歴史を学びながら楽しむ。おすすめ世界の歴史小説14選

世界を舞台にした歴史小説を集めてみました。
世界史の授業でも習うところですが、教科書ではほんの数行のところにドラマがある歴史小説。
日本とは違う歴史・文化・風習のある世界の歴史小説は、壮大なスケールで描かれているものも多く、読み出すと止まらない面白さがあります。
また海外に旅行に行く際にも、ガイドブックだけてでなくその国の歴史小説を読んでおくと、旅行での面白さが一際増します。私事ですが中国に出張した際、浅田次郎の「蒼穹の昴」を読んでから行ったのですが、紫禁城(故宮)を訪れたときはやはり感銘を受けました。小説を読んでいなければ、へぇ~くらいの感想で終わっていたかもしれません。
学生なら勉強の一環になりますし、旅行のときにはより深い楽しみにもなる世界史の歴史小説。まずは興味のある国の小説から読むことをオススメしたいです。
- 2023/5/26 「イヴァン雷帝」を追加
「蒼穹の昴」浅田次郎

<あらすじ>
汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう――中国清朝末期、貧しき糞拾いの少年・春児は、占い師の予言を信じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分・文秀に従って都へ上った。都で袂を分かち、それぞれの志を胸に歩み始めた二人を待ち受ける宿命の覇道。万人の魂をうつベストセラー大作!
運命は人の手で変えられる
清の時代の中国、占い師から「天下のお宝を手に入れる」と言われた、極貧の少年”李春児”と、「帝に仕え、天下の政をとる」と言われた”梁文秀”の2人の物語です。
春児は地頭の良さと人からかわいがられる性格で、極貧の少年から西太后の付人まで成り上がり、文秀は科挙に合格し、光緒帝の元で政治改革に取り掛かります。
4巻に及ぶ超大作ですが、当時の歴史をなぞりながら、2人が自分の人生を変えていく姿にグッときて、最後は涙を流して読んでいました。
また、色々な登場人物の視点で語られるため、清という時代を様々な角度から見ることができ、展開もドラマティックでスピーディーなため、あっという間に読み終わりました。(20代女性)
「三国志」北方謙三

時は、後漢末の中国。政が乱れ賊の蔓延る世に、信義を貫く者があった。姓は劉、名は備、字は玄徳。その男と出会い、共に覇道を歩む決意をする関羽と張飛。黄巾賊が全土で蜂起するなか、劉備らはその闘いへ身を投じて行く。官軍として、黄巾軍討伐にあたる曹操。義勇兵に身を置き野望を馳せる孫堅。覇業を志す者たちが起ち、出会い、乱世に風を興す。激しくも哀切な興亡ドラマを雄渾華麗に謳いあげる、北方版〈三国志〉第一巻。
男たちそれぞれの矜持が見える物語
ハードボイルド小説でもおなじみの北方謙三の描く三国志の世界です。劉備視点で立身するところから始まります。
ハードボイルド小説が得意な作者だけあって、出てくるキャラ達が男臭くてよいです。
基本的には三国志演義の内容と大差ないので登場人物はほぼ男性ですが、時折でてくる女性キャラもよい味をだしています。三国志というメインのストーリーがしっかりしているので、北方謙三のオリジナル小説より読みやすいと感じました。(30代女性)
「英仏百年戦争」佐藤賢一

なぜ、この戦争が、至上最大級の事件なのか直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者による、本邦初の本格的入門書
それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。それがなぜ、後世「英仏百年戦争」と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、一三三七年から一四五三年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる。
国民国家の起源をたどる物語
「英仏百年戦争」と言われているこの戦争は後世の私たちが名付けたものであり、本当のところはイングランド王となったフランス人とフランス王との戦いであったことが、とても面白く読みやすい形で描かれています。
今と違い国家という意識そのものが希薄だったということ、国民国家という考え方がこの戦争を機に根付くようになったことが、西洋史に興味のない人間をも惹きつける語り口で展開されていくワクワク感がたまりません。
「イングランドとフランスが百年戦争をしたのではなく、百年戦争がイングランドやフランスと言う国を作った」というパラダイムシフトの気持ちよさを味わえる作品です。(20代女性)
「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生

