生き残るのは誰だ——国内デスゲーム小説おすすめ

国内デスゲーム小説おすすめ
  • URLをコピーしました!
※小説やコミックの発売巻数や既刊などの情報は記事が書かれた当時のものとなります。

ページをめくる手が止まらなくなる物語というのがある。デスゲーム小説は、その代表格だ。理不尽なルールに放り込まれた人間が、生き延びるために頭をしぼり、ときに裏切り、ときに手を取り合う。その極限で剥き出しになるのは、ふだん隠れている本性のほうだ。怖いのに目が離せない。気づけば、自分ならどう動くかを考えている。

国内の作家たちは、この題材で独自の進化を遂げてきた。孤島での殺し合いもあれば、教室という日常空間が地獄に変わる話もある。推理で生き残る頭脳戦もあれば、ルールそのものの理不尽さに震える話もある。ここでは、デスゲームというジャンルを語るうえで外せない名作から、知る人ぞ知る良作まで、国内小説に絞って紹介していく。読む順番は問わない。気になったものから手に取ってほしい。

目次

バトル・ロワイアル

高見広春/幻冬舎文庫(上・下)/1999年太田出版刊・2002年文庫化/第5回日本ホラー小説大賞最終候補

バトル・ロワイアル

クラスメイト全員が、明日の敵になる

架空の全体主義国家を舞台に、ある中学校の三年B組が、修学旅行のバスごと無人島へ拉致される。そこで強制されるのは、政府主催の殺人プログラム。生き残れるのはたった一人。クラスメイト同士で殺し合えという、あまりに苛烈な命令が下される。

日本のデスゲームを語るうえで、この作品を抜きには始められない。発表当時、その内容の過激さは審査員すら震え上がらせ、賛否を巻き起こした。だが本作の本質は、残虐性そのものではない。四十二人それぞれに用意された人生、友情、初恋、後悔——そのひとつひとつが丁寧に描かれているからこそ、彼らが脱落していく重みが胸に刺さる。極限状況で人がどんな選択をするのか、その振れ幅の広さに引き込まれる。デスゲームというジャンルの原点であり、いまも到達点のひとつだ。

インシテミル

米澤穂信/文春文庫/2007年文藝春秋刊・2010年文庫化/第8回本格ミステリ大賞最終候補

インシテミル

時給十一万二千円、その正体は殺し合いだった

破格の時給につられて集まった十二人の男女。彼らが連れてこられたのは、地下の実験施設・暗鬼館だった。一週間そこで過ごすだけ——のはずが、参加者には一人ずつ異なる凶器が配られ、殺人を犯すほど報酬が跳ね上がるルールが告げられる。殺意が、金で焚きつけられる。

『氷菓』などの青春ミステリで知られる米澤穂信が、古典本格ミステリへの愛をぶつけた一作だ。本作の妙味は、ただ殺し合うのではなく、起きた殺人の犯人を推理しながら生き延びる点にある。クローズドサークルの緊張感と、フェアに張りめぐらされた謎解きが両立している。血なまぐさい設定とは裏腹に、知的なゲームとして読める。デスゲームと本格ミステリ、その両方を一度に味わいたい人に向く。

クリムゾンの迷宮

貴志祐介/角川ホラー文庫/1999年刊

クリムゾンの迷宮

目覚めたら、見知らぬ赤い岩山の中にいた

藤木芳彦が目を覚ますと、そこは一面が深紅色の奇岩に覆われた異様な世界だった。傍らに置かれた携帯ゲーム機には、火星の迷宮へようこそ、ゲームは開始された、と表示されている。集められた男女は、東西南北のルートに分かれ、チェックポイントでアイテムや情報を得ながらゴールを目指すことになる。だがこのゲーム、生き残りを賭けた凄惨なものだった。

『黒い家』で知られる貴志祐介の、サバイバルホラーの傑作だ。荒野での食料調達、罠の知識、極限の飢餓——ゲームブックのようなワクワク感で進んでいくのに、人間が追い詰められて変貌していく恐怖が後半でじわじわ効いてくる。空腹と渇きが理性を蝕んでいく描写が生々しく、読んでいるこちらまで喉が渇く。自然そのものが敵になる怖さを、これほど体感させてくれる作品は少ない。

