猫好き必見の邦画11作品 涙と笑いの名作を一挙紹介

【邦画】猫の映画
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猫がスクリーンに現れるだけで、その作品の空気はふっと柔らかくなる。鳴き声ひとつ、寝そべる仕草ひとつで、人間の物語の重さや痛みがやさしく解きほぐされていく。猫はただ可愛いだけではない。寡黙で、気まぐれで、こちらの感情をちゃんと見抜いている。だからこそ猫が主人公や鍵になる映画は、人と動物の関係を超えて「人と人」「自分自身との対話」の物語になる。

今回は、猫が主人公、あるいは物語の中心で大切な役割を担う邦画を11本紹介する。実写の名作からアニメーション映画まで、笑いも涙もある11作品。猫好きはもちろん、猫を飼ったことがない人にも刺さる物語ばかりだ。

目次

旅猫リポート

監督:三木康一郎/原作:有川浩/講談社/2018年公開

旅猫リポート

一匹と一人がたどる、最後の道

元野良猫のナナは、交通事故にあったところを心優しい青年・悟(福士蒼汰)に助けられ、5年間飼い猫として暮らしてきた。しかしある事情からナナを手放さなくてはならなくなった悟は、新しい飼い主を探してかつての友人や恩人を訪ねる旅に出る。銀色のワゴンに乗った一人と一匹のロードムービー。

物語のすごみは、ナナの「心の声」(声:高畑充希)にある。ツンデレで皮肉屋なナナの語りを通して、悟が歩んできた人生がゆっくりと浮かび上がってくる。北海道、富士山、海。日本各地の景色とともに、なぜ悟は旅に出たのか、その理由が少しずつ明らかになっていく。原作は世界16か国で翻訳された有川浩のベストセラー。終盤に訪れる感情の波は、人間と動物の絆を信じる人すべてに届く。

猫侍

監督:山口義高/主演:北村一輝/2014年公開

猫侍

人は斬れども猫は斬れず

かつて百人斬りと恐れられた寡黙な剣豪・斑目久太郎(北村一輝)は、いまや浪人となり生活に困窮していた。そんなある日、飼い主を骨抜きにする魔性の猫を斬ってほしいという仕事が舞い込む。屋敷に乗り込んだ久太郎が出会ったのは、あまりに愛らしい白猫・玉之丞だった。

ドラマシリーズから劇場版へと展開した時代劇コメディ。北村一輝の濃すぎるコワモテと、玉之丞のふわふわボディのコントラストが反則的に効く。久太郎の心の声で進む内面実況がシュールで、笑いが止まらない場面が次々とやってくる。血生臭いシーンが一切ない時代劇、というのも珍しい。家族で観ても、独りで観ても、玉之丞のザルにすっぽり収まる尊さに胸を打ち抜かれる。

世界から猫が消えたなら

監督:永井聡/原作:川村元気/2016年公開

世界から猫が消えたなら

大切なものを消すたびに、本当の輪郭が見えてくる

脳腫瘍で余命わずかと宣告された30歳の郵便配達員(佐藤健)の前に、自分とそっくりな悪魔が現れる。世界から何かひとつ「もの」を消すことで、寿命を1日延ばすという契約。電話、映画、時計、そして愛猫キャベツ。何かを消すたびに、それにまつわる思い出や人間関係も一緒に失われていく。

川村元気の小説をもとに、佐藤健が「僕」と「悪魔」の二役を演じきった一作。アルゼンチンのイグアスの滝、北海道の風景、そして都会の小さなアパート。映像の情緒がたっぷりとあって、宮崎あおい、濱田岳、奥田瑛二、原田美枝子といった共演陣もそれぞれの場面で深い余韻を残す。猫のキャベツ(とその先輩猫レタス)の存在感が、物語の核心に静かに寄り添っている。

猫なんかよんでもこない。

監督:山本透/原作:杉作/2016年公開

猫なんかよんでもこない。

猫嫌いの男に、ある日突然降ってきた2匹の家族

崖っぷちのプロボクサー・ミツオ(風間俊介)のもとに、漫画家の兄(つるの剛士)が拾ってきた2匹の子猫、チンとクロが転がり込んでくる。もともと犬派で猫嫌いだったミツオは、自由奔放な2匹に振り回される日々を送ることになる。やがて、目の怪我でボクサー人生を絶たれたミツオの前に、猫たちは別の意味を持って現れはじめる。

