邦画ボクシング映画おすすめ11選|リングに人生を懸けた男女の物語

おすすめ!【邦画】ボクシング映画
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ゴングが鳴る。誰かがリングに上がり、誰かが倒れる。そして誰かが、もう一度立ち上がる。

ボクシング映画には、ほかのスポーツものにはない独特の匂いがあります。勝敗がはっきりしていて、逃げ場のない1対1で、しかも殴り合いという原始的な行為。だからこそ、そこに人生のすべてが凝縮される。「なぜ戦うのか」という問いが、そのまま「なぜ生きるのか」になってしまう。

邦画のボクシング映画は、派手なサクセスストーリーばかりではありません。負け犬、咬ませ犬、ロートル、聴覚障害、中年の再起、青春の挫折──日本映画はむしろ、勝ち切れない人たちの物語を丁寧に掬い上げてきました。今回はそんな「リングに人生を預けた人々」の物語を11本、ご紹介します。有名作からちょっと見逃されがちな作品まで、どれも胸にずっしり残るものばかりです。

目次

あしたのジョー

監督:曽利文彦/原作:高森朝雄・ちばてつや/出演:山下智久、伊勢谷友介、香川照之、香里奈/公開:2011年

あしたのジョー

伝説の拳闘マンガを、肉体で描き直した実写版

昭和40年代、ドヤ街に流れ着いたケンカ屋・矢吹丈が、元ボクサーの丹下段平に才能を見いだされ、少年院で宿命のライバル・力石徹と出会う──。不朽の名作マンガを、『ピンポン』の曽利文彦監督が実写化した一作です。

何と言っても山下智久と伊勢谷友介の、役作りのための肉体改造が凄まじい。特に伊勢谷の力石は、原作のあの痛々しい減量を本気で再現していて、画面から骨と筋が浮き出てくるような緊張感があります。段平を演じる香川照之の狂気じみた熱量もたまりません。原作ファンとしては賛否ある作品ですが、ジョーと力石の運命の対決に絞り込んだ構成は、映画としての強度を高めています。マンガの熱を実写でここまで立ち上げようとした気概、ぜひ一度味わってみてほしいです。

百円の恋

監督:武正晴/脚本:足立紳/出演:安藤サクラ、新井浩文/公開:2014年

百円の恋

百円の女が、自分を取り戻すまでの113分

32歳の一子は、実家に引きこもり自堕落な日々を送る女。妹とのケンカをきっかけに家を飛び出し、100円ショップの深夜労働を始めたところで、帰り道のジムで黙々と練習する中年ボクサーに出会います。そして、ある出来事をきっかけに、一子は自らボクシンググローブをはめる──。

安藤サクラの、これはもう役者人生を懸けた演技としか言いようがありません。だらしなく贅肉のついた冒頭の体から、試合に臨む引き締まった後半の体への変貌。それ以上に、目の光が別人のように変わっていく過程に、気づけば息を飲んでいます。第一回松田優作賞グランプリの足立紳脚本も見事で、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞・最優秀脚本賞、米国アカデミー賞外国語映画賞の日本代表にも選出されました。「勝ちたかった」という一言が、これほど重く響く映画はそうそうありません。

BLUE/ブルー

監督・脚本:吉田恵輔/出演:松山ケンイチ、東出昌大、木村文乃、柄本時生/公開:2021年

BLUE/ブルー

誰よりもボクシングを愛した、誰よりも弱いボクサーへ捧ぐ

ボクシングを愛しているのに、どれだけ努力しても試合に勝てない瓜田。その後輩で、才能に恵まれ日本チャンピオン目前の小川。そして、瓜田の初恋の人で、いまは小川の婚約者である千佳。この三人の関係を軸に、「負け続ける者」への静かな賛歌が紡がれていきます。

中学時代から30年以上ボクシングを続けてきた吉田恵輔監督が、8年の構想を経て書き上げたオリジナル脚本。その経験の厚みが画面に滲み出ていて、ボクシングジムの空気感、試合の緊張、ボクサーたちの身体の動きに、どこまでもリアリティがあります。主演の松山ケンイチは、2年かけて役作りをし、「負けボディ」と称された体と、不格好だけど美しいシャドーボクシングを会得しました。タイトルの「ブルー」はリングの挑戦者側のコーナーの色。勝てなくても、美しい戦いはある。そのことを、これほど真摯に伝えてくれる映画はありません。

どついたるねん

監督・脚本:阪本順治/出演:赤井英和、相楽晴子、原田芳雄、麿赤兒/公開:1989年

どついたるねん

浪速のロッキーが、自らの人生を拳に込めた衝撃作

試合中のダメージで再起不能となった元ボクサー・安達英志は、自らジムを開設するも横暴な指導で練習生が次々と去っていく。古巣のジムに戻り、会長とその娘、そしてかつての元チャンピオンに支えられながら、現役復帰を目指すのだが──。

