歴史を学びながら楽しむ。おすすめ世界の歴史小説15選

2023年3月21日

おすすめ世界の歴史小説

世界を舞台にした歴史小説を集めてみました。
世界史の授業でも習うところですが、教科書ではほんの数行のところにドラマがある歴史小説。
日本とは違う歴史・文化・風習のある世界の歴史小説は、壮大なスケールで描かれているものも多く、読み出すと止まらない面白さがあります。

また海外に旅行に行く際にも、ガイドブックだけてでなくその国の歴史小説を読んでおくと、旅行での面白さが一際増します。私事ですが中国に出張した際、浅田次郎の「蒼穹の昴」を読んでから行ったのですが、紫禁城(故宮)を訪れたときはやはり感銘を受けました。小説を読んでいなければ、へぇ~くらいの感想で終わっていたかもしれません。

学生なら勉強の一環になりますし、旅行のときにはより深い楽しみにもなる世界史の歴史小説。まずは興味のある国の小説から読むことをオススメしたいです。

「蒼穹の昴」浅田次郎

蒼穹の昴

<あらすじ>
汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう――中国清朝末期、貧しき糞拾いの少年・春児は、占い師の予言を信じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分・文秀に従って都へ上った。都で袂を分かち、それぞれの志を胸に歩み始めた二人を待ち受ける宿命の覇道。万人の魂をうつベストセラー大作!

運命は人の手で変えられる

清の時代の中国、占い師から「天下のお宝を手に入れる」と言われた、極貧の少年”李春児”と、「帝に仕え、天下の政をとる」と言われた”梁文秀”の2人の物語です。

春児は地頭の良さと人からかわいがられる性格で、極貧の少年から西太后の付人まで成り上がり、文秀は科挙に合格し、光緒帝の元で政治改革に取り掛かります。
4巻に及ぶ超大作ですが、当時の歴史をなぞりながら、2人が自分の人生を変えていく姿にグッときて、最後は涙を流して読んでいました。
また、色々な登場人物の視点で語られるため、清という時代を様々な角度から見ることができ、展開もドラマティックでスピーディーなため、あっという間に読み終わりました。(20代女性)

「三国志」北方謙三

三国志

<あらすじ>
時は、後漢末の中国。政が乱れ賊の蔓延る世に、信義を貫く者があった。姓は劉、名は備、字は玄徳。その男と出会い、共に覇道を歩む決意をする関羽と張飛。黄巾賊が全土で蜂起するなか、劉備らはその闘いへ身を投じて行く。官軍として、黄巾軍討伐にあたる曹操。義勇兵に身を置き野望を馳せる孫堅。覇業を志す者たちが起ち、出会い、乱世に風を興す。激しくも哀切な興亡ドラマを雄渾華麗に謳いあげる、北方版〈三国志〉第一巻。

男たちそれぞれの矜持が見える物語

ハードボイルド小説でもおなじみの北方謙三の描く三国志の世界です。劉備視点で立身するところから始まります。
ハードボイルド小説が得意な作者だけあって、出てくるキャラ達が男臭くてよいです。
基本的には三国志演義の内容と大差ないので登場人物はほぼ男性ですが、時折でてくる女性キャラもよい味をだしています。三国志というメインのストーリーがしっかりしているので、北方謙三のオリジナル小説より読みやすいと感じました。(30代女性)

「三国志」吉川英治

三国志

<あらすじ>
日本では卑弥呼が邪馬台国を統治する頃、中国は後漢も霊帝の代、政治の腐爛は黄巾賊を各地にはびこらせ、民衆は喘ぎ苦しむ。このとき、楼桑村の一青年劉備は、同志関羽、張飛と桃園に義盟を結び、害賊を討ち、世を救わんことを誓う。――以来百年の治乱興亡に展開する壮大な世紀のドラマ。その華麗な調べと哀婉の情は、吉川文学随一と定評のあるところである。

