昭和ノスタルジーに浸れるおすすめ映画|下町・田舎・青春の名作11選

昭和ノスタルジーに浸れるおすすめ映画
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電球の下で囲む卓袱台、まだ舗装されていない道、ラジオから流れる流行歌。実際にその時代を生きた人にとっては記憶の風景であり、知らない世代にとっては、なぜか胸の奥がうずくような「会ったことのない懐かしさ」。昭和という時代には、そういう不思議な引力がある。

「ALWAYS 三丁目の夕日」が多くの人の涙をさらったのも、ただ昔を懐かしんだからではないだろう。貧しくても、不便でも、人と人との距離が近かった時代の温度。その温度を、もう一度この手で確かめたくなる。そんな気持ちに応えてくれる映画を、実写を中心に、アニメも交えて選んでみました。

目次

ALWAYS 三丁目の夕日

監督・脚本・VFX:山崎貴/脚本:古沢良太/原作:西岸良平(小学館)/2005年公開/配給:東宝。舞台は昭和33年、建設途中の東京タワーを望む下町・夕日町三丁目。

ALWAYS 三丁目の夕日

まだ何もないからこそ、明日が眩しかった

集団就職で青森から上京した六子が降り立つのは、自動車修理工場の鈴木オート。一方、その向かいの駄菓子屋では、売れない小説家の茶川が、ひょんなことから身寄りのない少年を預かることになる。豊かではないけれど、誰もが明日を信じて生きていた町の、ひと夏からの日々が描かれる。

この映画の強さは、ノスタルジーを「セット」だけで終わらせなかったところにある。冷蔵庫が来た日のはしゃぎよう、テレビを近所中で囲む高揚感。物がない時代だからこそ、ひとつの幸せが何倍にもふくらむ。その感情の機微を、堤真一や吉岡秀隆たちが体温のある芝居で立ち上げる。日本アカデミー賞を席巻したのも納得の、現代の昭和映画の決定版である。

佐賀のがばいばあちゃん

監督:倉内均/原作:島田洋七(徳間文庫)/主演:吉行和子/2006年公開/配給:ティ・ジョイ(配給協力:東映)。舞台は昭和30年代、広島から預けられた佐賀での祖母との暮らし。

佐賀のがばいばあちゃん

貧乏のどん底でも、笑い飛ばせばこっちのもの

母ひとりでは育てきれず、少年・明広は佐賀の祖母のもとへ預けられる。待っていたのは、川にかけた棒で流れてくる野菜を拾い、隙間だらけの家で暮らす、とびきりの貧乏生活。けれど祖母は、それを少しも惨めだと思わせない。独特の人生哲学で、貧しさすら明るい知恵に変えてしまう、まさに「がばい(すごい)」ばあちゃんなのだ。

漫才ブームの立役者・島田洋七の自伝的ベストセラーの映画化。「おなかすいた」「気のせい気のせい」といった名台詞に代表される、からっとした笑いが全編を貫く。吉行和子が演じる祖母の、強くしなやかな佇まいが素晴らしい。貧しさを嘆くのではなく、生き抜く力に変えていく。昭和の地方の暮らしには、そういうたくましさと温かさが確かにあった。

「佐賀のがばいばあちゃん」の関連テーマ

フラガール

監督:李相日/脚本:李相日・羽原大介/2006年公開/配給:シネカノン。昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町を舞台にした実話ベースの物語。

フラガール

炭鉱町の娘たちが、常夏の夢を踊った

石炭から石油へ。エネルギー革命の波に押され、閉山の危機に瀕した炭鉱町が、起死回生をかけて選んだのが「常磐ハワイアンセンター」の建設だった。目玉のフラダンスショーを担うのは、踊りなど習ったこともない地元の娘たち。東京から来た訳ありの講師・平山まどかとともに、彼女たちは舞台を目指していく。

蒼井優の踊りが心を打つのはもちろんだが、この映画の核は「変わらざるを得ない町の痛み」にある。炭鉱を誇りに生きてきた親世代と、新しい時代へ踏み出そうとする娘世代。その断絶と和解が、フラの腰の動きひとつに込められている。実話の持つ重みと、ジェイク・シマブクロのウクレレの軽やかさ。その対比が、昭和の地方の必死さを温かく照らす。

