ロボットアニメを語る上で、絶対に避けて通れないのが「ガンダム」である。 1979年の『機動戦士ガンダム』から始まったこのシリーズは、半世紀近く経った今もなお新作が作られ続け、世代を超えて愛され続けている、日本アニメ史上最大級のフランチャイズだ。
ただ作品数が多すぎて、これからガンダムを観てみたい人にとっては入り口を選ぶだけでも難儀する。 そこで今回は宇宙世紀(『ファースト』から連なる正史的世界)から6作、アナザーガンダム(独立した世界観で展開される諸シリーズ)から6作の計12作品を選んだ。
リアルロボット系の頂点として、そして人間ドラマとしての深みも持つガンダムシリーズ。 すべてを観る必要はない。気になった一本から手を伸ばしてみてほしい。
機動戦士ガンダム
原作:矢立肇、富野喜幸(現・富野由悠季)/総監督:富野喜幸/キャラクターデザイン:安彦良和/メカニカルデザイン:大河原邦男/制作:日本サンライズ/放送:1979〜1980年(名古屋テレビ・テレビ朝日系・全43話)

すべての始まりは、一年戦争にあった
リアルロボットアニメというジャンルを生み出し、後のロボットアニメ史を決定づけた金字塔。 これを観ずしてガンダムシリーズを語ることはできない、まさに原点である。
宇宙世紀0079年。地球連邦政府に独立戦争を仕掛けたジオン公国。人類の半数が死んだとも言われる「一年戦争」のさなか、サイド7に偶然停泊していた連邦軍の新型戦艦ホワイトベースに、15歳の少年アムロ・レイは家族や仲間とともに乗り込むことになる。
ロボットを単なる兵器として描き、敵にも「ジオンに義あり」と言わしめる主義主張があり、人は死に、別れがある。それまでの勧善懲悪型ロボットアニメを根底から覆したこの作品は、当初こそ視聴率不振で全43話に短縮されたものの、再放送と劇場版三部作(1981〜1982年)を経て社会現象を巻き起こした。アムロとシャア、ホワイトベースのクルー、ジオン軍の宿敵たち。すべてのキャラクターが今もファンの記憶に生き続けている。
機動戦士Ζガンダム
原案:矢立肇/原作・総監督:富野由悠季/キャラクターデザイン:安彦良和/メカニカルデザイン:大河原邦男、藤田一己/デザインワークス:永野護/音楽:三枝成章/制作:日本サンライズ/放送:1985〜1986年(名古屋テレビ・テレビ朝日系・全50話)

一年戦争を、勝った側もまた腐っていく
『機動戦士ガンダム』から7年後の宇宙世紀0087年を描く正統続編。 ファーストの大ヒットを受けて満を持して制作された本作は、続編としては異例の重さと複雑さをまとった野心作である。
戦争に勝利した地球連邦内部に生まれたエリート部隊「ティターンズ」は、スペースノイドへの過酷な弾圧を行っていた。それに反発する反地球連邦組織「エゥーゴ」。コロニーに住む16歳の少年カミーユ・ビダンは、ティターンズの士官との衝突をきっかけにガンダムMk-IIを奪取し、エゥーゴの戦いに巻き込まれていく。やがて彼は可変モビルスーツ「Ζガンダム」のパイロットとなる。
シャア・アズナブルが「クワトロ・バジーナ」の偽名で再登場し、アムロも別の戦線で動いている。さらに永野護がデザインに参加して可変モビルスーツという発明が生まれた。物語は重く、登場人物の心は擦り切れていく。決して明るい話ではないが、戦争の連鎖と勝者の腐敗を描き切った本作を通過しなければ、宇宙世紀の物語は完結しない。
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
監督:富野由悠季/キャラクターデザイン:北爪宏幸/メカニカルデザイン:出渕裕、佐山善則/音楽:三枝成章/主題歌:TM NETWORK/配給:松竹/公開:1988年3月12日/劇場版