義を大切に。人を大切にすれば、人生は豊かになる

登場人物は多いが、それぞれ武将の個性や特徴があり、善玉、悪玉がはっきりしていて面白い。
蜀の劉備が善玉だったら、魏の曹操は悪玉。そして、蜀建国までのストーリーが特に面白く、「三顧の礼」や、「泣いて馬謖を斬る」、「死せる孔明、生ける仲達を走らす」など様々な言葉が特に印象的である。
私が特に好きな武将は、五虎大将軍の一人馬超だ。敢然と曹操軍に立ち向かう勇気、そして後に仲間となる超飛と互角に馬に乗りがら槍と矛を交える姿はとても印象的だった。(40代男性)

「英仏百年戦争」佐藤賢一

英仏百年戦争
《あらすじ》を見る

国民国家の起源をたどる物語

「英仏百年戦争」と言われているこの戦争は後世の私たちが名付けたものであり、本当のところはイングランド王となったフランス人とフランス王との戦いであったことが、とても面白く読みやすい形で描かれています。

今と違い国家という意識そのものが希薄だったということ、国民国家という考え方がこの戦争を機に根付くようになったことが、西洋史に興味のない人間をも惹きつける語り口で展開されていくワクワク感がたまりません。

「イングランドとフランスが百年戦争をしたのではなく、百年戦争がイングランドやフランスと言う国を作った」というパラダイムシフトの気持ちよさを味わえる作品です。(20代女性)

「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生

コンスタンティノープルの陥落

<あらすじ>
東ローマ帝国の首都として一千年余も栄えたコンスタンティノープル。独自の文化を誇ったこの都も、しかし次第に衰え、15世紀後半には、オスマン・トルコ皇帝マホメッド二世の攻撃の前に、ついにその最期を迎えようとしていた――。
地中海に君臨した首都をめぐる、キリスト教世界とイスラム世界との激しい覇権闘争を、豊富な資料を駆使して描く、甘美でスリリングな歴史絵巻。

一つの時代の終焉と新たな時代の始まり

東ローマ帝国の末裔ビザンツ帝国の首都にして最期の拠点コンスタンティノープルを舞台に、終末を迎えた帝国ビザンツ帝国と隆盛に向かって躍進し始めた新鋭のイスラム帝国。
オスマントルコ帝国の熾烈な攻防戦とビザンツ帝国の滅亡までをローマ人の物語で有名な塩野七生先生が描いた作品です。

特定の主人公を置かず攻防両陣営から登場人物が登場し、難攻不落の巨大要塞都市コンスタンティノープルを巡る攻防が繰り広げられていきます。
艦隊の山越えなどの有名な史実エピソードも盛り込まれた読み応えのあるオススメの作品です。(40代男)

「革命のライオン」佐藤賢一

革命のライオン

<あらすじ>
1789年。フランス王国は破産の危機に瀕していた。大凶作による飢えと物価高騰で、苦しむ民衆の怒りは爆発寸前。財政立て直しのため、国王ルイ16世は170余年ぶりに全国三部会を招集する。貴族でありながら民衆から絶大な支持を得たミラボーは、平民代表として議会に乗り込むが、想像もしない難題が待ち受けていた――。男たちの理想が、野望が、歴史を変える! 一大巨編、ここに開幕。

フランスの劇的な変化を描いた物語

ブルボン王朝の、財政難は深刻であり、その打開策としてルイ16世の下で財政再建に乗りだしたネッケルの起死回生の策がなんと貴族や聖職者への課税であった点がなかなか興味深い。
この時代がいかに身分の差により差別され、その虐げられた平民が持つパワーが絶対王政が当たり前に見えたルイ16世たちをやがて飲み込んでいくパワーになる過程が描かれている点は読みごたえがありお勧めの本です。(50代男性)