<あらすじ>
東ローマ帝国の首都として一千年余も栄えたコンスタンティノープル。独自の文化を誇ったこの都も、しかし次第に衰え、15世紀後半には、オスマン・トルコ皇帝マホメッド二世の攻撃の前に、ついにその最期を迎えようとしていた――。
地中海に君臨した首都をめぐる、キリスト教世界とイスラム世界との激しい覇権闘争を、豊富な資料を駆使して描く、甘美でスリリングな歴史絵巻。
一つの時代の終焉と新たな時代の始まり
東ローマ帝国の末裔ビザンツ帝国の首都にして最期の拠点コンスタンティノープルを舞台に、終末を迎えた帝国ビザンツ帝国と隆盛に向かって躍進し始めた新鋭のイスラム帝国。
オスマントルコ帝国の熾烈な攻防戦とビザンツ帝国の滅亡までをローマ人の物語で有名な塩野七生先生が描いた作品です。
特定の主人公を置かず攻防両陣営から登場人物が登場し、難攻不落の巨大要塞都市コンスタンティノープルを巡る攻防が繰り広げられていきます。
艦隊の山越えなどの有名な史実エピソードも盛り込まれた読み応えのあるオススメの作品です。(40代男)
「革命のライオン」佐藤賢一

<あらすじ>
1789年。フランス王国は破産の危機に瀕していた。大凶作による飢えと物価高騰で、苦しむ民衆の怒りは爆発寸前。財政立て直しのため、国王ルイ16世は170余年ぶりに全国三部会を招集する。貴族でありながら民衆から絶大な支持を得たミラボーは、平民代表として議会に乗り込むが、想像もしない難題が待ち受けていた――。男たちの理想が、野望が、歴史を変える! 一大巨編、ここに開幕。
フランスの劇的な変化を描いた物語
ブルボン王朝の、財政難は深刻であり、その打開策としてルイ16世の下で財政再建に乗りだしたネッケルの起死回生の策がなんと貴族や聖職者への課税であった点がなかなか興味深い。
この時代がいかに身分の差により差別され、その虐げられた平民が持つパワーが絶対王政が当たり前に見えたルイ16世たちをやがて飲み込んでいくパワーになる過程が描かれている点は読みごたえがありお勧めの本です。(50代男性)
「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク

<あらすじ>
運命というものは、人間になんと非情な試練を与えることだろう――ただ愛らしく平凡な娘だったアントワネットの、歴史に翻弄された激動の人生を、壮大な悲劇の物語として世界に知らしめた、古典的名著。
「真実」で「現実」のマリー・アントワネット
その名前を知らない人はいない、18世紀末、フランス王妃のマリーアントワネットについての伝記文学です。マリーアントワネットの人生を追った伝記文学になっており、出版は古いですが、彼女の人となりを誠実に書いている作品です。
結婚生活の経緯や性格上の美点や欠点、革命中の言動についてかなり詳細に、現実に忠実であることを目指して描かれており、マリーアントワネットに興味のある方は必読ではないでしょうか。
フェルゼン伯との恋模様が現実にもとても情熱的であったことも書かれていて、この本が池田理代子さんに「ベルサイユの薔薇」を描かせるインスピレーションを与えたそうです。(30代女性)
「女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー」ローズマリ・サトクリフ

1600年前後のイギリスを舞台に、実在の人物をモデルとして描かれた歴史ロマンス。ザ・デイリー・テレグラフほか各誌絶賛!
近衛隊の大尉ウォルターと女王の女官ベスは、偶然の出会いが重なり、やがて結婚する。夫は一生を通じて、新世界探検の夢を追い求め、妻は夫を支え続ける。
しかし、政治や外交の問題、権力争いといった時代の厳しい波に翻弄される2人。結局、ウォルターはエル・ドラドの金を発見できず、反逆の罪をきせられて、断頭台の露と消えた・・・。しかし彼は最後まで妻ベスを心の拠り所として生き、妻もまた夫への愛を貫いたのだった・・・。
ヴァージン・クイーンが愛した男
イギリス、エリザベス1世の時代が舞台になっています。伊達男と言われたウォルター・ローリーは、エリザベス女王の寵愛を得て近衛隊長まで上り詰め、最期は断頭台で人生の幕を閉じます。
ヴァージン・クイーンだったエリザベスと、近衛隊長のウォルター、そしてウォルターの妻となったもう1人のエリザベス。その3人の奇妙な関係が歴史の大きな渦に翻弄されながら紡がれていきます。(40代女性)
「傭兵ピエール」佐藤賢一

