マンガ日本の歴史シリーズを各社で比較|集英社・角川・小学館・学研・講談社の違いと特徴

結局どれを買えばいい?マンガ日本の歴史
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※小説やコミックの発売巻数や既刊などの情報は記事が書かれた当時のものとなります。

歴史を好きになるきっかけが、教科書ではなく一冊のマンガだった、という人は多い。かくいう私も小学生のころは「小学館 少年少女日本の歴史」を読んで歴史が好きになったクチである。
卑弥呼の顔も、信長の最期も、文字で覚えるより一枚の絵で覚えたほうがずっと長く心に残る。
昔は小学館のものしかなかったが今は、書店の学習まんがコーナーに行くと、「日本の歴史」と名のついた分厚いセットが何種類も並んでいて、どれを選べばいいのか途方に暮れる。

だが、各社のシリーズには、それぞれはっきりとした思想がある。教科書会社と組んで史実に徹したもの、人気漫画家を表紙に立てて手に取らせるもの、映像をつけて立体的に学ばせるもの、巻数を絞って流れだけを最短で渡すもの。同じ「日本の歴史」でも、つくり手が何を一番大切にしたかが、まるで違う。

ここでは、古代から現代までを通して描く主要シリーズを横断して紹介。受験のためというより、まず一つの物語として日本の歩みを味わってほしい。

目次

小学館 少年少女日本の歴史

小学館/全24巻(改訂・増補版)/監修:児玉幸多/まんが:あおむら純 ほか/1981年刊行開始

少年少女日本の歴史

日本史マンガの原点であり、いまも現役の長老

1981年に刊行が始まり、累計発行部数2000万部を超えるロングセラーである。旧石器時代から平成まで、長い日本の歩みを通史としてたどる。監修は歴史学者の児玉幸多、作画の大半をあおむら純が手がけた。両名ともすでに故人だが、シリーズは改訂・増補を重ねながら読み継がれている。映画化もされた「ビリギャル」のモデルがこのシリーズで日本史を学んだ逸話でも知られる。

このシリーズの強みは、全巻をほぼ一人の作家が描き切ったことによる絵の統一感にある。同じ人物が巻をまたいでも顔が変わらないので、歴史上の人物に「この顔」というイメージが定着する。試験や受験の場面で、人名を見た瞬間にあおむら純の絵が頭に浮かんだ、という読者は少なくない。着物の意匠や建物、食べものといった衣食住の描き込みも丁寧で、時代の空気そのものを覚えられる。今となっては絵柄に時代を感じる部分もあるが、それも含めて、多くの人にとっての「歴史マンガの原風景」だ。

集英社版 学習まんが 日本の歴史

集英社/全20巻+別巻2冊/2016年刊行(創業90年企画。現行はソフトカバーのコンパクト版)/各時代を専門家が監修・総合アドバイザー:野島博之/カバーイラスト:岸本斉史・荒木飛呂彦・久保帯人 ほか

集英社版 学習まんが 日本の歴史

表紙をめくる前から心をつかむ、看板作家たちの競演

2016年、集英社が創業90年を機に刊行した全面新版である。最大の話題は、各巻のカバーイラストを集英社の人気漫画家が時代に合わせて描いた点だ。第1巻と第5巻は「NARUTO」の岸本斉史、第2巻は「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦、ほかにも久保帯人や原泰久らが名を連ねる。本棚に並べた背表紙だけで一つの作品集のような華やかさがある。

中身も堅実で、各時代をそれぞれの専門家が監修し、受験界で名高い野島博之が総合アドバイザーを務める。総ページの約半分がカラーで、当時の情景がつかみやすい。全20巻のうち8巻を近現代史にあてており、つまずきやすい明治以降が手厚いのも特徴だ。のちにソフトカバーで一回り小さく軽くしたコンパクト版も登場し、持ち運びや収納の負担が減った。表紙で興味を引き、中身で支える。入り口と実力の両立を狙ったシリーズである。

角川まんが学習シリーズ 日本の歴史

KADOKAWA/全16巻+別巻5冊/2015年刊行開始(第16巻は2022年)/監修:山本博文 ほか東大教授陣/カバーイラスト:小畑健・近藤勝也・吉崎観音 ほか

角川まんが学習シリーズ 日本の歴史

出来事を点で覚えず、流れで体に入れる「東大流」

2015年、KADOKAWA創業70周年に合わせて刊行された。掲げるコンセプトは「東大流」で、個々の事件を暗記させるのではなく、歴史の大きな流れをつかませることに重点を置いている。本編に入る前に、その時代の特徴がひと目でわかるイラストページを挟む構成で、全体像を頭に入れてから物語を読み進められる。監修には東京大学の教授陣が並ぶ。

カバーは「DEATH NOTE」の小畑健、スタジオジブリの近藤勝也、「ケロロ軍曹」の吉崎観音といった顔ぶれで、表紙と本編の作画者は別ながら違和感なく読めるよう配慮されている。学習まんが「日本の歴史」ジャンルで長く売上トップを走ってきた定番で、2022年には岸田内閣の成立や安倍元首相銃撃事件まで収録した第16巻が加わった。さらに2025年秋には1〜15巻の内容を最新研究に合わせて更新している。物語としてのページをめくる手が止まらない、という読み味を最優先したシリーズだ。