アムロとシャア、最後の戦い
ガンダムシリーズ初の完全新作劇場映画にして、宇宙世紀の主要キャラクターたちの旅の終着点。 ファーストから14年後を舞台に、アムロ・レイとシャア・アズナブルの宿命の対決が決着する。
宇宙世紀0093年、シャアは「ネオ・ジオン」を率いて、地球に小惑星「アクシズ」を落下させることで地球環境のリセットを企てる。一方アムロは、ブライト・ノアが司令を務める地球連邦軍の外郭部隊「ロンド・ベル」のMS隊長として、ガンダムの正統後継機「νガンダム」とともにこれを阻止しようと立ち向かう。
劇場版という限られた尺の中で展開される、政治劇、ニュータイプ論、そして男たちの最後の決着。サイコフレームの輝き、TM NETWORKによる主題歌「BEYOND THE TIME」、そして語り継がれるあのラストシーン。ファーストとΖを観てから挑むのが王道だが、本作だけを観ても伝わる感情の重さがある。富野由悠季が宇宙世紀の主役たちに与えた最終回として、何度でも観返したくなる傑作だ。
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:高山文彦/脚本:山賀博之/キャラクターデザイン:美樹本晴彦/メカニカルデザイン:出渕裕/音楽:かしぶち哲郎/制作:日本サンライズ/OVA:1989年(全6話)

一人の少年が見つめた、戦争の本当の姿
ガンダムシリーズ初のOVA作品にして、外伝の最高峰。 富野由悠季以外の監督がガンダムを手がけた最初の作品であり、シリーズに新しい風を吹き込んだ歴史的傑作である。
宇宙世紀0079年12月、一年戦争末期。中立コロニーのサイド6に住む少年アル・イズラエルは、戦争を「カッコイイもの」として憧れていた。そこにジオン軍の特殊部隊「サイクロプス隊」の新米兵士バーニィが潜入してくる。連邦軍の新型ガンダム「アレックス」を破壊するというミッションのために。アルはバーニィと友達になっていくが、アレックスのテストパイロットは隣の少女クリスチーナだった。
全6話という尺で凝縮された、戦争を子どもの視点から描いた物語。山賀博之の脚本は、「ガンダム」という名のロボット同士のぶつかり合いの裏側で、ごく普通の人々がどう傷つき、どう失うかを丁寧に描き切った。クリスマス前後を舞台にした切ない物語は、シリーズの中でも特別な位置を占め続けている。
機動戦士ガンダム 第08MS小隊
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:神田武幸(第1〜5話)、飯田馬之介(第6〜11話)/キャラクターデザイン:川元利浩/メカニックデザイン:大河原邦男、カトキハジメ/音楽:田中公平/制作:サンライズ/OVA:1996〜1999年(全11話+特別編)

ジャングルの泥の中、二人が出会った
一年戦争を地上戦の視点から描いた、外伝シリーズの代表作。 『機甲戦記ドラグナー』の神田武幸監督が立ち上げ、神田の急逝後は飯田馬之介が引き継いで完結させた、神田の遺作でもある。
宇宙世紀0079年、東南アジア戦線。地球連邦軍のシロー・アマダ少尉は、第08MS小隊の隊長として戦地に赴任する。その途上、敵ジオン軍のパイロット、アイナ・サハリンと遭難先で出会い、心を通わせる。やがてそれぞれの陣営に戻ったふたりは、戦場で再び敵として再会することになる。
ジャングルや山岳地帯での泥臭い地上戦、量産型のジムやザクが主戦力となるリアルな戦場描写。それと同時に、敵と味方に分かれた男女の純愛という普遍的なドラマが進行する。シローの素直さ、アイナの聡明さ、そして第08MS小隊の仲間たちの人間味あふれる描写。115万本という売上を記録した、ガンダム外伝OVAの金字塔である。
機動戦士ガンダムUC
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:古橋一浩/脚本:むとうやすゆき/ストーリー:福井晴敏/オリジナルキャラクターデザイン:安彦良和/アニメーションキャラクターデザイン:高橋久美子/メカニカルデザイン:カトキハジメほか/音楽:澤野弘之/制作:サンライズ/OVA:2010〜2014年(全7話)

宇宙世紀の集大成、ラプラスの箱が開かれるとき
『亡国のイージス』『ローレライ』などで知られる作家・福井晴敏が小説を執筆し、それを原作にOVA化された宇宙世紀の正統作品。 『逆襲のシャア』から3年後を舞台に、ガンダム生誕30周年を記念して制作された、宇宙世紀の集大成というべき大作である。
宇宙世紀0096年、工業コロニー「インダストリアル7」で平凡な工業専門学校生活を送っていた少年バナージ・リンクスは、ある日「オードリー・バーン」と名乗る少女と出会う。彼女を追って事件に巻き込まれたバナージは、父から純白のモビルスーツ「ユニコーンガンダム」を託される。それは、地球連邦政府を覆すほどの秘密「ラプラスの箱」へと至る鍵だった。
歴代宇宙世紀作品の登場人物やキーワードが随所に散りばめられ、シリーズを観てきたファンには感慨深い瞬間が連続する。澤野弘之による壮大な劇伴も評価が高く、シリーズ屈指のスケール感を誇る。BDの先行発売とイベント上映を組み合わせた展開も新鮮で、2010年代のガンダムを牽引した記念碑的作品となった。なお、TV放送向けに再編集された『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』もあり、2016年に地上波で広く放送されている。
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
原作:富野由悠季、矢立肇/監督:村瀬修功/脚本:むとうやすゆき/キャラクターデザイン原案:美樹本晴彦/キャラクターデザイン:pablo uchida、恩田尚之、工原しげき/メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利ほか/メカニカルデザイン原案:森木靖泰、藤田一己/音楽:澤野弘之/制作:サンライズ/劇場公開:第1部2021年6月11日、第2部『キルケーの魔女』2026年1月30日