<あらすじ>
十五世紀、百年戦争下のフランス。王家の威信は失墜、世には混沌と暴力が充ち、人々は恐怖と絶望の淵に沈んでいた。そんな戦乱の時代の申し子、傭兵隊を率いる無頼漢ピエールは、略奪の途中で不思議な少女に出会い、心奪われる。その名は――ジャンヌ・ダルク。この聖女に導かれ、ピエールは天下分け目の戦場へと赴く。かくして一四二九年五月六日、オルレアン決戦の火蓋は切られた……。
ジャンヌ・ダルクに恋をした、一人の傭兵の成長物語
フランスの百年戦争で英雄と呼ばれたジャンヌ・ダルクは有名ですが、そんなジャンヌに恋をした一人の傭兵の物語になっているので、戦争という重たい内容でありながらも、恋愛要素もあるので読みやすいです。
ただこの時代の傭兵なので仕方ないけれど、ピエールが悪いこともするし、教科書には書かれないような傭兵の実態なども描かれているので、かなり生々しいです。(30代女性)
「背教者ユリアヌス」辻邦生

<あらすじ>
大帝の甥として生まれるも、キリスト教勢力拡大に野心を燃やす司教一派によって両親を殺害され、幽閉生活を送るユリアヌス。ギリシア古典の塾へ通うことを許されたことから、友を得、学ぶこと、生きることへ喜びを見出していくが、その前に歴史の荒波は容赦なく立ちはだかるのだった――壮大な歴史ロマン開幕!
古代ローマ帝国を舞台とした、理知的な青年皇帝の悲劇的物語
古代ローマ帝国の皇帝、ユリアヌスを主人公とした小説です。文庫本で4冊に及ぶ長大な大河小説と言ってよいでしょう。タイトルにおける「背教者」とはキリスト教から見た表現です。古代ローマにおいてキリスト教が隆盛になっていく中、ギリシアの哲学を学び、ギリシアの神々を信仰していたユリアヌスはそう呼ばれたのです。
高貴な家柄に生まれたユリアヌスは政治の権謀術数と偶然の重なりから皇帝の位に就き、自ら軍を率いて戦い続ける生涯でしたが、ユリアヌス自身は内省的で知的な人物でした。その人間的な苦悩が描かれた名作です。(50代男性)
「ハンニバル戦争」佐藤賢一

<あらすじ>
時は紀元前三世紀。広大な版図を誇ったローマ帝国の歴史で、史上最大の敵とされた男がいた。カルタゴの雷神・バルにあやかりつけられた名はハンニバル。戦を究めた稀代の猛将軍・ハンニバルが今、復讐の名の下にアルプスを超えた。予測不可能な強敵を前に、ローマの名家出身の主人公・スキピオは、愛する家族と祖国を守り抜けるのか?
偉大な軍神ハンニバルとの闘い
紀元前三世紀、ローマ帝国(実際には帝国になる前の共和制時代)のスキピオという軍人が主人公。
ローマとカルタゴ(アフリカ北岸にあった国)の将軍ハンニバルとの壮絶な戦争を描いた作品です。当時のローマはまだ小さく、カルタゴのほうが軍事的にも文化的にもローマよりも圧倒的に格上の国でした。
そのカルタゴの将軍ハンニバルの天才的な戦の神とも言える戦略でローマは苦しめられます。
そんな状況下でもスキピオはハンニバルに立ち向かい、闘いを挑みます。
スピキオもハンニバルも知らない人でもこの小説を読み終えた後はこの二人を好きになっていると思います。(40代男性)
「イヴァン雷帝」アンリ・トロアイヤ

