中学生という時期は、不思議な季節である。子供と大人の境目で、世界の見え方がぐらぐらと揺れ、自分が何者なのかまだ分からない。だからこそ物語の主人公として、これほど豊かな年齢もない。
部活や恋に揺れる日常から、世界の命運を背負う戦いまで、中学生の主人公たちが描かれるアニメは驚くほど振れ幅が広い。今回は思春期の少年少女が物語の中心にいるアニメを11作品紹介する。すでに観たことのある人も、まだ出会っていない人も、この夏の宿題のような気持ちで何か一本でも手に取ってもらえたらと思う。
新世紀エヴァンゲリオン
監督:庵野秀明/アニメーション制作:GAINAX/1995-1996年放送(全26話)/テレビ東京系列

14歳の少年が乗らなければ、世界は終わる
セカンドインパクトから15年後の2015年。第3新東京市に襲来する謎の敵「使徒」を倒せるのは、汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンに搭乗する14歳の少年少女だけだった。父に呼び寄せられた碇シンジは、訳も分からぬまま初号機のパイロットとなる。
巨大ロボットものの皮を被りながら、その実は思春期の心の闇を解剖し続けた作品だ。シンジが繰り返し問う「逃げちゃダメだ」という言葉は、戦闘の覚悟ではなく、自分自身と向き合うことの困難さを表している。中学生の年齢で背負わされた重さと、そこから逃げたい本音の間で揺れる姿は、戦闘シーンよりも生々しく胸に残る。
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交響詩篇エウレカセブン
監督:京田知己/アニメーション制作:ボンズ/2005-2006年放送(全50話)/TBS系列

ボーイ・ミーツ・ガールが世界を動かす50話
田舎町ベルフォレストで退屈な日々を送っていた14歳のレントンの元に、ある日空からヒロイン・エウレカが乗るLFOが落ちてくる。それが、彼が反政府組織ゲッコーステイトに加わり、世界の真実へと近づいていく旅の始まりだった。
50話というロングランをかけて、レントンとエウレカの関係がゆっくりと、しかし確実に変化していく。喧嘩をして、誤解して、それでも互いを諦めない。中学生年代の不器用な恋愛と、世界の構造に巻き込まれていく成長が見事に編み合わさっている。全話を見終えたとき、最初の頃のレントンと最後のレントンが、まるで別人のように見えるはずだ。
耳をすませば
監督:近藤喜文/原作:柊あおい/製作:スタジオジブリ/配給:東宝/1995年公開

好きなひとが、できました
中学3年生の月島雫は読書が好きな少女。図書館の本の貸出カードに何度も現れる「天沢聖司」という名前が気になっていた。やがて彼と出会い、ヴァイオリン職人を目指してイタリアへ渡る夢を持つ聖司の存在に触発され、雫もまた自分の物語を書き始める。
近藤喜文監督の最初で最後の長編作。多摩丘陵の光と風と、本と音楽と、まだ何者でもない少年少女の焦燥が、繊細な筆致で描かれている。地球屋の主人・西司朗が雫に語る「時間をかけてしっかり磨いてください」という言葉は、雫だけでなく、中学生だった頃の自分にも向けられているように感じる。何かを始めるのに遅すぎるなんてことはないと、観るたびに思わせてくれる作品だ。
四月は君の嘘
監督:イシグロキョウヘイ/原作:新川直司/アニメーション制作:A-1 Pictures/2014-2015年放送(全22話)/フジテレビ・ノイタミナ

14歳の春、僕は君と走りはじめる
母の死をきっかけにピアノの音が聴こえなくなった元天才ピアニスト・有馬公生。モノクロームに見える日常を送る彼の前に、自由奔放なヴァイオリニスト・宮園かをりが現れ、世界が色を取り戻していく。
クラシック音楽を題材にした青春群像劇だが、ただの音楽アニメではない。喪失と再生、そして言葉にできない感情をどう抱えていくかという、思春期の核心に踏み込む物語だ。演奏シーンの作画と音楽の融合は圧巻で、楽器に触れたことがない人でも、なぜ音楽が人の心を動かすのかを体感できる。観終わったあと、しばらく余韻から戻れなくなる種類の作品である。
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Another
監督:水島努/原作:綾辻行人(角川書店)/アニメーション制作:P.A.WORKS/2012年放送(全12話)

そのクラスには、誰にも話してはならない秘密がある
1998年、転校生の榊原恒一は夜見山北中学校3年3組に編入する。クラスには重苦しい空気が漂い、眼帯の少女・見崎鳴の存在を誰もが「いないもの」として扱っていた。やがて恒一は、このクラスにまつわる凄惨な「現象」の真実に近づいていく。
新本格ミステリの旗手・綾辻行人による学園ホラーのアニメ化。P.A.WORKSの美しい背景美術と、水島努監督の演出による不穏な空気が見事に噛み合っている。怪奇現象を解き明かしていくミステリ要素と、誰が「死者」なのかという疑心暗鬼の心理描写が同時に進行し、観る側も中学生たちと一緒に追い詰められていく感覚を味わうことになる。
ぼくらの
監督:森田宏幸/原作:鬼頭莫宏(小学館)/アニメーション制作:GONZO/2007年放送(全24話)