ブライトの息子は、テロリストになった
富野由悠季が1989〜1990年に執筆した同名小説を原作に、『逆襲のシャア』のさらに12年後を描く劇場アニメ三部作。
2021年に第1部が公開され、2026年1月に第2部『キルケーの魔女』が公開されたばかりの、現在進行中の宇宙世紀最新作である。
宇宙世紀0105年。アムロとシャアの戦いから12年が経過したが、地球連邦政府の腐敗はさらに進み、上層部は地球の汚染問題に対する根本的解決を放棄しつつあった。そんな中、反地球連邦政府運動「マフティー」を率いるリーダー、マフティー・ナビーユ・エリンこそが、ブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアその人だった。地球行きのシャトルで彼は、謎の少女ギギ・アンダルシアと、連邦軍大佐ケネス・スレッグと運命的な出会いを果たす。
ブライト・ノアの息子という、宇宙世紀の歴史を生きてきた人物の二代目をテロリストの主人公に据えるという挑戦的な物語。村瀬修功監督による緻密で重厚な作画、澤野弘之の音楽、美樹本晴彦のキャラクター原案。Ξガンダム対ペーネロペーという、ミノフスキー・フライトによる大気圏内飛行能力を備えた大型機同士の空中戦も大きな見どころである。三部作の完結に向けて、宇宙世紀の物語はさらに続いていく。
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新機動戦記ガンダムW
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:池田成、高松信司/シリーズ構成:隅沢克之/キャラクターデザイン:村瀬修功/メカニカルデザイン:カトキハジメ、大張正己、石垣純哉ほか/制作:サンライズ/放送:1995〜1996年(テレビ朝日系・全49話)

5人の少年と、5機のガンダム
宇宙世紀から離れた独立世界観のガンダム「アナザーガンダム」の第2弾にして、女性ファン層を大きく開拓した転換点。 アメリカで最初に放送されたガンダム作品でもあり、海外での「Gundam」の知名度を一気に押し上げた作品である。
アフターコロニー195年、宇宙コロニーは地球連合に虐げられていた。コロニー側はガンダム5機と5人の少年パイロットを地球に送り込む「オペレーション・メテオ」を発動する。任務に徹する無表情な少年ヒイロ・ユイ、宇宙遊牧民スイーパーグループ出身で自ら「死神」と名乗る陽気なデュオ、L4コロニーの大富豪ウィナー家の嫡男カトル、寡黙な道化師トロワ、コロニーの戦士・張五飛。それぞれ異なるバックグラウンドを持つ5人の少年たちが、政治的陰謀の渦中に放り込まれる。
主要キャラクター全員を美少年に設定し、ライバルのゼクスや女性指導者のリリーナとの関係性を描いた本作は、女性ファンを大量にガンダム世界に呼び込んだ。OZ、ホワイトファング、ロームフェラ財団といった陣営が入り乱れる複雑な政治劇は、観るほどに味わいが深い。続編OVA『Endless Waltz』も含めて完結する物語だ。
∀ガンダム
原案:矢立肇/原作・総監督:富野由悠季/キャラクターデザイン:安田朗/メカニカルデザイン:シド・ミード/音楽:菅野よう子/制作:サンライズ/放送:1999〜2000年(フジテレビ系・全50話)

