歴代【直木賞】受賞作からのおすすめ12選

2022年6月26日

おすすめ!直木賞受賞作

1935年から芥川賞とともに始まった直木賞。もともとは芥川賞は純文学の作品。直木賞は大衆小説の作品が選考対象になっていましたが、現在では純文学と大衆小説の垣根は曖昧になっている感じはしますけれど、直木賞のほうがエンターテイメント性のある作品が多めの感じはしますね。
そんな直木賞受賞作品からおすすめの12作品をご紹介します。

「何者」朝井リョウ

何者
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必死になっているものは「何者」なのだろうと問う物語

就職活動を続ける大学生5人の物語。
自意識過剰ともいえる理香の弱さや、流されやすい光太郎を中心に、若者たちが就職活動を通じて、エントリーシートに書く自分とは「何者」で、それを裁く相手とは「何者」なのかを自問していきます。
そこにSNSでの発信が織り交ぜられて表現されていることで、その問いがよりリアルに、かつ身近に感じることができる物語でした。(30代女性)

見えない自分を探す物語

就職活動を目の前にして、5人の大学生の心から、醜さがじわじわとあふれ出ていく様がとてもリアルで見応えがありました。普段は平凡で人を気遣い優しい人間として生きているけれど、いざ自分が選別される場面になると「本性」が露わになる。それなのに「本当の自分」はどんどん分からなくなっていく。その矛盾は多くの人が共感できることであり、できれば目を逸らしていたいことでもあります。でもそれをあえて細かく描いたこの作品が、私はとても好きでした。(20代女性)

「テロリストのパラソル」藤原伊織

テロリストのパラソル
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過去からの清算(呪縛)

史上初の江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞をしたハードボイルド小説です。
話の内容としては、平穏な日中に新宿中央公園で爆弾が爆発するテロが発生します。ちょうどその場に居合わせた主人公(アル中のバーデン、元東大生で学生運動に参加)がそのテロに隠された過去の出来事を探偵の役になり追及していくものになっています。
この作品の最も優れている点としては、会話・文章に無駄がなくその精緻さに初めて読んだ時度肝を抜かれました。学生運動が作品の中心テーマですが、予備知識がなくても楽しますが1960年~70年代の時代背景を知っていれば尚更この作品を堪能出来ます。(30代男性)

「GO」金城一紀

GO
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10代の少年の視点を通して、在日差別問題を描いた青春ストーリー

在日韓国人である主人公の少年・杉原を通して差別問題を描いた作品になっております。外国人差別を描いた作品ではありますが、内容は重すぎず10代の主人公が恋愛や友情関係に思い悩む姿を等身大に描いており、非常に読みやすい作品です。朝鮮学校から日本人学校に進学し、逆境に負けず自らの道を切り拓いていく主人公・杉原の姿は非常に魅力的で読むたびに勇気を貰えます。(30代男性)

「空中ブランコ」奥田英朗

空中ブランコ
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おかしな患者ともっとおかしな医者の物語

様々な悩み、問題を抱えた患者たちが精神科医・伊良部を訪ねるオムニバス形式の一冊。
伊良部はデブで色白、ワガママ、マザコンの中年でそれを患者に対しても隠そうとしない変人のため、初診の際は大体無能判定をされ「何だこいつ」と思われます。しかし伊良部と接していくうちに患者たちの問題は解決し、彼らは最後伊良部に感謝し去っていくのです。何がどうしてそうなるのかは本書を読んでください。
伊良部のおかしな言動に読んだ人間も笑えて元気が出てくると思います。オムニバス形式のため一つの話がちょうど良い長さで読みやすくもあります。(20代女性)

「テスカトリポカ」佐藤究

テスカトリポカ

暴力と狂気に満ちた圧倒的ノワール大河

とても分厚く、見慣れないが禍々しいイラストの表紙に、怯みそうになりますが、一旦、ページを開いたら、その世界観に一気に引き込まれてしまいます。
麻薬抗争の末に家族を殺され、復讐と再起をかけて立ち上がるメキシコ出身のバルミロ。インドネシアに逃亡中の謎めいた雰囲気の臓器売買ブローカーの末永。この二人が出会い、やがて子供の心臓売買ビジネスを確立していきます。そこに劣悪な環境で育ったコシモや、古代アステカの呪術が絡み合い、物語は一層、血と暴力に支配されていきます。
グロテクス表現は多く、救いようのない悪人ばかりで、誰一人感情移入できず、絶望と破滅の未来しか見えないのに、とても面白くて、先が気になりページをめくる手が止まりません。でも、量が多いから、なかなか終わらなくて少しもどかしい。そんな気持ちになりました。

「マークスの山」髙村薫

マークスの山

繊細でリアルなタッチで描かれる重厚なミステリー

リアルな描写と共に登場人物の心理を繊細に描く社会派ミステリの金字塔です。
歪んだ精神を抱えつつ、とある目的から次々と事件を起こす少年、現場の葛藤に苦しみながら、必死でその背中を追う刑事の二人の視点から物語は進みます。