巨大ロボットに乗る代償は、命だった
夏休みの自然学校に集まった15人の少年少女が、ココペリと名乗る男に出会い、「巨大ロボットに乗って敵と戦うゲーム」をしないかと誘われる。小学4年生の宇白可奈を除く14人の中学1年生が契約を結んだその夜、本当に巨大ロボット・ジアースが現れ、彼らは順番にパイロットになっていく。だが、そこには想像を絶する代償があった。
巨大ロボットものの体裁を取りながら、その実は一話ごとに一人の子供の人生を描く連作短編のような構造を持つ。家庭の事情、性別、信仰、政治、戦争──14歳が抱えるには重すぎるテーマが次々と提示される。観るのに覚悟がいる作品だが、子供たちが下す選択の一つひとつは、忘れがたい余韻を残す。
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僕の心のヤバイやつ
監督:赤城博昭/原作:桜井のりお(秋田書店)/アニメーション制作:シンエイ動画/2023年第1期・2024年第2期放送

重度の中二病と人気者の美少女、距離が縮まっていく
中学2年生の市川京太郎は、自称「重度の中二病」で陰キャ。クラスで人気の山田杏奈に対して屈折した感情を抱いていた。だが山田は、市川の予想を裏切るかたちで彼に近づいてくる。彼女の意外な素顔と、市川の少しずつ変わっていく心の様子が、丁寧に描かれていく。
シンエイ動画の柔らかな作画と、牛尾憲輔の音楽がもたらす空気感が絶妙。中学生のラブコメというと甘ったるくなりがちだが、この作品はもっと繊細で、距離が縮まっていく瞬間の心の動きを一つひとつ拾い上げる。市川の独白がだんだんと優しい方向に変化していく過程は、思春期の輪郭そのものを描いているように見える。
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serial experiments lain
監督:中村隆太郎/企画原案:Production 2nd/キャラクター原案:安倍吉俊/脚本:小中千昭/アニメーション制作:トライアングルスタッフ/1998年放送(全13話)

14歳の少女が、ネットワークの向こうへ消えていく
内気で人付き合いが苦手な中学2年生・岩倉玲音のもとに、自殺したはずのクラスメイトからメールが届く。その出来事をきっかけに、玲音はNAVIと呼ばれる端末を通じて、Wiredと呼ばれるネットワークの世界に深く沈み込み、現実とネットワークの境界が崩れていく。
1998年、インターネットがまだ一部の人のものだった時代に、すでに「ネットと現実が地続きになった世界」を描いてしまった怪作。難解さで知られるが、根底にあるのは思春期の少女が抱える孤独と、誰かと繋がりたいという切実な願いだ。SNS時代を生きる今こそ、この作品が描いた問いの鋭さが分かる。第2回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞作。
魔法少女まどか☆マギカ
監督:新房昭之/脚本:虚淵玄/キャラクター原案:蒼樹うめ/アニメーション制作:シャフト/2011年放送(全12話)

願いを叶える代わりに、何を差し出す?
中学2年生の鹿目まどかは、ある日不思議な転校生・暁美ほむらと出会い、白い小動物キュゥべえから「魔法少女になって願いを一つ叶えないか」と持ちかけられる。だが、その契約の裏側には誰も想像しなかった真実が隠されていた。
魔法少女ものの様式を借りながら、その奥に「希望と絶望」「願いと代償」という哲学的な問いを忍ばせた作品。劇団イヌカレーが手がける魔女空間の異質な美術、虚淵玄の容赦ない脚本、梶浦由記の音楽が一体となって、忘れがたい12話を組み上げている。中学生の少女たちが背負わされる重さの意味を、最後の最後まで考えさせられる。
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からかい上手の高木さん
監督:赤城博昭/原作:山本崇一朗(小学館)/アニメーション制作:シンエイ動画/第1期2018年・第2期2019年・第3期2022年放送

隣の席の彼女に、今日もしてやられた
中学生の西片は、隣の席の高木さんにいつもからかわれている。何とかやり返そうと知恵を絞るが、すべて見透かされてしまう。そんな西片の悔しさと、高木さんの楽しそうな表情の応酬が、瀬戸内海の島の風景の中で淡々と続いていく。
事件らしい事件は起きない。ただ、隣の席に好きかもしれない女の子がいるという、それだけのことが、こんなにも特別な時間に感じられる。3期にわたるTVシリーズと劇場版を通じて、二人の関係はゆっくりと変化していく。観ているこちらも、まるで彼らの同級生になったような気持ちで、その変化を見守ることになる。
「からかい上手の高木さん」の関連テーマ
東京マグニチュード8.0
監督:橘正紀/シリーズ構成:高橋ナツコ/アニメーション制作:ボンズ・キネマシトラス/2009年放送(全11話)/フジテレビ・ノイタミナ

お台場で大地震に遭った姉弟が、家へ帰るまで
夏休み、中学1年生の小野沢未来は弟の悠貴と一緒にお台場のロボット展に出かける。その日、東京をマグニチュード8.0の海溝型大地震が襲う。崩壊した街を、シングルマザーのバイク便ライダー・真理に助けられながら、姉弟は世田谷の自宅を目指して歩き始める。
2009年放送、東日本大震災の前に作られた作品でありながら、災害下の都市と人々の姿を驚くほどリアルに描いた一作。専門家の監修のもと、防災・危機管理の視点も盛り込まれている。だがこの作品の核心は、災害描写ではない。思春期の入り口にいた少女が、極限状況の中で家族と向き合い、何かを受け止めていく過程にある。観終わったあと、日常がいかに尊いものかを静かに思い知らされる。