「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク

マリー・アントワネット

<あらすじ>
運命というものは、人間になんと非情な試練を与えることだろう――ただ愛らしく平凡な娘だったアントワネットの、歴史に翻弄された激動の人生を、壮大な悲劇の物語として世界に知らしめた、古典的名著。

「真実」で「現実」のマリー・アントワネット

その名前を知らない人はいない、18世紀末、フランス王妃のマリーアントワネットについての伝記文学です。マリーアントワネットの人生を追った伝記文学になっており、出版は古いですが、彼女の人となりを誠実に書いている作品です。

結婚生活の経緯や性格上の美点や欠点、革命中の言動についてかなり詳細に、現実に忠実であることを目指して描かれており、マリーアントワネットに興味のある方は必読ではないでしょうか。
フェルゼン伯との恋模様が現実にもとても情熱的であったことも書かれていて、この本が池田理代子さんに「ベルサイユの薔薇」を描かせるインスピレーションを与えたそうです。(30代女性)

「女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー」ローズマリ・サトクリフ

女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー
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ヴァージン・クイーンが愛した男

イギリス、エリザベス1世の時代が舞台になっています。伊達男と言われたウォルター・ローリーは、エリザベス女王の寵愛を得て近衛隊長まで上り詰め、最期は断頭台で人生の幕を閉じます。
ヴァージン・クイーンだったエリザベスと、近衛隊長のウォルター、そしてウォルターの妻となったもう1人のエリザベス。その3人の奇妙な関係が歴史の大きな渦に翻弄されながら紡がれていきます。(40代女性)

「傭兵ピエール」佐藤賢一

傭兵ピエール

<あらすじ>
十五世紀、百年戦争下のフランス。王家の威信は失墜、世には混沌と暴力が充ち、人々は恐怖と絶望の淵に沈んでいた。そんな戦乱の時代の申し子、傭兵隊を率いる無頼漢ピエールは、略奪の途中で不思議な少女に出会い、心奪われる。その名は――ジャンヌ・ダルク。この聖女に導かれ、ピエールは天下分け目の戦場へと赴く。かくして一四二九年五月六日、オルレアン決戦の火蓋は切られた……。

ジャンヌ・ダルクに恋をした、一人の傭兵の成長物語

フランスの百年戦争で英雄と呼ばれたジャンヌ・ダルクは有名ですが、そんなジャンヌに恋をした一人の傭兵の物語になっているので、戦争という重たい内容でありながらも、恋愛要素もあるので読みやすいです。
ただこの時代の傭兵なので仕方ないけれど、ピエールが悪いこともするし、教科書には書かれないような傭兵の実態なども描かれているので、かなり生々しいです。(30代女性)

「背教者ユリアヌス」辻邦生

背教者ユリアヌス

<あらすじ>
大帝の甥として生まれるも、キリスト教勢力拡大に野心を燃やす司教一派によって両親を殺害され、幽閉生活を送るユリアヌス。ギリシア古典の塾へ通うことを許されたことから、友を得、学ぶこと、生きることへ喜びを見出していくが、その前に歴史の荒波は容赦なく立ちはだかるのだった――壮大な歴史ロマン開幕!

古代ローマ帝国を舞台とした、理知的な青年皇帝の悲劇的物語

古代ローマ帝国の皇帝、ユリアヌスを主人公とした小説です。文庫本で4冊に及ぶ長大な大河小説と言ってよいでしょう。タイトルにおける「背教者」とはキリスト教から見た表現です。古代ローマにおいてキリスト教が隆盛になっていく中、ギリシアの哲学を学び、ギリシアの神々を信仰していたユリアヌスはそう呼ばれたのです。

高貴な家柄に生まれたユリアヌスは政治の権謀術数と偶然の重なりから皇帝の位に就き、自ら軍を率いて戦い続ける生涯でしたが、ユリアヌス自身は内省的で知的な人物でした。その人間的な苦悩が描かれた名作です。(50代男性)