【邦画】犬が主役の映画12選!実話から心温まる名作まで

犬が主役の映画・邦画編
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あなたは最近、犬と目が合ったことがありますか?

散歩中のすれ違い、テレビの向こう側、あるいは記憶の中にいるあの子。犬はいつも、言葉を使わずに何かを伝えてくる。嬉しいときは全身で、悲しいときは静かに、ただそばにいることで。

映画の中の犬たちも同じだ。彼らは台詞を持たない。けれど、スクリーンの中で走り、吠え、寄り添い、時に遠くを見つめるその姿が、私たちの胸の奥にある何かをそっと揺らす。

今回は、犬が主人公あるいは物語の鍵となる邦画を12本集めた。実話に基づく作品から、社会問題に切り込むもの、北海道の大自然を舞台にしたファンタジーまで。どの作品にも共通しているのは、犬と人間の間に流れる、静かで確かな時間の描写だ。

目次

南極物語

監督:蔵原惟繕 / 出演:高倉健、渡瀬恒彦、夏目雅子 / 1983年公開 / 145分 / 配給:日本ヘラルド映画=東宝

南極物語

氷点下の大地に置き去りにされた15頭の、生きる意志

1958年、南極観測隊は悪天候のため撤退を余儀なくされ、昭和基地に15頭のカラフト犬を鎖につないだまま残していくことになる。翌年、基地に戻った隊員たちの目に映ったのは――。

タロとジロの実話をもとにした本作は、公開当時の邦画興行収入記録を塗り替えた大ヒット作だ。CGなど存在しない時代に、北極圏での3年以上にわたるロケで撮影された映像の迫力は、40年以上経った今も色褪せない。犬たちが生き延びようとする姿と、置き去りにした罪悪感に苛まれる隊員たちの苦悩。そのどちらにも嘘がない。ヴァンゲリスの荘厳な音楽が南極の白い世界に重なるとき、この映画は単なる動物映画を超えた壮大な叙事詩になる。

ハチ公物語

監督:神山征二郎 / 原作・脚本:新藤兼人 / 出演:仲代達矢、八千草薫、柳葉敏郎 / 1987年公開 / 107分 / 配給:松竹富士

ハチ公物語

雨の日も、雪の日も、あの人を待つ

渋谷駅の銅像として誰もが知るハチ公。その実話を、大正から昭和にかけての時代を丁寧に再現しながら映画化した作品だ。大学教授・上野秀次郎のもとにやってきた秋田犬のハチは、毎日渋谷駅まで教授を送り迎えすることが日課になる。しかし教授は講義中に急逝してしまう。

仲代達矢が演じる教授とハチの穏やかな日常の描写が美しい。「人には人格が、犬には犬格がある」という教授の言葉には、犬を対等な存在として見るまなざしが宿っている。そして教授亡き後、雨の日も雪の日も渋谷駅に通い続けるハチの姿。周囲の人々が移り変わっても、ハチだけが変わらない。その一途さが、観る者の涙腺を静かに壊していく。

クイール

監督:崔洋一 / 原作:秋元良平・石黒謙吾『盲導犬クイールの一生』 / 出演:小林薫、椎名桔平、香川照之、寺島しのぶ / 2004年公開 / 100分 / 配給:松竹

クイール

12年と25日。ひとつの命が、たくさんの人生を照らした

脇腹にカモメのような模様を持って生まれたラブラドール・レトリバーのクイール。パピーウォーカーのもとで1年間育てられた後、盲導犬訓練センターで訓練を受け、やがて視覚障害者の渡辺と出会う。

崔洋一監督の演出は、「泣かせ」に走らない。犬と人間がただ一緒にいる時間を、静かに丁寧に積み重ねていく。のんびり屋でマイペースなクイールが、ハーネスを通じて渡辺の心を少しずつ開いていく過程が淡々と描かれるからこそ、別れの場面が深く刺さる。パピーウォーカー、訓練士、パートナー――クイールの12年の生涯には何度もの出会いと別れがあり、それはまるで人間の一生の縮図のようだ。

マリと子犬の物語

監督:猪股隆一 / 原作:桑原眞二・大野一興『山古志村のマリと三匹の子犬』 / 出演:船越英一郎、松本明子、高嶋政伸、宇津井健 / 2007年公開 / 124分 / 配給:東宝

マリと子犬の物語

震度6の夜、母犬は子犬を守り続けた

2004年の新潟県中越地震。山古志村で暮らす石川家の愛犬マリは、地震の直後に3匹の子犬を産んだばかりだった。家族は自衛隊のヘリで救助されるが、マリと子犬たちはヘリに乗せてもらえず、無人の村に取り残されてしまう。

