サッカー好きに読んでほしい小説11選|Jリーガーも支持する名作からサポーター群像劇まで

おススメのサッカー小説
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サッカーの魅力は、90分のピッチの上だけにあるわけではない。

スタンドで声を枯らすサポーターの人生に、海外で孤独と戦う若き選手の胸の内に、代表監督を選ぶ舞台裏の駆け引きに――ボールが転がるところには、いつだって人間のドラマが生まれている。

ところが「サッカー小説」というジャンルは、野球小説や陸上小説に比べると、意外なほど知られた作品が少ない。サッカーの動的な魅力を文章で表現することの難しさがその一因だろう。だからこそ、その壁を越えてきた作品には独特の熱量がある。

今回は、選手目線の青春小説からサスペンス、サポーター群像劇、そして海外文学まで、サッカーを愛するすべての人に届けたい11作品を紹介する。サッカーに詳しくなくても大丈夫。ここにあるのは「サッカーを通じて描かれた、人間の物語」だから。

目次

龍時 01-02

著者: 野沢尚 出版社: 文藝春秋(文春文庫)/全3巻(01-02、02-03、03-04)

龍時

退路を断った16歳が、スペインの地で見た世界

無名の高校生・志野リュウジは、スペインU-17との親善試合に緊急招集されたことをきっかけに、世界のレベルを肌で知る。そして家族との葛藤を抱えながらも、単身スペインに渡る決断を下す。

この作品が他のサッカー小説と一線を画すのは、プレーの描写が圧倒的にリアルであること。著者の野沢尚は脚本家としても知られる実力派で、試合のシーンは本当にスタジアムにいるような臨場感がある。言葉の壁、人種の壁、実力の壁――リュウジが一つずつ乗り越えていく姿に、Jリーガーたちからも高い支持が寄せられた。

残念ながら著者の急逝により未完となったシリーズだが、だからこそ3巻に込められた熱量は凄まじい。完結しなかったことが惜しまれる、日本サッカー小説の金字塔。

悪魔のパス 天使のゴール

著者: 村上龍 出版社: 幻冬舎(幻冬舎文庫)

悪魔のパス 天使のゴール

セリエAの闇に踏み込んだ、芥川賞作家の本気

セリエAでプレーする日本人選手・夜羽冬次から、試合中に心臓麻痺で亡くなる選手たちの調査を依頼された作家の矢崎。調べを進めるうちに、死を招くドーピング剤の存在にたどり着く。イタリア、南フランス、キューバと舞台を移しながら、冬次自身にも危険が迫っていく。

村上龍はサッカーへの造詣が深く、中田英寿との交友でも知られる。本作の最大の見どころは、クライマックスのユベントス戦の描写。100ページ以上にわたって綿密に描かれた試合シーンは、ジダンやデル・ピエロといった実在の選手たちが躍動し、読んでいるこちらの心拍数まで上がってくる。

「サッカー×サスペンス」という青春小説の枠を鮮やかに飛び越えた一冊。ストーリーのオチよりも、あの試合描写のために読む価値がある。

ディス・イズ・ザ・デイ

著者: 津村記久子 出版社: 朝日新聞出版(朝日文庫)

ディス・イズ・ザ・デイ

22のチーム、22の人生、最終節の「その日」へ

架空のサッカー国内2部リーグ、22チームのサポーター22人の物語。職場のパワハラに悩む会社員、別々のチームを応援することになった家族、十数年ぶりに再会した祖母と孫――それぞれがリーグ最終節の「その日」に向かって歩いていく、一話完結の連作小説集。

芥川賞作家の津村記久子が描くのは、選手ではなく「観る側」の人生。サッカーそのものよりも、サッカーがある日常がどれほどかけがえのないものかを、静かに、でも確かに伝えてくれる。スタジアムに足を運んだことがある人なら、どこかの話で必ず目頭が熱くなるだろう。

第6回サッカー本大賞を受賞。小説として同賞を受賞したのは本作が初めてだった。30近いメディアで書評が掲載されたことも、この作品の持つ普遍的な力を物語っている。

誉れ高き勇敢なブルーよ

著者: 本城雅人 出版社: 東京創元社(単行本)/講談社(講談社文庫)