ロシア帝国の始まりは、この孤独な「雷帝」から始まった
16世紀のロシアの君主で、始めて「ツアーリ」を名乗ったイワン4世。西ヨーロッパではルネサンスからバロックに移り変わる時代でしたが、濃密な中世にあったロシアを描いた大作です。
幼くして即位した過酷で悲惨な少年期。貴族に圧倒されながら逆襲を狙い続けた青年期。改革と粛清、合理性と狂信家としての二面性、素朴で純真ながら残虐、という人物像の描写はロシアの原点を感じさせる作品です。(40代女性)
「レ・ミゼラブル」ビクトル・ユゴー

<あらすじ>
貧しいジャン・ヴァルジャンはパンを盗んだ罪で監獄に送りこまれて十数年ものあいだ苦しみ、さらに出所後も差別に悩まされる。しかし、ある司教に出会ったことで生まれ変わった彼は、まったくちがう人生を歩きはじめる。そして、不幸な美女ファンテーヌと出会い、彼女を救おうとするが、執拗に追いまわすジャヴェール警部が行く手に立ちふさがる!
時代に翻弄された革命時代の人びと
1800年代初頭のフランス、パリ。フランス革命後の、王政復古と共和主義のせめぎ合いの時代。
生活苦からひとかけらのパンを盗んだ事から始まる囚人ジャン・ヴァルジャンの数奇な生涯を中心にして、激動の時代に翻弄されるパリの人びとを緻密に描いた作品。ノーカット版は本筋からはあまり重要でないようなエピソードも深く掘り下げて語られており、冗長であるようにも感じられるが、現在からは想像しにくい当時のパリの風俗や街の様子、民衆の意識までもが非常にリアルに伝わって来る。(40代男性)
「三銃士」アレクサンドル・デュマ

時は17世紀のパリ。ルイ13世の治世。花の都で一旗あげようと希望に燃え、意気揚々と上京してきた青年剣士ダルタニャン。3人の銃士、アトス、ポルトス、アラミスにひょんな行き違いから決闘を申し込まれるが……。固い友情で結ばれた4人の男が、悪玉リシュリユー枢機卿らの企みに挑む! あわや身の破滅かと思われた王妃の危機、謎の妖女ミラディーの陰謀――。フランスとイギリスをまたにかけ、ダルタニャンと三銃士が縦横無尽に駆け巡る! 恋と冒険に彩られた、生き生きと躍動する義侠心に満ちた男たちの物語!
銃士たちの友情と冒険物語
ルイ13世時代のフランスを舞台にした小説で、無鉄砲な主人公のダルタニャンと王に仕える三銃士との友情と冒険の含めたストーリーが面白かったです。
始めは三銃士と呼ばれるアトス・アラミス・ポトスとあまり良い出会いをしませんが、剣を交えた戦いや策略もある冒険を通して、お互いに信頼関係を深めていくのが良かったです。
ダルタニアンたちが、次々に問題や事件に巻き込まれていくので歴史小説としてだけでなく、ハラハラする冒険小説としても最後まで飽きずに読むことができます。(30代女性)
「不毛地帯」山崎豊子

大本営参謀・壹岐正は、終戦工作に赴いた満州でソ連軍に抑留される。
酷寒のシベリアで、想像を絶する飢餓と強制労働に11年にわたって耐え抜き、
ついに昭和31年、帰還を果たした。
その経歴に目を付けた近畿商事の社長大門の熱心な誘いに応え、
第二の人生を商社マンとして歩むことを決意。
地獄の抑留生活の傷も癒えぬまま、再び「商戦」という名の新たな戦いに身を投じる。
戦争の残酷さと人が生きることについて考えさせられる物語
第二次世界大戦、終戦工作のために満州へ行った主人公が、シベリアで抑留されたところから物語は始まります。
過酷な自然環境、劣悪な人間関係の中で10年以上も耐え抜いた様子は、まさに地獄のようで目をそむけたくなりました。それでも、主人公の強さにひかれて読み続けました。今、ロシアでまた戦争が起こっていますが、戦争について、人間について改めて考えなければいけないのではないか、そう思わせる小説です。(40代女性)