すべてのガンダムを内包する、ヒゲの白い巨人
ガンダム生誕20周年記念作品にして、富野由悠季が「過去のすべてのガンダムを肯定する」という難題に挑んだ意欲作。 タイトルの「∀」は数学の全称記号で、すべてを包括して原点に返るという意味が込められている。
正暦2345年。地球と月の関係が断絶して久しい未来。月の住民「ムーンレィス」の青年ロラン・セアックは、地球の環境を調査するため先行移住し、地球の少女キエルとソシエの姉妹に救われ、彼女たちの運転手として平和に暮らしていた。だが月の女王ディアナ・ソレルが地球帰還を強行し、地球と月の衝突が始まる。古い遺跡から発掘された白い「∀ガンダム」を駆ることになったロランは、平和的解決を求めて戦う。
シド・ミードによる革新的な、いわゆる「ヒゲのガンダム」のデザインは放送前は物議を醸したが、観終わる頃には誰もがそのフォルムを愛しているはずだ。菅野よう子による音楽、農村の風景と月の文明が交差する独特の世界観。富野作品としては優しさと希望に満ちた語り口で、隠れた最高傑作と推す声も多い。
機動戦士ガンダムSEED
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:福田己津央/シリーズ構成:両澤千晶/キャラクターデザイン:平井久司/メカニックデザイン:大河原邦男、山根公利/音楽:佐橋俊彦/制作:サンライズ/放送:2002〜2003年(毎日放送・TBS系・全50話)

21世紀のファーストガンダムが、ここに
「新世紀のファーストガンダム」「原点回帰」を掲げて制作された、平成ガンダム再興の起爆剤。 当時の若い世代に向けて作られ、第二次ガンプラブームを巻き起こした、シリーズの転換点である。
コズミック・イラ71年。遺伝子操作で生まれた新人類「コーディネイター」と、従来の人類「ナチュラル」が対立する世界。中立国オーブの工業コロニー「ヘリオポリス」で平凡な学生生活を送っていたコーディネイターの少年キラ・ヤマトは、ザフト軍の襲撃を受けた際、偶然そこにあった地球連合の試作モビルスーツ「ストライクガンダム」に乗り込み、応戦することになる。襲撃部隊の中には、幼馴染のアスラン・ザラがいた。
戦争という大きな枠組みの中で、コーディネイターとナチュラル、敵と味方、家族と友、運命と意志のあいだで揺れる若者たちのドラマ。シリーズ累計のパッケージ販売数400万本超え、続編『DESTINY』、そして2024年の劇場版『SEED FREEDOM』まで20年以上にわたって愛され続けている、ガンダムの再起動の決定打となった作品だ。
機動戦士ガンダム00
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:水島精二/シリーズ構成:黒田洋介/キャラクターデザイン:高河ゆん、千葉道徳/メカニックデザイン:海老川兼武、柳瀬敬之ほか/音楽:川井憲次/制作:サンライズ/放送:2007〜2009年(毎日放送・TBS系・全50話)

ガンダムによる、戦争への武力介入を開始する
『鋼の錬金術師』の水島精二が監督、『スクライド』『無限のリヴァイアス』の黒田洋介が脚本を担当した、現代的なガンダム。 西暦2307年というカレンダーをそのまま使い、現実の地政学的状況を踏襲した近未来戦争を描いた異色作である。
世界はオービタルエレベーターによる太陽光発電技術を独占する三大国家群と、それから取り残された産油国群に分断されていた。そんな中、4機のガンダムを擁する私設武装組織「ソレスタルビーイング」が、戦争行為そのものを根絶するために武力介入を開始する。中東出身の少年兵だった刹那・F・セイエイは、ガンダムエクシアのパイロットとして、争いを止めるための戦争に身を投じる。
「武力による戦争根絶」というパラドックスを真正面から問いかける物語の重さ、リアルな政治情勢を反映した世界観、そして個性豊かな4人のガンダムマイスターたち。2クール構成のファーストシーズン&セカンドシーズン、さらに劇場版『A wakening of the Trailblazer』で完結する物語は、ガンダムシリーズの中でも現代的な手触りで他と一線を画す。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:長井龍雪/シリーズ構成:岡田麿里/キャラクターデザイン原案:伊藤悠/キャラクターデザイン:千葉道徳/メカニカルデザイン:鷲尾直広ほか/音楽:横山克/制作:サンライズ/放送:第1期2015〜2016年、第2期2016〜2017年(毎日放送・TBS系・全50話)