誉れ高き勇敢なブルーよ

日本代表の新監督を探せ――25日間の闘い

W杯で惨敗した日本代表を立て直すため、新監督の招聘を託されたのは、かつて「日本サッカー界の裏切り者」と呼ばれた男・望月だった。サッカー協会内の派閥争い、マスコミの横槍、代理人の思惑が複雑に絡み合う中、たった25日間で新監督との契約を成立させなければならない。

元スポーツ記者という著者の経歴が、この作品に尋常でないリアリティを与えている。試合そのものの描写はほとんどなく、描かれるのは監督選考という「ピッチの外の戦い」。だが、そこにはピッチ上と同じくらいの緊張感と駆け引きがある。

代表監督の交代が報じられるたびに思い出す一冊。あのニュースの裏側で何が起きているのか、想像力をかきたてられるスポーツサスペンス。

アイム・ブルー サッカー日本代表「もう一つの真実」

著者: 木崎伸也(イラスト:ツジトモ) 出版社: 講談社

アイム・ブルー

80%の事実と20%の創作が描く、代表チームの内側

2030年のW杯に挑む日本代表。混迷する予選を経て、チームはどのように成熟していったのか。サッカージャーナリスト・木崎伸也が、代表チームへのディープな取材をもとに、フィクションだからこそ描ける「勝敗を超えた真相」に迫った。

「スポーツナビ」での大人気連載を大幅加筆して書籍化された本作。挿絵はサッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが手がけており、サッカーファンにはたまらない組み合わせだ。

戦術論に基づいた人間ドラマが読みどころで、チーム内のヒエラルキーや監督と選手の確執、そして結束へ至る過程がリアルに描かれる。日本代表の試合を観るたびに「あの裏側ではこういうことが起きているのかもしれない」と思わせてくれる一冊。普段読書をしない人でも、サッカー好きなら一気に読み通せる。

サッカーボーイズ 再会のグラウンド

著者: はらだみずき 出版社: KADOKAWA(角川文庫)

サッカーボーイズ 再会のグラウンド

少年サッカーの「あの頃」が、鮮やかによみがえる

ジュニアサッカーチーム・桜ヶ丘FCの武井遼介は、6年生になったとたんにキャプテンの座もレギュラーのポジションも失い、初めての挫折を味わう。新しくやってきた監督・木暮との出会いを経て、遼介は自分がサッカーをやる意味を改めて見つめ直していく。

著者のはらだみずき自身が少年サッカーチームのコーチを務めた経験があり、子どもたちの心理描写がとにかくリアル。監督やコーチの葛藤、保護者の気持ちまで丁寧に描かれていて、サッカー少年の親御さんが読むと涙腺が崩壊すること請け合いだ。

小学生編から中学生編、高校生編(U-18)まで続くシリーズ作品で、遼介の成長を長く見守ることができる。1冊が1年間という構成なので、リズムよく読み進められるのもうれしい。

ホームグラウンド

著者: はらだみずき 出版社: 本の雑誌社(単行本)/KADOKAWA(角川文庫)

ホームグラウンド

荒れた休耕地に芝生のグラウンドを――71歳の夢

建設会社に勤める圭介は、祖父・雄蔵の広大な休耕地にマンションを建てる提案をしていた。ところが脳卒中から回復した雄蔵は突然その話を断り、荒れ果てた土地をひとりで耕し始める。「芝生の上でサッカーをする子どもたちを眺めたい」――それが71歳の老人の夢だった。

サッカーの試合シーンは登場しない。けれどこの物語の根っこには、「子どもがボールを蹴る場所がない」という日本のリアルな問題がある。公園ではボール遊び禁止、校庭は開放されない。そんな現実の中で、ひとりの老人が土を耕し、芝を植え、夢を形にしていく。

三代にわたる家族の葛藤と再生が、グラウンドの完成と並行して描かれる構成が見事。読後に残るのは、映画『フィールド・オブ・ドリームス』を観終えたときのような、静かで温かな余韻だ。

銀河のワールドカップ

著者: 川端裕人 出版社: 集英社(集英社文庫)

