フランス映画おすすめ11選|コメディ・ヒューマン編 ── 笑って泣いて、人間っていいなと思える物語

おすすめフランス映画。コメディ・ヒューマン編
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フランス映画というと「難しそう」「暗そう」というイメージを持つ人は少なくない。

でも、実はフランスには極上のコメディが山ほどある。ドタバタの笑いの中に人間の温かさがにじみ出る作品、風刺の効いたユーモアで社会を射抜く作品、そして笑いながらいつの間にか泣かされている作品。フランスのコメディは「笑い」と「人間ドラマ」の距離がとても近い。

この記事では、フランス映画の中から「コメディ」と「ヒューマンドラマ」を掛け合わせた11作品を紹介する。フランス映画初心者でも入りやすい作品を中心に、観終わったあとに心がほんのり温まる、そんなラインナップを目指した。

目次

最強のふたり

監督: エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ 出演: フランソワ・クリュゼ、オマール・シー 公開年: 2011年 / 上映時間: 113分

最強のふたり

首から下が動かない富豪と、空気を読まない介護人。この凸凹が最高に可笑しくて、泣ける

パラグライダーの事故で首から下が麻痺した富豪のフィリップ。介護人の面接にやって来たのは、スラム出身で刑務所を出たばかりの黒人青年ドリス。不採用の証明書がほしいだけのドリスだったが、フィリップは「自分に同情しない」その態度を気に入り、彼を採用する。クラシック音楽とアース・ウインド・アンド・ファイアー、高級スーツとスウェット。まったく接点のない二人が衝突しながらも深い友情を育んでいく。

実話に基づくこの作品は、フランスで歴代3位の観客動員数を記録する大ヒットとなり、日本でもフランス語映画として歴代1位の興行収入を達成した。セザール賞ではオマール・シーが主演男優賞を受賞。東京国際映画祭でもグランプリを受賞し、主演のクリュゼとシーが最優秀男優賞を共同受賞している。「障がいを扱った感動もの」と身構える必要はない。ドリスのデリカシーのなさが逆にフィリップを解放していく過程が、本当に可笑しくて、同時にどうしようもなく温かい。

「最強のふたり」の関連テーマ

シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜

監督: ダニエル・コーエン
出演: ジャン・レノ、ミカエル・ユーン、ラファエル・アゴゲ
公開年: 2012年 / 上映時間: 85分

シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜

スランプの巨匠シェフと、クビになり続ける天才の舌を持つ若者が組んだら

パリの超高級三ツ星フレンチレストランのカリスマシェフ、アレクサンドルは深刻なスランプに陥っていた。次の品評会で星をひとつでも失えばクビ。そんな窮地に、老人ホームのペンキ塗りをしていた若者ジャッキーと出会う。彼は有名シェフのレシピを完璧に再現できる天才的な舌の持ち主だが、こだわりが強すぎてどのレストランもクビになってきた問題児。プライドの高いベテランと生意気な若手、正反対の二人がぶつかり合いながら、三ツ星を守るための勝負の一皿に挑む。

ジャン・レノがコメディ全開で芸者メイクの変装まで披露する姿だけでも一見の価値がある。フランス版「料理の鉄人」とも言えるような厨房バトルのスピード感と、寄せ集めチームが力を合わせていく王道の展開が心地いい。料理映画としても画面に並ぶフレンチの美しさは本物で、観終わるとフランス料理が食べたくなること必至。85分とコンパクトで、気負わず楽しめるフレンチ・コメディの好編。

奇人たちの晩餐会

監督: フランシス・ヴェベール 出演: ジャック・ヴィルレ、ティエリー・レルミット、ダニエル・プレヴォスト 公開年: 1998年 / 上映時間: 80分

奇人たちの晩餐会

「バカ」を笑い者にするはずが、バカのほうが一枚上手だった

パリの出版社社長ピエールは、毎週水曜に友人たちと「奇人の晩餐会」を開いている。各自が見つけてきた「バカ」を連れてきて、そのバカっぷりを笑い合うという趣味の悪い集まりだ。今週ピエールが連れてきたのは、マッチ棒で模型を作るのが趣味の税務局職員ピニョン。しかし、晩餐会当日にピエールがぎっくり腰になったことから、二人きりの奇妙な夜が始まる。

わずか80分。舞台はほぼピエールの自宅だけ。それなのに、次から次へと巻き起こるトラブルのテンポの良さは圧巻で、声を上げて笑ってしまう。セザール賞では脚本賞、主演男優賞、助演男優賞の3冠を達成。バカにされているはずのピニョンが、終盤でとてつもなく粋な振る舞いを見せるあの瞬間。笑いの果てにある人間の優しさが、この映画をただのコメディで終わらせない。