実話をもとにしたこの物語で最も胸を打つのは、マリが子犬を守り抜く母としての姿だ。がれきの下敷きになった家族を励まし、子犬に乳をやり、寒さと飢えに耐える。自衛隊のヘリが去っていくのを見上げるマリの目が、今も忘れられないという人は多いだろう。久石譲の音楽が物語をしっかり支え、子役たちの自然な演技も光る。

犬と私の10の約束

監督:本木克英 / 原作・脚本:川口晴・澤本嘉光 / 出演:田中麗奈、加瀬亮、福田麻由子、豊川悦司 / 2008年公開 / 117分 / 配給:松竹

犬と私の10の約束

犬の寿命は、人間の約束を試す長さ

北海道・函館で暮らす14歳の少女あかりは、ある日やってきたゴールデン・レトリバーの子犬にソックスと名付ける。母から教わった「犬を飼うための10の約束」を胸に、あかりとソックスは一緒に大人への道を歩き始める。

世界中で読まれた短編詩「犬の十戒」をモチーフにしたこの映画は、犬と人間の10年間をひとつの物語として紡ぐ。母の死、父の転職、初恋、就職――人生の節目のたびにソックスはそばにいて、あかりを支える。しかし犬の10年は人間の10年とは違う。約束を守り続けることの難しさと大切さが、函館の美しい風景とともに静かに胸に迫ってくる。

きな子〜見習い警察犬の物語〜

監督:小林義則 / 出演:夏帆、寺脇康文、戸田菜穂、遠藤憲一 / 2010年公開 / 113分 / 配給:松竹

きな子〜見習い警察犬の物語〜

何度転んでも、また走り出す

香川県に実在した「ズッコケ見習い警察犬」きな子の物語。警察犬試験に何度挑戦しても不合格、訓練の障害物では顔面着地――。そんなきな子と、見習い訓練士の杏子が、互いに励まし合いながら夢に向かっていく。

この映画の魅力は、「できない」ことを否定しないところにある。きな子も杏子も、周囲の期待に応えられず挫折を繰り返す。でもそれでいい、と映画は静かに語りかけてくる。ちなみに映画公開後の2010年12月、現実のきな子は香川県警の審査に合格し、翌2011年1月から嘱託警察犬として正式に採用された。映画が先に描いた「あきらめない物語」を、現実が追いかけたのだ。

ひまわりと子犬の7日間

監督・脚本:平松恵美子 / 原案:山下由美『奇跡の母子犬』 / 出演:堺雅人、中谷美紀、でんでん、若林正恭 / 2013年公開 / 117分 / 配給:松竹

ひまわりと子犬の7日間

命の期限は7日間。その中で、心は開けるか

宮崎県の動物保護管理所を舞台に、殺処分という重いテーマに正面から向き合った作品。保健所に収容された母犬は、子犬を守るために近づく人間すべてに牙を剥く。職員の神崎彰司は、この母犬にかつて飼い主がいたはずだと確信し、心を開かせようと奮闘する。

山田洋次監督のもとで長年助監督を務めた平松恵美子の初監督作品。堺雅人が演じる彰司の柔らかな笑顔の裏にある葛藤、そして娘に自分の仕事をどう説明するかという親としての苦悩が、物語にリアルな重みを与えている。母犬がなぜ人間を憎むようになったのか、その過去が明かされるシーンは、多くの観客の涙腺を壊した。

犬に名前をつける日

監督・脚本:山田あかね / 出演:小林聡美、上川隆也 / 2015年公開 / 107分 / 配給:スールキートス

犬に名前をつける日

名前のない犬は、いないものとして扱われる

愛犬を病気で亡くしたテレビディレクターのかなみが、犬の命をテーマにした映画を撮り始める。動物保護センター、東日本大震災後の福島の避難区域、そして保護活動に人生を捧げる人々のもとへ。

4年間にわたって撮り溜めたドキュメンタリー映像に、小林聡美が演じるドラマパートを組み合わせた異色の構成。保護団体「ちばわん」や「犬猫みなしご救援隊」の活動を追う映像には、作り物では出せないリアルな力がある。名前を持たない犬たちが新しい家族と出会い、名前をつけてもらう瞬間。それは「存在を認められた」瞬間でもある。

犬部!

監督:篠原哲雄 / 原案:片野ゆか『北里大学獣医学部 犬部!』 / 脚本:山田あかね / 出演:林遣都、中川大志、大原櫻子、田中麗奈 / 2021年公開 / 114分 / 配給:KADOKAWA

犬部!