居場所のない少年たちが、自分たちの居場所を作るために
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の長井龍雪監督と岡田麿里脚本コンビによる、骨太な人間ドラマとしてのガンダム。 ガンダムシリーズの中でも特に「人間ドラマ」に焦点を絞った異色作である。
厄祭戦と呼ばれる大戦の終結から約300年後の火星。民間警備会社「CGS」で、奴隷同然の扱いを受けながら働く少年たち。地球からの少女クーデリアの護衛任務をきっかけに、彼らはCGSを掌握し、自分たちの組織「鉄華団」を立ち上げる。三日月・オーガス、オルガ・イツカ、そして発掘されたモビルワーカー「ガンダム・バルバトス」とともに、少年たちは大組織「ギャラルホルン」に挑んでいく。
居場所のない少年たちが家族のような絆を築きながら駆け抜けていく物語は、戦闘描写の重さや痛みを含めて見応えがある。「行こうぜ、止まるんじゃねぇぞ……」という名言とともに、第2期のラストはガンダムシリーズの中でも特に賛否両論を呼びつつ、強い余韻を残した。2025年には10周年記念新作短編「幕間の楔」が、特別編集版『ウルズハント』との同時上映で劇場公開されている。
機動戦士ガンダム 水星の魔女
原作:矢立肇、富野由悠季/監督:小林寛/シリーズ構成・脚本:大河内一楼/キャラクターデザイン原案:モグモ/キャラクターデザイン:田頭真理恵ほか/メカニカルデザイン:JNTHEDほか/音楽:大間々昂/制作:サンライズ/製作:バンダイナムコフィルムワークス、創通、MBS/放送:2022〜2023年(毎日放送・TBS系・全24話)

ガンダムのテレビシリーズ初の女性主人公、令和の新世代ガンダム
『鉄血のオルフェンズ』以来7年ぶりとなるテレビシリーズの新作。 ガンダムのテレビシリーズ初の女性主人公を立て、企業経済圏と学園を舞台にすることで、令和の新世代ガンダムとして大きな話題を呼んだ作品である。
A.S.122年、モビルスーツ産業最大手「ベネリットグループ」が運営するアスティカシア高等専門学園。辺境の地・水星から編入してきた少女スレッタ・マーキュリーは、不器用ながら真っ直ぐな性格で、自身の駆るガンダム「エアリアル」とともに学園に飛び込んでいく。そこで出会ったベネリットグループ総裁の娘ミオリネ・レンブランとの関係を軸に、企業間の権力闘争に巻き込まれていく。
学園で行われる決闘でモビルスーツが戦うという新鮮な設定、スレッタとミオリネの関係性、ヒロインたちが多彩な役回りを演じる現代的なキャラクター造形。脚本の大河内一楼が『コードギアス』『少女革命ウテナ』のノベライズ経験から織り込む人間関係の機微も見どころで、ガンダムを観たことのない層を新たに引き込んだ。24話と短い分、テンポよく観られる入門編としても最適である。
まだ紹介しきれない、ガンダムの世界
ここまで13作品を紹介してきたが、ガンダムシリーズはまだまだこんなものではない。最後に、特に紹介しておきたい主要作品をいくつか挙げておく。
宇宙世紀の作品では、富野由悠季が宇宙世紀の物語に一区切りをつけた『機動戦士Vガンダム』が外せない。13歳の少年ウッソ・エヴィンを主人公にした宇宙世紀0153年の戦いは、シリーズ屈指の重さと過酷さで知られ、富野作品の到達点のひとつである。OVA作品では『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』が見応えあり。一年戦争終結後のジオン残党による事件「デラーズ紛争」を描いた本作は、劇場クオリティの作画と、敵側のパイロット、アナベル・ガトーの宿命的なドラマで根強い人気を誇る。
そして2025年最新の話題作が『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』である。「ガンダム」を手がけるサンライズと、「エヴァンゲリオン」を手がけるスタジオカラーが初タッグを組み、鶴巻和哉監督、庵野秀明らも参加した意欲作。シャアが赤いガンダムを奪取した「もしも」の宇宙世紀という大胆な改変歴史を描いており、長年のファンも新規ファンも巻き込んで大きな話題となった。
アナザーガンダムでは『機動武闘伝Gガンダム』が必修である。各国の代表が「ガンダムファイト」と呼ばれる格闘大会で戦うという、それまでのガンダム像を根底から覆した今川泰宏監督の異色作。明るく熱い武闘もの路線は、後のアナザーガンダムが多様な世界観を許容する土壌を作った。同じく90年代アナザーでは『機動新世紀ガンダムX』も興味深い。一年戦争でコロニー落としが本当に起きてしまった後の荒廃した世界を舞台に、ニュータイプとは何かを再考する物語である。
派生作品としては『ガンダムビルドファイターズ』がおすすめだ。ガンプラを操作するバトルを描いた本作は、ガンダムを観たことのない人にも親しみやすく、歴代ガンダムへの愛とユーモアに満ちた、シリーズ入門編としても優れた一作になっている。
どこから入ってもいい、というのがガンダムシリーズの懐の深さである。気になる時代、気になる世界観、気になるパイロットがいたら、そこから物語の扉を開いてみてほしい。45年以上続くシリーズが待っている。