王様ゲーム

金沢伸明/双葉文庫/ケータイ小説発・2009年双葉社刊・2011年文庫化

王様ゲーム

王様の命令は、絶対だ

ある日、高校のクラス全員の携帯に、王様を名乗る人物からメールが届く。最初は他愛のない命令だった。だが従わなかった者に下されるのは、死。命令は回を追うごとにエスカレートし、クラスメイトたちは互いを犠牲にしてでも生き延びようとしていく。

携帯小説サイト発の作品で、当時の若い読者を中心に爆発的な支持を集め、シリーズ累計は数百万部に達した。文章は平易で、設定もシンプル。だからこそ命令という一点の理不尽さが際立つ。なぜ自分たちがこんな目に遭うのか、誰が王様なのか——わからないまま強いられる恐怖が全編を貫く。携帯電話に届く一通のメールで日常が地獄に変わるという感覚は、スマホが当たり前になったいま読んでもなお身近で、ぞっとさせられる。シリーズものなので、ハマったら続けて世界に浸れるのも魅力だ。

リアル鬼ごっこ

山田悠介/幻冬舎文庫/2001年文芸社刊・2004年文庫化(全面改訂版)

リアル鬼ごっこ

佐藤という名前だけで、命を狙われる

ある国の王が、退屈しのぎに国民を巻き込んだ鬼ごっこを始める。標的は、佐藤の姓を持つ者すべて。逃げ切れば生き延びられるが、鬼に捕まれば死。ありふれた名字を持つというだけで、何百万もの人間が命がけで走り続けることになる。

山田悠介のデビュー作にして、彼の名を一躍知らしめた一冊だ。佐藤姓を標的にするという発想は、シュールでありながら不気味なリアリティを持つ。自分ではどうにもできない属性で生死が決まる不条理が、物語の根っこにある。なお、最初の文芸社版は文章の粗さも話題になったが、ここで挙げた幻冬舎文庫版は全面的に改稿されており、読みやすさが大きく増している。入手のしやすさも含めて、これから読むなら文庫版がいい。理屈より勢いで読ませる、エンタメとしての推進力が持ち味だ。

パズル

山田悠介/角川文庫/2004年角川書店刊・2007年文庫化

パズル

校舎に散らばった二千ピースを、四十八時間で

超有名進学校の、エリート中のエリートだけを集めたクラス。そこへ正体不明の武装集団が侵入し、担任教師を人質に取る。教師を救う条件は、広大な校舎の各所に隠された二千ものパズルのピースを探し出し、制限時間内に完成させること。タイムリミットは四十八時間。失敗すれば、人質の命はない。

同じ山田悠介の作品でも、こちらは超常的な要素を排し、現実的なサバイバルに振った一作だ。見どころは、ふだん成績だけを競い合い、互いに無関心だったエリートたちが、極限のなかで少しずつ協力し、人間らしさを取り戻していくところにある。塔のように積み上げられた競争意識が崩れ、ただの仲間に戻っていく過程に温度がある。サクサク読めるテンポの良さもあり、デスゲーム入門としても手に取りやすい。

極限推理コロシアム

矢野龍王/講談社文庫/2004年講談社ノベルス刊・のち文庫化/第30回メフィスト賞受賞

極限推理コロシアム

二つの館、先に犯人を当てたほうが生き残る

強制的に集められた男女が、夏の館と冬の館、二つの館に分けられる。主催者の命令は、これから起きる殺人事件の犯人を当てよ、というもの。しかも、もう一方の館より先に正解しなければならない。不正解の代償は、館に残る全員の死。二つのチームが、協力と欺きの間で揺れながら推理を競い合う。

メフィスト賞を受賞してデビューした矢野龍王の一作で、デスゲームと本格推理を掛け合わせた構造が特徴だ。二館対抗という設定はこのジャンルでも珍しく、相手チームとの駆け引きが緊張感を生む。文庫版の解説を貴志祐介が手がけている点も、ジャンル好きにはうれしい。トリックの評価は読者によって分かれるところもあるが、犯人当てを生死に直結させるアイデアと、その黎明期を支えた一作としての位置づけは見逃せない。

扉の外

土橋真二郎/電撃文庫/2007年刊/第13回電撃小説大賞金賞受賞

扉の外

人工知能が支配する密室で、ルールだけが神になる

修学旅行へ向かっていたはずの高校生・千葉紀之が目を覚ますと、そこはクラス全員が閉じ込められた密室だった。やがてソフィアと名乗る人工知能が現れ、生活の保証と引き換えに、ルールへの服従を持ちかける。閉ざされた空間で、生徒たちはゲームに参加させられ、序列と駆け引きの渦に巻き込まれていく。