アーティスト

監督: ミシェル・アザナヴィシウス 出演: ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ 公開年: 2011年 / 上映時間: 101分

アーティスト

2011年に作られた白黒サイレント映画が、アカデミー作品賞を獲った

1927年のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは映画界の頂点にいた。ある日、若い端役女優ペピー・ミラーと出会い、彼女をスターへと導いていく。しかし時代はサイレントからトーキーへ。声の時代に乗れないジョージは没落し、一方のペピーはスターダムを駆け上がる。

21世紀にモノクロ・サイレントで映画を撮るという「無謀」が、第84回アカデミー賞で作品賞を含む5部門受賞という「奇跡」を起こした。フランス映画として史上初のアカデミー作品賞受賞作。セリフのない映画なのに、表情とジェスチャーだけでこれほど心が動くのかと驚かされる。映画というメディアへの深い愛に満ちた、笑えてじんわり泣ける一本。愛犬アギーの名演にも注目してほしい。カンヌ国際映画祭でパルムドッグ賞(最も優れた演技を見せた犬に贈られる賞)を受賞している。

おかしなおかしな訪問者

監督: ジャン=マリー・ポワレ 出演: ジャン・レノ、クリスチャン・クラヴィエ 公開年: 1993年 / 上映時間: 107分

おかしなおかしな訪問者

中世の騎士と従者が現代にタイムスリップ、文明の洗礼を浴びる

12世紀の騎士ゴドフロワと従者ジャックイユは、魔法使いの薬の調合ミスで現代のフランスにタイムスリップしてしまう。自動車に怯え、水洗トイレに驚き、テレビに剣を振りかざす二人。一方、現代に残るゴドフロワの子孫たちもこの珍客に大混乱。果たして二人は無事に中世に戻れるのか。

フランス国内で観客動員数1,370万人超という驚異的な大ヒットを記録した、フランスを代表するドタバタコメディ。ジャン・レノがシリアスなアクション俳優ではなく、困惑する中世の騎士を全力で演じているのが新鮮で、クリスチャン・クラヴィエの怪演も強烈。文化のギャップを笑いに変える手腕はさすがフランスで、フランス人のセルフパロディ的な要素もたっぷり。頭を空っぽにして笑いたいときに最適な一本。

プチ・ニコラ

監督: ローラン・ティラール 出演: マキシム・ゴダール、カド・メラッド、ヴァレリー・ルメルシエ 公開年: 2009年 / 上映時間: 91分

プチ・ニコラ

フランス国民が愛する「ちょっとおバカな男の子」の冒険

パパとママと幸せに暮らす男の子ニコラ。ところがある日、弟が生まれるかもしれないという噂を聞きつけ、「弟ができたら自分は捨てられる」と大パニック。仲間たちと一緒に「弟の誕生を阻止する作戦」を決行するが、子どもの発想はどんどん斜め上に暴走していく。

ルネ・ゴシニ(「アステリックス」の原作者)とジャン=ジャック・サンペのイラストで知られるフランスの国民的児童文学シリーズの映画化。1960年代のフランスの空気感を丁寧に再現した美術とファッションが美しく、子どもたちの無邪気な暴走っぷりが微笑ましい。大人が観ても楽しいのは、ニコラの「パパとママに愛されたい」という純粋な動機に、誰もが自分の子ども時代を重ねるからだろう。家族で観るフランス映画としてもぴったり。

しあわせの雨傘

監督: フランソワ・オゾン 出演: カトリーヌ・ドヌーヴ、ファブリス・ルキーニ 公開年: 2010年 / 上映時間: 103分

しあわせの雨傘

夫の工場をストライキから救ったのは、誰もが「飾り」だと思っていた妻だった

1977年、フランスの田舎町。雨傘工場を経営するロベールの妻シュザンヌは、美しいが社交と趣味にしか興味のない典型的なブルジョワ夫人。しかし夫が倒れ、工場で労働者のストライキが勃発すると、シュザンヌは思いもよらない行動力と経営手腕を発揮し始める。

サスペンス・クライム編で紹介したオゾン監督の、まったく違った一面が見られる痛快コメディ。カトリーヌ・ドヌーヴが「飾り物の妻」から覚醒していく姿が爽快で、70年代のカラフルなファッションや内装も目を楽しませてくれる。ドヌーヴの堂々たる存在感と、コメディエンヌとしての引き出しの深さに改めて感服する作品。フェミニズムの旗を振るわけでもなく、ただ「この人、実はすごかった」という痛快さで突き抜けている。

ぼくを探しに

監督: シルヴァン・ショメ 出演: ギョーム・グイ、アンヌ・ル・ニ、ベルナデット・ラフォン 公開年: 2013年 / 上映時間: 106分

ぼくを探しに

声を失った青年が、風変わりな隣人たちに導かれて過去と向き合う

幼い頃のトラウマで声を失ったピアニストのポール。パリのアパルトマンで2人の叔母と暮らす彼のもとに、ある日風変わりな隣人マダム・プルーストが引っ越してくる。彼女が出すハーブティーには不思議な力があり、ポールは封印していた子ども時代の記憶を少しずつ取り戻していく。

