雄大な自然、北海道が舞台となるオススメ小説

2022年4月11日

北海道が舞台の小説

北海道が舞台となる小説12作品集めました。雄大で厳しい大自然のなか繰り広げられる物語たち。北海道ならでは雰囲気を楽しめる小説をご堪能ください。

「羊をめぐる冒険」村上春樹

羊をめぐる冒険

<あらすじ>
「羊のことよ」と彼女は言った。「たくさんの羊と一頭の羊」「羊?」「そして冒険が始まるの」 故郷の街から姿を消した〈鼠〉から〈僕〉宛に、ある日突然手紙が届く。同封されていた一枚の写真が、冒険の始まりだった。『1973年のピンボール』から5年後、20代の最後に〈僕〉と〈鼠〉がたどり着いた場所は――。野間文芸新人賞受賞の「初期三部作」第三作。

無力で前向きな喪失感の漂う冒険小説

青春三部作の最終章にして、喪失を描いた初期の春樹文学において象徴的な一作。
広大な北海道の土地の果てしなさと牧歌的な風景を描いた筆致が見事。主人公「ぼく」が苛まれる無力感とそれに抗って奮闘する様が、それらの筆致と対比的な構造となっている。また、札幌の都会的な場面から原野の自然的な場面へ移行する展開がある。空間の一気に開ける心地よさがあって、北海道という土地をふんだんに活かしている。

作中で、主人公は北海道行きを決めるにあたって、仕事を止めて自宅を引き払っている。あらゆるものを捨てて訪れた北海道で始まる「羊をめぐる冒険」には、これ以上ないくらいワクワクさせられる。北海道という土地の持つ不思議な魅力も手伝っているのだろう。
本作は紛れもない冒険小説だ。北海道を味わう読書体験を望む読者には、ぜひ本作をおすすめしたい。(20代男性)

「黄金旅程」馳星周

黄金旅程
《あらすじ》を見る

浦河の馬産関係者に対する応援歌ともいえる物語

北海道の馬産地・浦河を舞台にしたサラブレッドと彼らを取り巻く人間達の物語。
現在、競馬界では大きなレースを勝つ馬は一部の大牧場が生産した馬に偏ってしまっているのですが、そういう中でもサラブレッドという奇跡の存在に夢を託し、懸命に生きる人達の姿が描かれていて、読んでいるこちらも勇気づけられます。
作者の馳星周が浦河に住んでいることもあり、浦河の風景や空気を生き生きと感じられるところも、この小説の良いところだと思います。湿った空気でしっとり濡れた青草の匂いを胸いっぱいに吸い込みに、浦河に行ってみたいなという気になります。(50代女性)

「塩狩峠」三浦綾子

塩狩峠

<あらすじ>
結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた…。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。

ひたむきに生きた鉄道職員の生涯

明治時代の末期に旭川にある塩狩峠で、本当におこった鉄道事故を元にして書かれた、三浦綾子の代表作の一つ。映画化にもなって、こちらも知られている。命を懸けて乗客を救う主人公の鉄道職員のひたむきさと、彼が持っている信仰の深さと、献身に心が打たれる、キリスト教徒としても有名だった三浦綾子ならではの小説。(30代女性)

雪国でのとんでもない列車事故と、その際の鉄道員の心境や行動が描かれた物語

札幌に向かう列車の鉄道員が主人公の小説です。塩狩峠でその鉄道員の列車が暴走してしまい、乗車しているお客さんの命が危険にさらされます。そのときにこの主人公である鉄道員がどのような行動をとるかが美しく描写されていきます。読み終わったときはとても感動し、また自分のためではなく人のためにとった主人公の行動に尊敬や畏敬の念を覚えたことを今でも覚えています。(30代男性)

「リラ冷えの街」渡辺淳一

リラ冷えの街

《あらすじ》
人工授精という運命的で冷酷なめぐり合わせを経て、十年近い歳月の後に結ばれた有津と佐衣子。北国の街に現代の愛の虚しさを描く。

綺麗な大人の不倫物語

昭和の雰囲気を忠実に描かれていましたし、読みながら背景が浮かんでくるような感覚があり作品の世界に没頭できました。また、内容は不倫という物語ではありましたが、ドロドロとした不倫ではなくその不倫ですら綺麗に感じるような物語なので、この北海道が舞台という設定がより一層雰囲気として表れていて、読みながら一人の世界に入れ非常に良かったです。(30代男性)

「探偵はバーにいる」東直己

<あらすじ>
札幌の歓楽街ススキノで便利屋をなりわいにする〈俺〉は、いつものようにバーの扉をあけた。そこにいたのは大学の後輩。同棲している彼女が戻ってこないという。どうせ大したことあるまいと引き受けた相談事は、いつのまにか怪しげな殺人事件に発展して……。面白さがクセになる、新感覚のハードボイルド登場!

独特な大人のミステリー物語

バブルの時期の札幌の雰囲気を抜群に感じる事ができましたし、この独特な大人なススキノの空気感は、他ではあまり感じられないような感覚があったので、作品の世界に入り込むようにして読めました。また、事件を解決していく様子にもしっかりと人間ドラマがあり感情移入できましたし、最後までワクワクして読めたので非常に面白かったです。(30代男性)

「飢餓海峡」水上勉

飢餓海峡

<あらすじ>
青函連絡船転覆、そこには乗客以外の身元不明遺体が…。
樽見京一郎は京都の僻村に生まれた。父と早く死に別れて母と二人、貧困のどん底であえぎながら必死で這い上がってきた男だ。
その彼が、食品会社の社長となり、教育委員まで務める社会的名士に成り上がるためには、いくつかの残虐な殺人を犯さねばならなかった。そして、巧なり名を遂げたとき、殺人犯犬飼多吉の時代に馴染んだ酌婦、杉戸八重との運命的な出会いが待っていた……。
青函連絡船洞爺丸沈没事故に想を得た、社会派ミステリーの傑作。