「浪速のロッキー」の異名で絶大な人気を誇った元プロボクサー・赤井英和の自伝をもとに、当時新人の阪本順治が監督デビューを飾った作品です。赤井自身が主演を務め、実際に経験した脳内出血と開頭手術、そこからの復帰という壮絶な人生を、ほとんど地のままの存在感で演じ切っています。ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報ベスト・テン日本映画部門第2位など、その年の映画賞を総なめにしました。1980年代末の大阪のドヤ街の空気、赤井の剥き出しの肉体、原田芳雄の色気。低予算ゆえに全編に漂う生々しさが、かえって奇跡的な輝きを放っています。

あゝ、荒野

監督:岸善幸/原作:寺山修司/出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木村多江、ユースケ・サンタマリア/公開:2017年(前後篇)

あゝ、荒野

孤独な二人が、殴り合いでしか繋がれなかった青春譚

寺山修司の唯一の長編小説を、舞台を近未来の新宿に移して前後篇合わせて5時間超で映画化した意欲作。少年院あがりの新次と、吃音と対人恐怖症を抱えるバリカンこと健二が、ボクシングジムで出会い、互いを映し鏡のようにしてプロボクサーを目指していく物語です。

菅田将暉とヤン・イクチュンが、それぞれ半年におよぶトレーニングで本物のボクサーの身体を作り上げていて、後楽園ホールでのプロテストシーンは実際のプロテストの場で撮影されたそうです。社会派的な要素もたっぷりと織り込まれていますが、映画の核にあるのは、二人の男が拳でしか伝えられない絆を探していく姿。特に最終盤の死闘には、暴力を超えた祈りのようなものが宿っています。R15+ということもあり、光と影の描写も濃厚。長尺ですが、一気に最後まで連れていかれる求心力があります。

アンダードッグ

監督:武正晴/原作・脚本:足立紳/出演:森山未來、北村匠海、勝地涼/公開:2020年(前後編)

アンダードッグ

三匹の負け犬が、リングで魂をぶつけ合う前後編の大作

かつてチャンピオンベルトに手をかけながら、いまは「かませ犬」としてリングに立ち続ける末永晃。児童養護施設出身で、過去にある事件を抱えた若きボクサー・大村龍太。大物俳優の二世タレントで、テレビ企画でボクシングに挑む芸人・宮木瞬。三者三様の「諦められない男たち」が、再起のリングで交錯する4時間半の群像劇です。

『百円の恋』の武正晴監督と足立紳脚本の再タッグ作。主演の森山未來は1年以上前からトレーニングを始め、34歳でJBCのプロテストに合格するという徹底ぶりで、試合シーンには相手のパンチが実際にボディに当たっているそうです。北村匠海と勝地涼も10kg減量で挑んでいます。勝利の物語ではなく、一矢報いるための物語。泥臭く、情けなく、それでも誇りを失わない男たちの姿が、ズシンと胸に残ります。第75回毎日映画コンクールで最多4冠を獲得した実力派の一本です。

ボックス!

監督:李闘士男/原作:百田尚樹/出演:市原隼人、高良健吾、谷村美月、香椎由宇/公開:2010年

ボックス!

高校ボクシング部を舞台にした、まっすぐな青春グローブ物語

大阪の高校のボクシング部に所属する、天才肌で怠け者のカブと、幼なじみで気弱な優等生のユウキ。いじめられっ子だったユウキは、強いカブに憧れてボクシングを始め、地道に鍛錬を重ねていく。やがて二人は同じ舞台で拳を交える運命のライバルとなっていきます。

ここまで紹介してきた作品がどちらかというと大人のドラマだったのに対し、こちらは真っすぐな高校生青春映画。市原隼人はクランクインの数か月前から本格的なトレーニングを積み、坊主頭で挑む気合いの入りよう。高良健吾もいじめられっ子から試合巧者へと変わっていく様を丁寧に演じています。監督の李闘士男自身も少年時代にボクシングジムに通っていた経験があり、ファイトシーンの熱量が違います。重い作品が続いた後に観ると、むしろこの真っ直ぐさが沁みる。友情と努力と挫折と、その先の夏。青春ボクシング邦画として屈指の一本です。

キッズ・リターン

監督・脚本:北野武/出演:金子賢、安藤政信、森本レオ、石橋凌、モロ師岡/公開:1996年

キッズ・リターン

バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ──伝説のラストへ

授業をサボり、カツアゲに明け暮れる落ちこぼれの高校生マサルとシンジ。ある日カツアゲ相手が呼んだボクサーに打ちのめされたマサルは、仕返しのためにジムに入り、舎弟のシンジを誘う。ところが、ボクサーの才能があったのはシンジの方で、マサルはヤクザの道へと足を踏み入れることに──。