その背景にある「マークス」と、それに関わる人物たちの暗躍も絡み、事件は想定外の状況となり複雑さを増していきます。やがて明らかになる真相と共に描かれる、山。
そこに至るまでの緊迫感溢れるストーリーは、時間が経つのも忘れて一気に読んでしまいます。

また、登場人物たちの苦悩が目に浮かぶような繊細な描写も味わえるのもこの作品の特徴。特に、事件を追う側の刑事が焦燥し、後悔し、それでも真相を追い求める姿勢に心を打たれます。
離婚した妻との思い出、その兄との邂逅、そして部屋に残る登山靴。
それらが事件の合間に挟まれ、重苦しい展開に一息つくような心の落ち着きを与えます。

巧みなトリックや鮮やかな推理が描かれる華麗なミステリーではありません。
葛藤と苦悩を抱えながら進む重厚な物語を読みたいのであれば、是非オススメの作品です。(40代男性)

「マークスの山」関連テーマ

「鍵のない夢を見る」辻村深月

鍵のない夢を見る
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魔が差した女性達の顛末

辻村深月さんの5本の短編集です。短編なので読みやすそうだと思い軽い気持ちで読み始めたのですが、どの作品も後味が悪く、色んな意味で心に残る作品でした。
各話、どこにでもあるような町のどこにでもいるような女性が主人公で、全員、犯罪とは無縁のはずなのにじんわりと事件に巻き込まれていきます。普通に平凡なまま人生を全うするというのは、とても幸せで、案外難しいことなのかもしれないと思いました。(50代女性)

「理由」宮部みゆき

理由

《あらすじ》
東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な殺人事件。殺されたのは「誰」で「誰」が殺人者だったのか。そもそも事件はなぜ起こったのか。事件の前には何があり、後には何が残ったのか。

ドキュメンタリータッチで社会の闇に切り込んだミステリー小説

ドキュメンタリー的なタッチで書かれた、非常にハラハラするミステリー小説です。
マンションの一室で見つかった複数の遺体から物語は始まります。彼らは一体どんな関係でなぜこの部屋に住んでいたのか、気になってページをめくる手が止まりません。様々な人から集めた証言が次から次へと出てくる所は、まるで実際の事件のルポルタージュを読んでいるようです。バラバラだった事象が、最後に一つの真実に収束していく様は読み応えがあります。社会の暗部を書いている部分もあるので、読んだ後に深く考えさせられる事でしょう。(30代女性)

「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」大島真寿美

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び
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人生の機微を知りつつ浄瑠璃作りに命をかける男の物語

人形浄瑠璃作者、近松半二の物語。
歌舞伎にはちょっと興味がありますが、人形浄瑠璃の世界は知らずで読んでもわかるかなと思っていたのですが、大島さんの筆の力で楽しく楽しく読み通せました。文楽と歌舞伎が競いながら、庶民の娯楽でもあった時代がイキイキと描かれています。
大阪弁のことばのリズムも音楽のようで、半二を取り巻く人たちとの会話が多いのでわかりやすいです。半二自身が人生の機微を経験しながら、浄瑠璃を作っていく過程にエールを送りつつ読み通せます。(50代女性)

「私の男」桜庭一樹

私の男
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男女の深い繋がりの素晴らしさと恐ろしさ

映画化もされた作品です。地震で孤児になってしまった花を、淳悟が引き取ります。ふたりの関係は、どう表現すればよいのか分からない、愛情なのか、寂しさによるつながりなのか、単純な言葉では表現できないふたりの関係、過去、現在と章ごとに切り替わる展開に気持ちが引き込まれていきます。読み終わった後になんとも言えない余韻の残る作品でした。(50代女性)

「私の男」の関連テーマ

「ホテルローヤル」桜木紫乃

ホテルローヤル
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人間の本能を知らしめる作品

主人公が同じ人物ではないという設定で、ラブホテルという場所で繰り広げられる人間模様に焦点を当てている短編集。
作者の実家がラブホテルを家業としていて、作者自身の体験をもとに描かれている作品で、このホテルが完成する当時の経緯を知るところが最後の1編に登場するのですが、経営者である人物の物語が、まるで舞台となっているこのラブホテルの中で起きている非日常的な行為であるかのように感じさせられる、人間の本能を垣間見ることができるお薦めの作品です。(50代女性)

「梟の城」司馬遼太郎

梟の城
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迫力がありスピード感のある復讐劇

とにかく全体的にテンポ感のある作品なので、最初からラストまで一気に読めますし、時代背景も非常にリアルに描かれているので、読みながら自然とその背景が浮かんでくるような感覚がしました。また、復讐劇なので妙に共感できたり感情移入できる場面も多かったですし、一度読み始めると時間を忘れてしまうほどに夢中になれるのでおすすめです。(30代男性)

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