ライトノベルでありながら、心理戦の濃度が高い一作だ。直接的な殺し合いよりも、ルールに支配された人間関係がどう歪んでいくかに焦点が当たる。閉鎖空間に置かれた集団が、いつのまにか小さな社会と権力構造を作り上げてしまう怖さ。その観察がこの物語の核心にある。電撃小説大賞の金賞を受けた完成度の高さも光る。じわじわと首を絞められるような緊張感が好きな人に向く。

そして粛清の扉を

黒武洋/新潮文庫/2000年第1回ホラーサスペンス大賞受賞・2001年新潮社刊・2005年文庫化

そして粛清の扉を

卒業式前日、地味な女教師が教室を占拠した

荒れ果てた高校。卒業式の前日、ある女性教師が、問題児ばかりが集まったクラスを占拠する。武器を手にした彼女は、生徒を人質に取り、一人また一人と処刑を始める。包囲する警察、騒ぎ立てるマスコミ、動揺する保護者——その全てを、平凡に見える中年女教師が周到な計画で翻弄していく。彼女の本当の狙いは何なのか。

参加者同士が殺し合う形式ではなく、教師による一方的な粛清という構造ゆえ、デスゲームの中ではやや異質な立ち位置にある。それでも、卒業式前日の教室という閉ざされた舞台、命が次々に奪われる緊迫感、そして犯人の真意をめぐる謎という点で、本作はバトル・ロワイアルとしばしば並べて語られてきた。少年法や被害者感情といった重いテーマを孕みながら、読者をぐいぐい引き込むエンタメに仕上げた手腕が見事だ。読み進めるほど、いつのまにか犯人の側に感情を寄せている自分に気づく。その居心地の悪さこそが、この作品の力だ。

十二人の死にたい子どもたち

冲方丁/文春文庫/2016年文藝春秋刊・2018年文庫化

十二人の死にたい子どもたち

集まった十二人、横たわる十三人目の死体

廃業した病院に、初対面の十二人の少年少女が集まる。目的は、みなで安楽死をすること。全員一致で実行するはずだった。ところが、集いの場のベッドには、すでに見知らぬ少年の死体が横たわっていた。彼は何者なのか。自殺か、他殺か。このまま計画を進めてよいのか——予定外の事態を前に、十二人は議論を重ねていく。

『マルドゥック・スクランブル』『天地明察』などで知られる冲方丁が、初めて挑んだ現代ミステリだ。本作は殺し合う物語ではない。むしろ『十二人の怒れる男』を思わせる、密室での議論劇である。一人ひとりが抱える死にたい理由が少しずつ明かされ、価値観の異なる者たちが本気でぶつかり合うなかで、結論は思わぬ方向へ動いていく。命をめぐって全員で考え抜くという、変化球のデスゲームだ。重い題材だが、思春期の痛みと煌めきが詰まった、静かに胸を打つ一作になっている。

なお、この作品は自殺や安楽死を題材にしている。もし読んでいて気持ちがつらくなるようなら、無理をせず一度本を閉じてほしい。

二人一組になってください

木爾チレン/双葉社/2024年刊

二人一組になってください

誰かと手を繋がないと、死ぬ

とある女子高の卒業式直前。担任教師が、特別授業と称してデスゲームを宣言する。ルールはただ一つ、二人一組になること。組めなかった者は失格、つまり死。一度組んだ相手とは二度と組めない。教室という閉ざされた空間で、二十七人の少女たちが、手を取り合う相手を必死に探し始める。

近年のヒット作で、デスゲームにスクールカーストといじめという題材を掛け合わせた点が新しい。二人一組になってください——体育の授業で誰もが一度は聞いたこの言葉の、余ってしまうことの惨めさを、作者は痛いほど知っている。だからこそ、この設定は恐ろしくリアルに響く。華やかな一軍、目立たない二軍、最下層の三軍。普段は見えないクラスの序列が、生死を分ける場面で容赦なく暴かれていく。表面的な友情が崩れ、無自覚だった悪意が露わになる。物語を追いながら、自分は教室でどの位置にいたのかを、否応なく思い出させられる。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次