「ベルヴィル・ランデブー」で知られるアニメーション作家シルヴァン・ショメの実写長編デビュー作。アニメ出身の監督らしく、実写でありながらどこかアニメーション的な動きや色彩感覚が画面に漂っている。ショメ独特のノスタルジックで少し不思議な世界観が好きな人にはたまらない一本。喪失と再生の物語が、ユーモアと温かさに包まれて優しく紡がれている。

ザ・ゲーム 〜赤裸々な宴〜

監督: フレッド・カヴァイエ 出演: ベレニス・ベジョ、スザンヌ・クレマン、ロシュディ・ゼム 公開年: 2018年 / 上映時間: 90分

ザ・ゲーム 〜赤裸々な宴〜

「スマホの中身を全員で共有しよう」月食の夜、7人の秘密が暴かれる

月食の夜、旧知の友人たち7人がディナーに集まる。何気ない会話の流れから「今夜届くメッセージや電話をすべてその場で公開しよう」というゲームが始まる。最初は笑いながら応じていた面々だが、スマホの通知が鳴るたびに、それぞれが隠していた秘密が次々と暴露されていく。

イタリア映画「おとなの事情」(2016年)のフランス版リメイク。原題は「Le Jeu(ゲーム)」。設定はシンプルだが、7人の人間関係が複雑に絡み合い、笑いと気まずさが交互に押し寄せてくる。現代人なら誰もが「自分のスマホを見せろと言われたら……」と想像してゾッとするはずだ。友情、夫婦関係、そしてプライバシー。笑いながら、ちょっと考えさせられる。

ルビー&カンタン

監督: フランシス・ヴェベール 出演: ジャン・レノ、ジェラール・ドパルデュー 公開年: 2003年 / 上映時間: 85分

ルビー&カンタン

寡黙な殺し屋と、口から生まれたようなおしゃべり男の脱獄珍道中

恋人を殺した男への復讐を誓い、刑務所で黙々と脱獄計画を練る寡黙なルビー。そんな彼の独房に、人一倍おしゃべりで陽気な問題児カンタンがやって来る。計画外のカンタンを引き連れたまま脱獄に成功するも、行く先々でカンタンが騒動を起こし、ルビーの復讐計画はことごとく狂っていく。

「奇人たちの晩餐会」のヴェベール監督が、ジャン・レノとジェラール・ドパルデューというフランス映画界の二大スターを初共演させた痛快コメディ。85分というタイトな尺の中で、脱獄、逃走、女装、そして予想外のアクションが矢継ぎ早に繰り出される。無口で怖い顔のレノが、ドパルデューの天然ボケに振り回される姿が可笑しくてたまらない。水と油のような二人の間にいつしか芽生える奇妙な友情が、この映画をただのドタバタで終わらせない。

女はみんな生きている

監督: コリーヌ・セロー 出演: カトリーヌ・フロ、ラシダ・ブラクニ、ヴァンサン・ランドン 公開年: 2001年 / 上映時間: 112分

女はみんな生きている

平凡なブルジョワ夫人が、路上で刺された見知らぬ女性を助けたことから始まる連鎖

パリに暮らす典型的なブルジョワ夫人エレーヌは、ある夜、目の前で暴行を受けた若い女性ノエミを助ける。ノエミは北アフリカからの移民で、売春組織に支配されていた。ノエミとの出会いをきっかけに、エレーヌ自身もまた、自分が夫に支配されてきた人生に気づき始める。

「赤ちゃんに乾杯!」で知られるコリーヌ・セロー監督が、移民女性への暴力と、ブルジョワ女性の目覚めを重ね合わせて描いた社会派ヒューマンコメディ。重いテーマを扱いながらも、ユーモアと女性たちの連帯のエネルギーがあふれていて、観ていて気持ちが前を向く。カトリーヌ・フロの「おっかなびっくり覚醒していく」演技が絶妙で、力強いのに押しつけがましくない。静かに怒り、静かに立ち上がる女性たちの姿は、20年以上経った今もまったく古びていない。

11作品を紹介してきたが、フランスのコメディに共通しているのは、「笑い」が目的ではなく「人間を描く」ための手段になっているということだ。

障がいを持つ富豪と移民の青年の友情。中世の騎士が見た現代文明の滑稽さ。スマホの中に潜む秘密と嘘。どの作品も、笑いの底に人間の弱さや優しさ、ときには社会の矛盾が透けて見える。だからこそ、笑ったあとに何か残るものがある。

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