銀河のワールドカップ

元Jリーガーと三つ子が出会う、少年サッカーの冒険

求職中の元Jリーガー・花島は、公園で小学生たちとサッカーをするうちに、とんでもないプレーを見せる三つ子に出会う。その才能に心を奪われた花島は、少年サッカーチームのコーチとして彼らを率いていくことになる。

NHKアニメ『銀河へキックオフ!!』の原作としても知られる本作。漫画的な展開やミーハーな要素もあるが、後半にかけての盛り上がりは胸が熱くなる。最強のライバルが仲間に加わる王道展開も、この作品では素直に楽しめる。

スピンオフ作品『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』では、本編に登場する俊足女子プレーヤー・エリカが主人公として活躍する。本編が気に入った方は、こちらもぜひ。

ホケツ!

著者: 小野寺史宜 出版社: 祥伝社(祥伝社文庫)

ホケツ!

部活でも、家庭でも、ぼくはレギュラーじゃない

高校3年のサッカー部員・宮島大地は、同学年10人の中で唯一の補欠。公式戦に一度も出たことがない。中学に上がる前に母親を亡くし、母の姉である伯母と二人で団地暮らしを続けているが、伯母には「レギュラーで活躍している」と嘘をついてしまっている。最後の大会が迫る中、12年前に家を出た実父から突然「一緒に暮らそう」と連絡が入り――。

『ひと』で本屋大賞2位に輝いた小野寺史宜による、静かで温かいサッカー小説。この作品には派手な試合シーンも逆転劇もない。描かれるのは、レギュラーになれない自分への劣等感と、それでもサッカーを続ける理由を探す日々。熱血とは対極にある物語だが、だからこそ胸に染みる。

登場人物の多くが、意図的に優しいわけではなく、ただ当たり前のように人に親切。その「当たり前の優しさ」に触れるたびに、いつの間にか目頭が熱くなっている。スポーツをやったことのある人なら誰もが経験する「自分だけのポジション」を見つけるまでの物語。

レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部

著者: 綾崎隼 出版社: KADOKAWA(メディアワークス文庫)/シリーズ全6巻

レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部

廃部寸前の名門を、知性で甦らせろ

私立赤羽高等学校サッカー部、通称「レッドスワン」。全国大会出場9回を誇る新潟屈指の名門だが、不運なアクシデントが続き、チームは崩壊の危機に瀕していた。試合中の負傷で選手生命を断たれた少年・高槻優雅は、ただその惨状を見つめることしかできない。しかし、廃部寸前に現れたのは異例の女性監督・舞原世怜奈。彼女は優雅をパートナーに選び、知性と戦術でチームの意識を根底から変えていく。

恋愛ミステリーの名手として知られる綾崎隼が、自身のサッカー愛を全力で注ぎ込んだ青春サッカーシリーズ。主人公がプレーヤーではなくコーチ的立場から戦うという設定が新鮮で、データと理論で勝利を目指す展開は、従来のスポーツ小説とは一味違う読み応えがある。

シリーズは全6巻で、巻を追うごとに加速度的に面白さが増していく。サッカーのルールに詳しくなくても存分に楽しめるので、1巻の試合シーンで手に汗を握ったなら、一気読みは避けられない。

ぼくのプレミアライフ

著者: ニック・ホーンビィ(訳:森田義信) 出版社: 新潮社

ぼくのプレミアライフ

アーセナルに人生を捧げた男の、おかしくて切ない告白

イングランドのサッカークラブ・アーセナルFCの熱狂的サポーターである著者が、サッカー観戦と切り離せない自らの人生を綴った自伝的エッセイ小説。イギリスでは100万部を超えるベストセラーとなった。

少年時代に父親に連れられて初めてスタジアムに行った日から、アーセナルはホーンビィの人生そのものになった。恋愛も仕事も友人関係も、すべてがアーセナルの試合結果と連動してしまう。その滑稽さと、同時にどうしようもない愛おしさ。「好きなものがある人生」の喜びと苦しみが、ユーモアたっぷりに描かれている。

サッカーファンなら共感しすぎて笑い、そうでない人は「ここまでハマれるものがあるのか」と驚く。どちらにしても読後は、自分の「好き」を大切にしたくなる。コリン・ファース主演で映画化もされた名作。


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