学研まんが NEW日本の歴史

学研/全12巻/2012年初版・DVD付版は2021年発売/総監修:大石学(東京学芸大学名誉教授)/オールカラー

学研まんが NEW日本の歴史

まんが・資料・映像、三つの入り口から立体的に

学研のシリーズは全12巻と、主要各社の中では巻数が少なくまとまっている。総監修は時代考証に明るい大石学。本編はオールカラーで、絵がきれいで読みやすいと評判だ。

最大の個性は、増補改訂版で各巻に歴史映像のDVDが付いたことにある。合戦シーンや資料を収めたNHKのスペシャル映像、各章のダイジェストアニメ、再現CGなどを組み合わせ、まんがで読んだ内容を映像でもう一度たどれる。文字で読む、図表で確かめる、映像で動かして見る、という三つの角度から同じ時代に触れられるのがこのシリーズの設計思想だ。巻数が手ごろなので、まず一通り通史をさらいたい人や、活字より映像から入りたい子どもとの相性がよい。

講談社 学習まんが 日本の歴史

講談社/全20巻/2020年(令和最新)/監修:若狭徹・遠藤慶太・呉座勇一・高尾善希・舟橋正真/総合監修:伊藤賀一/まんが:寺沢大介・石垣ゆうき など計14名

講談社 学習まんが 日本の歴史

令和に生まれた、最新研究と一流漫画家の合作

2020年に全20巻同時で登場した、比較的新しいシリーズである。古代から令和までを収め、新しい学習指導要領に対応している。監修に名を連ねるのは、ベストセラー「応仁の乱」の呉座勇一をはじめとする新進気鋭の研究者5名。歴史の教科書は研究の進展で書き換わっていくため、各時代の最新の見方を反映しているのが売りだ。総合監修はスタディサプリで知られる伊藤賀一が務める。

作画陣も贅沢で、「ミスター味っ子」の寺沢大介、「MMR」の石垣ゆうきら、週刊少年マガジンなどで連載経験を持つベテラン14名が、表紙だけでなく本編まですべて描き下ろしている。一巻ごとに6話、全体で120の人物ドラマとして構成されており、子どもの学習用という枠を越えて、大人が読んでも引き込まれる。最新の研究を、プロの物語の手つきで読みたい人に向いている。

小学館版 学習まんが 日本の歴史

小学館/全20巻/2022年12月(創立100周年企画)/山川出版社が編集協力/オールカラー

小学館版 学習まんが 日本の歴史

教科書の山川と組んだ、史実に忠実な正統派

冒頭で紹介した「少年少女日本の歴史」を、小学館が創立100周年を機に全面リニューアルしたのがこの新版である。最大の特徴は、高校日本史の教科書で広く知られる山川出版社が編集協力し、その教科書執筆陣が専門分野を監修している点だ。

方針は徹底して史実重視で、真偽の定かでない講談や脚色のような逸話を極力排し、信頼できる文献に基づいた記述を心がけている。たとえば関ヶ原の小早川秀秋の動きなど、近年の研究で見直された人物像も反映する。社会のしくみや制度は無理にまんがにせず図解で見せるなど、わかりやすさへの工夫も細かい。全20巻のうち9巻を近現代にあて、2022年度から必修化された「歴史総合」も意識している。にぎやかな演出より、正確さと整った理解を優先したいなら、この一択になりやすい。

日本の歴史 きのうのあしたは…

朝日学生新聞社/全7巻/2010〜2011年/作・絵:つぼいこう

日本の歴史 きのうのあしたは…

全7巻、最短距離で通史の流れだけを渡す

各社が10巻から24巻という大部のセットを組むなか、このシリーズは全7巻と圧倒的に少ない。朝日小学生新聞で連載され、読者の支持を得たマンガを単行本化したもので、作・絵はつぼいこうが全巻を一人で担当している。

物語は、歴史好きの史記くんと同級生のこよみちゃん、そして科学者のおばさんが、システムを使って歴史の時代へ旅をするタイムスリップ形式で進む。読者は主人公たちと一緒に出来事を外から眺める形になるので、流れを客観的に追いやすい。巻数が少ないぶん情報量はしぼられるが、それは裏を返せば「まず日本史の大筋をざっと一気につかみたい」という目的にはこれ以上ない構成だということでもある。作・絵が全巻つぼいこうで貫かれているため、語り口にもぶれがない。分厚いセットを前に腰が引けてしまう子の、最初の一歩に向いている。

どれを選ぶか、そして「その前」の一冊

ここまで見てきたように、各社のシリーズに優劣の順位をつける意味はあまりない。大切なのは、誰が、何のために読むかだ。最新の研究を物語として深く味わいたいなら講談社、史実への忠実さで選ぶなら山川と組んだ小学館の新版、流れを一本の線でつかみたいなら角川、表紙で子どもの心をつかみたいなら集英社、映像とあわせて立体的に学ぶなら学研、とにかく短く全体像をつかむなら朝日学生新聞社、そして世代を超えた原点の味わいなら小学館の少年少女シリーズ、というように、求めるもので自然と行き先が分かれていく。

最後に、ここで挙げた本格的な通史セットに入る「前」の選択肢にも触れておきたい。まだ歴史にまったく触れていない小さな子には、小学館の『学習まんが はじめての日本の歴史』[Amazon](全15巻/監修:山本博文)がある。小学1年生から読めることを意識した、通史セットの弟分のような入門シリーズで、まず流れを物語として楽しむことに振り切っている。さらにその手前、歴史という言葉に身構えてしまう子には、『ドラえもんの社会科おもしろ攻略 日本の歴史』[Amazon](全3巻/小学館)という入り口がある。慣れ親しんだキャラクターと一緒なら、最初の壁はぐっと低くなる。

もう少し物語性や謎解きの要素がほしい子には、小学館の『日本史探偵コナン』[Amazon]も入口になりやすい。現代の少年少女たちが過去へ飛ばされ、事件や謎を追いながら各時代をめぐる構成で、通史を教科書的に追うというより、冒険まんがとして読み進められる。コナンが好きな子なら、歴史への最初の抵抗をかなり下げてくれるシリーズだ。

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