ってしまった弟、もしくはお金のないと生きることができない社会のが悪いのか。
様々な問題を提示した本作品は読後から何らかの感動が起こること請け合いです。(20代男性)

「吾輩は猫である」夏目漱石

吾輩は猫である

<あらすじ>
近代の日本文学史上、最も豊富かつ奔放な風刺文学の王者。ユーモア・ウィット・風刺の宝庫である。漱石の処女作であると共に、一躍その名をたかめた代表作でもある。苦沙弥先生に飼われる一匹の猫にたくして展開される痛烈な社会批判は、今日なお読者の心に爽快な共感を呼びおこす。

猫目線から見た人間模様

学校の教科書にも載っている作品ですが、授業で用いられなかったり、最後まで読むことがないので結末を知っている人は少ないと思います。さらに客観的に猫の目線から人間生活に対してシュールに解説しており、描かれる人間生活は現代にも通じる点が多くて色々と気づかされます。そして、ストーリー展開もコミカルなので、中高生も読みやすいです。(40代男性)

「野菊の墓」伊藤左千夫

野菊の墓

<あらすじ>
「野菊のような民さんが好きだ」お互いに好意を持っている幼ななじみだがいつしか恋心に育っていた。しかし周囲は2歳年上の民子を嫁にすることを許さない。民子は縁談があり他家へ嫁いでしまうが流産で命を落としてしまう。その手には政夫の写真と手紙が堅く握られていた。何度も映画化された伊藤左千夫の珠玉の純愛小説。(明治時代のお話です)読みやすくするため現代の言葉に近づけました。

男女のピュアな初恋の物語

若い男女同士の友愛が描かれるものでした。幼馴染みの従姉妹同士として一緒に育ってきた二人の間にゆっくりと生まれる恋心を描いています。その汚れ無き純粋な過程を綺麗な文体で描く点が良かったです。ヒロインがいつまでも変わらぬ愛の思いを抱きながらも主人公から離れて暮らし、悲しい最後を迎えてしまう点に泣けます。いくら離れても愛した者への想いを貫いた清い恋心に感動できるものでした。(30代男性)

「蜘蛛の糸」芥川龍之介

蜘蛛の糸

自分の事だけを考える男が奈落に落ちる物語

アニメにもなっているので一度は耳にしたことのある作品だと思います。
まず主人公は昔、1匹の蜘蛛を助けます。その慈悲の心を仏は見ており、地獄に落ちた主人公を1度だけ助けてやろうと考えます。そこで1本の蜘蛛の糸を垂らします。
それをつかむ主人公は、その蜘蛛の糸に吊られて天国へ向かっていきます。そんな時、地獄の者たちが自分も連れて行ってくれとしがみついてくるのです。自分だったらその瞬間どうするだろう…と考えさせられる作品です。
皆が不幸でも自分さえよければいい、という人間の奥底の心が描かれており自分の行動を見直すきっかけになると思います。(30代女性)