杉作の自伝的コミックの実写化で、夢と現実の狭間で踠く青年の姿を、猫との生活を通してじんわりと描く。風間俊介は撮影の待ち時間も猫と過ごし続け、絆を深めたうえで撮影に臨んだという。子猫の戯れ合いはほとんど反則の可愛さで、その奥に流れる「兄弟と別れた後の人生」「夢を諦めることの痛み」というテーマがじわじわ効いてくる。松岡茉優、市川実和子ら脇のキャストも光る。

グーグーだって猫である

監督:犬童一心/原作:大島弓子/2008年公開

グーグーだって猫である

吉祥寺の街と、猫がそばにいる毎日

吉祥寺で暮らす漫画家の麻子(小泉今日子)は、13年連れ添った愛猫サバを亡くし、漫画が描けなくなってしまう。そんなある日、ペットショップで運命的に出会った子猫を「グーグー」と名づけて飼いはじめたことで、麻子の日常はゆっくりと色を取り戻していく。

少女漫画の巨星・大島弓子の自伝的エッセイ漫画を、犬童一心が映画化。井の頭公園、いせやの吹き抜け、PARCOの電光掲示板。2008年当時の吉祥寺の空気がたっぷりと焼き付けられていて、その街並みだけでも観る価値がある。上野樹里、加瀬亮、森三中の3人ら、麻子のまわりの人々の何気ない会話の中に、生と死を見つめる視線がそっと混じり込んでいる。細野晴臣の音楽がやさしく全体を包み込む。

猫の恩返し

監督:森田宏幸/原作:柊あおい/企画:宮崎駿/2002年公開

猫の恩返し

自分の時間で生きていけ

女子高生のハル(声:池脇千鶴)は、車にひかれそうになっていた猫を助ける。それは猫の国の王子ルーンで、その恩返しとしてハルは猫の国に招かれ、王子の妃にされそうになる。困ったハルは、不思議な声に導かれて辿り着いた猫の事務所で、猫の男爵バロン(声:袴田吉彦)に助けを求める。

スタジオジブリ作品で、宮崎駿が企画を手がけ、柊あおいの原作コミックをもとに森田宏幸が監督デビューを飾った。「耳をすませば」のスピンオフ的な位置づけで、月島雫が書いた物語という設定になっている。気楽な猫の生活に流されかけたハルが「自分の時間で生きていく」と決意するまでの75分。短くまとまった冒険ファンタジーで、つじあやのが歌う主題歌「風になる」とともに、夏の風が吹き抜けるような心地よさが残る。

先生と迷い猫

監督:深川栄洋/2015年公開

先生と迷い猫

失ってから気づく、声をかけることの意味

定年退職した元校長の森衣恭一(イッセー尾形)は、妻に先立たれて以来、堅物で偏屈な性格から近所では浮いた存在になっていた。亡き妻が可愛がっていた野良猫のミイが毎日妻の仏壇の前に座りに来るのを、森衣は煙たがっている。ところがある日、ミイが姿を見せなくなる。

埼玉県岩槻で実際にあった地域猫捜索のノンフィクション「迷子のミーちゃん」を原案にした作品。猫がいなくなって初めて、その存在の大きさに気づく――そんな普遍的な感情を、イッセー尾形の繊細な演技がすくい上げる。染谷将太、北乃きい、ピエール瀧、もたいまさこ、岸本加世子、佐々木すみ江と、超豪華な脇役陣が街の人々を演じ、商店街全体が一匹の猫を探しはじめる過程に、人と人がもう一度つながり直していく温度がある。三毛猫ドロップが代役なしで全編1匹で演じきった点も、当時話題となった。

ねことじいちゃん

監督:岩合光昭/原作:ねこまき/主演:立川志の輔/2019年公開

ねことじいちゃん

全シーン、どこかに必ず猫がいる

数年前に妻を亡くした70歳の大吉(立川志の輔)は、小さな島で愛猫タマと2人きりで暮らしている。幼なじみの巌(小林薫)をはじめ多くの友人や猫がいる、穏やかな島の日々。しかし、親しい友人の死や自分自身の体の不調など、ずっと続くと思っていた日常に少しずつ変化が訪れはじめる。