トキワ荘の青春

監督:市川準/主演:本木雅弘/1996年公開(2021年デジタルリマスター版公開)。昭和30年代、東京・豊島区の実在のアパート「トキワ荘」を舞台にした漫画家たちの青春群像。

トキワ荘の青春

神様が去った部屋に、卵たちが集まってきた

「漫画の神様」手塚治虫が暮らしたアパート・トキワ荘。彼が去った後、その部屋を慕うように、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫といった若き漫画家の卵たちが次々と入居してくる。兄貴分の寺田ヒロオを中心に「新漫画党」を結成した彼らは、貧しい暮らしの中で互いを励まし、漫画の未来を熱く語り合う。

後の巨匠たちの伝説的な日々を、あえて派手な盛り上がりを排し、静かなトーンで描いたのが本作の品格だ。主役は華々しく売れていく面々ではなく、やがて筆を折ることになる寺田ヒロオ。その視線を通すからこそ、青春の輝きと、過ぎ去っていくものの寂しさが胸に残る。本木雅弘の抑制された名演、無名時代の阿部サダヲら、キャストの妙も味わい深い。漫画を愛する人には、ことさら沁みる一作である。

男はつらいよ

監督・原作:山田洋次/主演:渥美清/1969年公開・シリーズ第1作/配給:松竹。舞台は東京・葛飾柴又。

男はつらいよ

帰る場所があるから、また旅に出られる

中学生のころに家を飛び出した車寅次郎が、20年ぶりにふらりと故郷の柴又へ帰ってくる。美しく育った妹さくらとの再会も束の間、見合いの席で大失態を演じ、おいちゃんたちと大喧嘩。またも旅に出るが、その先で出会った女性に惚れ込み……という、後の国民的シリーズの原型がここにある。

半世紀続くことになる物語の第1作は、すでに完成されている。帝釈天の参道、団子屋の店先、人情と笑いとほろ苦い失恋。柴又という町そのものが、昭和の下町の理想郷として息づいている。寅さんの自由気ままさに呆れながらも、誰もが心のどこかで「ああいう場所に帰りたい」と思ってしまう。ノスタルジーとは結局、帰る場所への憧れなのだと教えてくれる。

小さいおうち

監督・脚本:山田洋次/原作:中島京子(文春文庫)/2014年公開/配給:松竹。舞台は昭和11年からの東京郊外、赤い三角屋根のモダンな一軒家。

小さいおうち

赤い三角屋根の下に、封じ込めた恋があった

田舎から出てきた娘・タキは、東京郊外に建つ赤い三角屋根のモダンな家で女中として働き始める。若く美しい奥様・時子と、その家族との穏やかな日々。だが、夫の部下である青年が出入りするようになり、時子の心が静かに揺れていく。そのすべてを、タキは黙って見つめ続けていた。それから60年後、彼女の遺した手記が、思いもよらぬ真実を解き放つ。

ひとつの家庭の食卓と、密やかな恋を軸に、昭和初期の暮らしを丁寧に描いたのが本作の魅力だ。モダンなインテリア、女中という仕事、当時の中流家庭の作法。その愛おしい日常の細部が、画面の隅々まで息づいている。若き日のタキを演じた黒木華がベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた、山田洋次の繊細な一面が光る一作である。

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

監督:松岡錠司/原作:リリー・フランキー/脚本:松尾スズキ/主演:オダギリジョー/2007年公開/配給:松竹。舞台は1960年代の九州・筑豊から、上京後の東京まで。

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

女手ひとつで、その背中は息子を押し出した

奔放なオトンに手を焼いたオカンは、幼いボクを連れて筑豊の実家へ帰り、小料理屋を手伝いながら女手ひとつで息子を育て上げる。やがて美大に進むため上京したボクは、オカンへの後ろめたさを抱えながらも、東京で自堕落な日々を過ごしてしまう。そして仕事がようやく軌道に乗り始めた頃、オカンの病が発覚する。

リリー・フランキーのベストセラー自伝小説の映画化。昭和の地方の貧しさと、そこに確かにあった親子の濃密な情が、過剰になりすぎない筆致で描かれる。樹木希林が演じるオカンの存在感は圧巻で、その若き日を実の娘・内田也哉子が演じるという配役も味わい深い。誰もが自分の母を重ねてしまう、昭和から平成へと続く家族の記憶の物語である。

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」の関連テーマ

鉄道員(ぽっぽや)