「犬バカ」と呼ばれた獣医学生たちの、青春と信念

青森県の北里大学に実在した動物保護サークル「犬部」を題材にした青春ドラマ。「犬のためなら死ねる」と公言する獣医学部生の颯太が、実験犬を救ったことをきっかけにサークルを立ち上げる。

この映画がユニークなのは、学生時代の熱い青春パートと、16年後に獣医師として現実と向き合う現代パートの二層構造で描かれていること。理想だけでは動物を救えない、制度の壁、社会の無関心――大人になった「犬部」メンバーたちがそれぞれの立場で葛藤する姿は、青春映画のその先を見せてくれる。

星守る犬

監督:瀧本智行 / 原作:村上たかし『星守る犬』(双葉社) / 脚本:橋本裕志 / 出演:西田敏行、玉山鉄二、川島海荷、余貴美子、中村獅童、三浦友和 / 2011年公開 / 128分 / 配給:東宝

星守る犬

手に入らないものを、それでも見つめ続ける

北海道の山中に放置されたワゴン車から、身元不明の中年男性と一匹の犬の遺体が発見される。男性の死後半年に対し、犬の死はわずか1ヶ月前。この時間差は何を意味するのか。市役所の福祉課に勤める青年・奥津は、偶然出会った少女とともに、男と犬がたどった旅路を遡っていく。

「泣ける漫画」として大きな反響を呼んだ村上たかしの原作を、西田敏行主演で映画化。リストラ、離婚、孤独死――現代社会が抱える問題を背景に、すべてを失った男とその傍らを離れなかった犬の旅が描かれる。タイトルの「星守る犬」とは、手に入らないものを求め続ける人を意味する言葉。おとうさんにとっての「星」は何だったのか。その答えが見えたとき、この物語はただの悲劇ではなくなる。玉山鉄二と川島海荷が追跡パートに軽やかさを添え、重くなりすぎないバランスが保たれている。

ウルルの森の物語

監督:長沼誠 / 出演:船越英一郎、深田恭子、濱口優、大滝秀治 / 2009年公開 / 119分 / 配給:東宝

ウルルの森の物語

北海道の森で出会った「犬のような子」は、絶滅した狼かもしれない

母の入院をきっかけに、北海道で獣医をしている父のもとにやってきた兄妹、昴としずく。しずくは森で出会った子犬にウルルと名付けて飼い始めるが、やがてウルルが絶滅したはずのエゾオオカミかもしれないと判明する。

『マリと子犬の物語』のスタッフが再結集した本作は、実話ベースの作品群とは趣を変えたファンタジー寄りの物語だ。北海道・美瑛の雄大な自然と久石譲のスコアが織りなす映像美は圧巻。ウルルを母親のもとへ返すために旅に出る兄妹の冒険は、「野のものは野に帰す」という獣医の信念と、手放すことで深まる愛情を描いている。大滝秀治が演じるアイヌの知恵を持つ老人の存在感がこの物語を引き締めている。

少年と犬

監督:瀬々敬久 / 原作:馳星周『少年と犬』(文春文庫) / 脚本:林民夫 / 出演:高橋文哉、西野七瀬、伊藤健太郎、柄本明、斎藤工 / 2025年公開 / 128分 / 配給:東宝

少年と犬

一匹の犬が、5年かけて日本を縦断した理由

第163回直木賞を受賞した馳星周の連作短編を映画化。東日本大震災で飼い主を亡くしたシェパードの多聞は、なぜかいつも西の方角を気にしている。仙台で出会った青年・和正、滋賀で暮らす女性・美羽――傷ついた人々のそばに寄り添いながら、多聞は日本を縦断する旅を続ける。

馳星周といえばノワール小説の旗手だが、本作では犬と人間の関わりを通じて、震災後の日本に生きる人々の痛みと再生を描いた。映画版では複数のエピソードを再構成し、和正と美羽の物語を軸に据えている。多聞が目指す場所が明かされるとき、この旅の意味がすべてつながる。高橋文哉と西野七瀬の瑞々しい演技と、多聞役のシェパード・さくらの名演が光る。

12本の映画を振り返ると、犬たちはそれぞれまったく違う物語を生きている。南極の氷原を駆けた犬、渋谷の駅で待ち続けた犬、保健所で命の期限を待つ犬、被災地を旅する犬。

けれど、どの映画にも共通しているのは、犬が「何かを教えてくれる存在」として描かれていることだ。忠誠心とか無償の愛とか、そういう言葉で片付けるのは簡単だけれど、もう少し正確に言えば、犬は人間に「自分がどんな人間でありたいか」を問いかけてくる存在なのだと思う。

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