北野武監督の長編第6作で、カンヌ国際映画祭監督週間正式出品作品。ボクシングとヤクザ、別々の道を歩んだ二人の若者の成功と挫折を、淡々と、しかし鋭く描きます。試合の迫力や熱さを前面に出す作品ではありません。むしろ、試合の裏側で蠢く闇、堕落させるメフィストのような中年ボクサー(モロ師岡が絶品)、ジムの会長の表情といった周辺の描写に、ボクシング界のリアルが滲み出ています。そして伝説のラストシーン──高校のグラウンドで自転車に乗る二人の、あの有名なやりとり。もう始まる前から何もかもが眩しかった頃の、青春の一瞬を切り取った傑作です。

ボクサー

監督:寺山修司/出演:菅原文太、清水健太郎、具志堅用高、ガッツ石松、ファイティング原田/公開:1977年

ボクサー

詩人が撮った、ただ一本の商業映画にして邦画ボクシングの原点

元東洋チャンピオンだが、いまは落ちぶれボクシングへの執念だけを抱えて生きる隼。そこへ、沖縄から上京し、スクラップ工場の事故で唯一の肉親である弟を隼に奪われた謙次が現れ、「ボクサーになりたい」と師事を願い出る──。

詩人であり劇作家であり、アングラ演劇の巨匠だった寺山修司が、東映で撮った唯一の商業映画。菅原文太自らが企画を持ち込み、「ロッキー」に影響を受けた「日本版ロッキー」として作られたという背景もあります。当時の東京のドヤ街の風景、リングへと向かう通路の重厚な白黒映像、そして具志堅用高、ファイティング原田、ガッツ石松ら歴代世界チャンピオンの特別出演──ここでしか観られないものが詰まっています。清水健太郎のやられっぷり、菅原文太の哀感漂う師匠役、寺山らしい食堂シーンの奇妙な風景。粗削りだけれど、邦画ボクシング映画の系譜に欠かせない原石のような作品です。

ケイコ 目を澄ませて

監督:三宅唱/原案:小笠原恵子「負けないで!」/出演:岸井ゆきの、三浦友和/公開:2022年

ケイコ 目を澄ませて

ゴングが聞こえない彼女の、静かで熱い戦い

生まれつき両耳が聞こえない小河ケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ねる現役プロボクサー。ゴングも、セコンドの声も、レフリーの指示も聞こえない中、「目を澄ませて」戦い続ける彼女が、ジム閉鎖という転機を迎えるところから物語が動き出します。

聴覚障害を抱えながらプロテストに合格し、実際にリングで戦った小笠原恵子さんの自伝を原案に、三宅唱監督が16ミリフィルムで撮り上げた一作。派手な盛り上がりはなく、淡々と積み重ねられるトレーニングと日常の中に、凄まじい密度が宿っています。岸井ゆきのは3か月のボクシング特訓と手話の習得を並行して行い、台詞にほとんど頼らず表情と身体だけで感情を伝えきりました。ジムの会長役の三浦友和との鏡越しのシャドーボクシングのシーンは、邦画史上屈指の名場面と言っていいでしょう。キネマ旬報ベスト・テン日本映画作品賞をはじめ、映画賞を席巻した一作です。

春に散る

監督:瀬々敬久/原作:沢木耕太郎/出演:佐藤浩市、横浜流星、橋本環奈、片岡鶴太郎、哀川翔、窪田正孝、山口智子/公開:2023年

春に散る

老ボクサーと若者が、最後の季節に燃やすもの

不公平な判定負けをきっかけに渡米し、40年ぶりに帰国した元ボクサー・広岡仁一。同じく不本意な判定負けで心が折れていた若きボクサー・黒木翔吾。飲み屋で出会い、路上で拳を交わした二人は、やがて師弟として世界王者・中西との戦いへ向かっていきます。

『深夜特急』の作家・沢木耕太郎の長編小説を、瀬々敬久監督が映画化したヒューマンドラマ。横浜流星は役作りのためにボクシングを始め、実際にJBCのC級プロテストに合格するという熱の入れよう。窪田正孝演じる世界王者の独特な構えと動きも、観る者の目を釘付けにします。物語の中心にあるのは、勝ち負けよりも「いま、この瞬間を生き切る」という覚悟。老いた身体で過去と向き合う佐藤浩市と、夢を諦めかけた横浜流星の対話が、世代を超えて響き合います。桜のようにひと時の美しさに懸ける、その生き様をぜひスクリーンで味わってみてください。

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