監督:降旗康男/原作:浅田次郎/主演:高倉健/1999年公開。舞台は廃線間近の北海道のローカル線・幌舞駅。

鉄道員(ぽっぽや)

駅に立ち続けた男の、不器用すぎる一生

北の果ての終着駅・幌舞。駅長の佐藤乙松は、鉄道員一筋に生きてきた男だ。幼いひとり娘を亡くした日も、妻を看取れなかった日も、彼は職務を優先し、ただ駅に立ち続けた。定年を間近に控え、路線の廃止も決まったその冬、乙松の前に、不思議なひとりの少女が現れる。

物語の現在は昭和の後の時代だが、回想を通して、昭和という時代が育てた「仕事に殉じる男」の生き方が、まるごと一本の映画に描かれていく。高倉健の寡黙な佇まいと、木村大作が捉えた雪原の北海道。その厳しくも美しい風景の中で、不器用な父の人生に小さな奇跡が訪れる。古き良き昭和の価値観を、懐かしさと切なさの両方で描いた一作である。

となりのトトロ

監督・原作・脚本:宮崎駿/1988年公開/制作:スタジオジブリ。宮崎監督自身は昭和28年ごろを想定したと語る、テレビのない時代の田舎が舞台。

となりのトトロ

あの森には、まだ何かがいる気がする

母の療養のため、父と姉妹のサツキとメイが引っ越してきたのは、緑あふれる田舎の古い家。すすけた家屋、井戸、田んぼのあぜ道。その豊かな自然の中で、メイは森の主のような不思議な生きもの・トトロと出会う。日本人なら誰もが知る、もはや説明のいらない名作だ。

改めて観返すと、これがどれほど精密な「昭和の田舎」の記録かに驚く。手押しポンプの水のきらめき、夕暮れの里山の匂い、縁側を渡る風。トトロという空想の存在を置いたことで、かえって背景の現実がいっそう懐かしく立ち上がる。誰もが直感的に「懐かしい」と感じてしまう神話的な田園風景。昭和ノスタルジーの原風景が、ここにある。

おもひでぽろぽろ

監督・脚本:高畑勲/原作:岡本螢・刀根夕子/1991年公開/制作:スタジオジブリ。昭和41年の小学5年生の回想と、1982年の山形への旅を行き来する物語。

おもひでぽろぽろ

27歳の私を、10歳の私が見つめている

東京で働く27歳のタエ子は、休暇に山形へ向かう。その旅の道すがら、彼女の胸によみがえるのは、小学5年生だったあの頃の自分。分数の割り算につまずいた授業、初めての淡い恋、家族とのささやかな衝突。過去と現在がやわらかく溶け合いながら、タエ子は自分の人生を見つめ直していく。

高畑勲ならではの、過剰なドラマを排した日常の描写が胸に染みる。昭和41年の食卓や教室の空気、当時の子どもにしか分からない感覚の数々が、驚くほど精緻に再現されている。それは単なる懐古ではなく、「あの頃の自分」と向き合うための鏡だ。誰の中にもいる小さな自分が、ふいに顔を出す。そんな静かな余韻を残す一作である。

マイマイ新子と千年の魔法

監督・脚本:片渕須直/原作:高樹のぶ子(ちくま文庫)/2009年公開/配給:松竹/制作:マッドハウス。舞台は昭和30年代、山口県防府市。

マイマイ新子と千年の魔法

麦畑の向こうに、千年前の少女が見えた

おでこにマイマイ(つむじ)のある小学3年生の新子は、大自然に囲まれた山口・防府の田舎で暮らす、空想好きの女の子。祖父から聞いた千年前のこの町の姿を思い描いては胸を躍らせている。ある日、東京から転校してきた内気な少女・貴伊子と出会い、二人は次第に心を通わせながら、千年の時を超えた空想の世界へと遊び心を広げていく。

「この世界の片隅に」の片渕須直監督が、その前に手がけた一作だ。麦畑とどこまでも続く青い空、用水路を流れる水、子どもたちの秘密基地。昭和30年代の田舎の手触りが、息をのむほど緻密に描き込まれている。たわいない日常の中に、ふと痛みや切なさが差し込む構成も巧みで、子どもの世界の豊かさとほろ苦さを、まっすぐに見つめている。公開時は小規模な上映だったが、その出来を惜しむ声に支えられて全国へ広がっていった、静かな愛され方をした名作でもある。

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