戦後の北海道がこの小説で発生する事件の舞台になっている。まだ青函トンネルができる前の北海道の青函連絡船の事故が、小説の重要なキーポイントとなる。一人の男がこの事故を利用して、過去を捨て新たな人生を得ようとする。しかし、過去は追ってくる。
男を含めた登場人物たちの、戦後を生き抜こうとした必死さや執念がこの小説から感じ取れる。男が罪を犯してまで、手に入れたものとは何だったんだろう。登場人物それぞれに、生き方のもどかしさ、悲しさを思う作品。(20代男性)

「私の男」桜庭一樹

私の男

<あらすじ>
落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。

それは北国の小さな町で起こったタブー

ヒロイン花は奥尻島の大津波に流され家族全員を失い一人生き残る。
津波がひき避難所に向かう大人たちに連れられ、1人水の入ったペットボトルを大事に抱えていると目の前に1人の男が現れる。
その男、淳吾は花の遠縁の親戚で1人で暮らしていた。
淳吾に引き取られた花は淳吾と奇妙な二人暮らしを始める。
そして2人は許されない数々のタブーを犯していくのであった。(30代女性)

「私の男」の関連テーマ

「生存者ゼロ」安生正

生存者ゼロ

<あらすじ>
北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が無残な死体となって発見された。救助に向かった陸上自衛官三等陸佐の廻田と、感染症学者の富樫博士らは、政府から被害拡大を阻止するよう命じられた。北海道本島でも同様の事件が起こり、彼らはある法則を見出すが…。未曾有の危機に立ち向かう!壮大なスケールで「未知の恐怖」との闘いを描くパニック・スリラー。

この事件の原因とは?謎深まるミステリー

根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油採掘基地との連絡が途絶えてしまった。
連絡が途絶えた理由を探る為、陸上自衛隊が投入されたが、そこで彼らが目にした光景は、変わり果てた無惨な職員全員の死体であった。
これは一体何なのだろうか?細菌テロではないのか?
謎は深まるばかりである。
細菌学者らが原因究明にあたることとなったのだが…。(40代女性)

「氷点」三浦綾子

氷点

<あらすじ>
辻口病院長夫人・夏枝が青年医師・村井と逢い引きしている間に、3歳の娘ルリ子は殺害された。「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えと妻への復讐心から、辻口は極秘に犯人の娘・陽子を養子に迎える。何も知らない夏枝と長男・徹に愛され、すくすくと育つ陽子。やがて、辻口の行いに気づくことになった夏枝は、激しい憎しみと苦しさから、陽子の喉に手をかけた―。

復讐の結末は誰も幸せにはならない。

冬の北海道の寒さや自然に関する描写も多く、空気を感じながら読み進められました。
物語の内容は、復讐や嫌悪、疑念、悩みなどネガティブな感情が多いです。冬の寒さの表現と相まって、それらの感情がより際立っていたように思います。
雪虫が舞う北海道、氷点まで冷え切るようなミステリーは、その寒さを際立たせる温もりある終結を迎えるのでしょうか。(30代女性)

「プリンシパル 恋する私はヒロインですか?」山本瑤

プリンシパル 恋する私はヒロインですか?

<あらすじ>
母親の再婚、学校になじめなかったことが重なって、女子高生・住友糸真は実父・泰弘の住む札幌に引っ越すことになった。転校して出会ったのは、校内イチのモテ男子・弦と和央。二人と仲良くなったら、女子にハブにされてしまうこと必至…!糸真が札幌で見つけた友情と初恋の行方は?黒島結菜と小瀧望のW主演で映画化された大人気まんがの世界を小説で!

イケメンとのラブストーリー

北海道に引っ越した主人公が、学校のイケメン達と関わっていくラブストーリーで映画にもなっていて、とてもキュンキュンする物語なので、とても好きです。
校内一のイケメンと仲良くなることでほかの女子から恨まれてしまうというよくあるような内容ではありますが、舞台が地元の北海道ということで興味がわき見てみました。なかなか北海道舞台の作品がない気がするので、嬉しくなりました。(10代女性)

「優しい時間」倉本聰

優しい時間

《あらすじ》
父と子の対立と和解を描いて今日、富良野の森で。倉本聰久びさの長編シナリオ。

人々の間の優しい時間の流れ

この小説で北海道の富良野のに流れるそこに暮らす人々を通した優しい時間が心地の良く感じられる物語で、北海道富良野の自然の包み込むような懐の大きさと深さ、優しさが心に傷を持った人々、人々の関係にができてしまっった溝を癒して行きます。主人公が営む森の中の喫茶店「森の時計」その息子で芸術の才能を受け継いだ若者が陶芸の手解きを受ける窯場「皆空窯」の2つの舞台で展開される物語にしっとりと心の染み渡りとても印象に残る大好きな小説です。(50代女性)

「最後の卒業生」本田有明

最後の卒業生

《あらすじ》
中学校閉校を目前にし、最後の卒業生となった北海道・夕張の中学三年生たち。実在の学校をモデルに、悩み考え、たくましく生きていこうとする若い力を描いたさわやかな物語。

瑞々しく切ない皆の青春

財政難に陥った北海道夕張市に生きる中学3年生の、それぞれの思いや青春が詰まっていて、自分とはまた別の人生を覗いているような感覚でした。まっさらなキャンパスに未来を思い馳せ、ひたむきに生きる人物たちに、元気や勇気をもらえました。中学生ならではの清らかさと故郷がかかえる事情のコントラストが印象的で、考えさせられます。(10代女性)