世界的動物写真家・岩合光昭の映画初監督作品で、舞台は愛知県の佐久島。落語家・立川志の輔がじいちゃんを演じる。ねこまきの人気コミックエッセイが原作で、観るというより「島の風と猫の体温に触れる」感覚に近い。柴咲コウ、小林薫、田中裕子、柄本佑ら実力派が脇を固め、35匹もの猫たちが画面のあちこちに息づいている。岩合監督が「全シーンどこかに必ず猫がいる」と宣言した通り、まさに猫好きへの大盤振る舞いの一本。

ルドルフとイッパイアッテナ

監督:湯山邦彦・榊原幹典/原作:斉藤洋/2016年公開

ルドルフとイッパイアッテナ

大都会で生きるノラ猫の流儀を、教えてやるよ

岐阜の家でリエちゃんと幸せに暮らしていた黒猫のルドルフ(声:井上真央)は、ひょんなことから長距離トラックに迷い込み、見知らぬ大都会・東京に運ばれてしまう。途方に暮れるルドルフを救ったのは、街を牛耳る巨漢のトラ猫・イッパイアッテナ(声:鈴木亮平)。「おれの名前はいっぱいあってな」と豪快に名乗るそのボス猫は、文字を読めるという驚きの能力の持ち主だった。

斉藤洋の児童文学を3DCGアニメーション化した作品で、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞している。義理人情に厚いイッパイアッテナの渋さと、世間知らずなルドルフの初々しさのコンビが絶妙。猫の毛並みや街の風景の質感が美しく、子ども向けアニメと侮ると痛い目を見る。「教養を身につけて生きる」というイッパイアッテナの言葉が、見終わった後にじわっと胸に残る。鈴木亮平の声優としての器用さに驚かされる作品でもある。

化け猫あんずちゃん

監督:久野遥子・山下敦弘/原作:いましろたかし/2024年公開

化け猫あんずちゃん

37歳の化け猫と、11歳の少女のひと夏

豪雨の日、お寺の和尚さんが段ボールの中で鳴いていた子猫を拾い、「あんず」と名づけて大切に育てた。ところが10年20年と経ってもあんずは死なず、30年が過ぎた頃には人間の言葉を話す「化け猫」になっていた。原付バイクに乗って按摩のアルバイトに通う37歳のあんずちゃん(声・動き:森山未來)のもとに、行方知れずだった和尚の息子が11歳の娘かりんを連れて帰ってくる。

いましろたかしの漫画を原作に、アニメーション作家・久野遥子と実写映画の名手・山下敦弘が共同監督を務めた日仏合作のロトスコープ・アニメ。実写で撮影した俳優の演技をアニメに置き換える手法で、森山未來の動きと声がそのままあんずちゃんの飄々とした魅力になっている。母親に会いたいというかりんの願いから、地獄まで巻き込んだ逃走劇へと発展していく後半の展開も独創的。アヌシー国際アニメーション映画祭やファンタジア国際映画祭でも高評価を得た、唯一無二の手触りを持つ作品だ。

泣きたい私は猫をかぶる

監督:佐藤順一・柴山智隆/脚本:岡田麿里/2020年公開

泣きたい私は猫をかぶる

猫になれば、好きな人にもっと近づける

中学2年生の笹木美代(声:志田未来)は、ちょっと風変わりで明るい性格から「ムゲ(無限大謎人間)」と呼ばれている。彼女は片想い中の同級生・日之出(声:花江夏樹)に毎朝アタックを続けているが、まったく相手にされていない。実はムゲは、猫に変身できる不思議なお面を手に入れていた。猫の姿で日之出に近づき甘えるムゲだが、人間の世界と猫の世界の境界が次第にあやうくなっていく。

スタジオコロリド制作、脚本は「あの花」「ここさけ」の岡田麿里。複雑な家庭環境の中で「いい子」を演じるムゲの心の中を、猫というモチーフで鮮やかに反転させる。人間でいるときに仮面をかぶり、猫になっているときに本心が出るという捻じれた構造が見どころ。主題歌、挿入歌、エンドソングをすべてヨルシカが書き下ろしており、楽曲と映像が見事に重なる。Netflixで世界配信され、海外でも高い評価を獲得した青春ファンタジーの良作。

りを楽しみたいなら旅猫リポートやねことじいちゃん、笑いと癒しが欲しいなら猫侍、青春の痛みに浸りたいなら泣きたい私は猫をかぶる。今夜の気分に合わせて選んでみてほしい。スクリーンの向こうで、あなたを待っている猫がきっといる。


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