遊女(遊郭)を題材にしたオススメ小説7選
遊女や遊郭と聞いて、あなたはどのようなイメージを抱きますか? 一見華やかでありながら、その裏には深い悲哀や複雑な人間模様が隠されている世界。
遊女や遊郭を舞台にした物語は、ただの恋愛物語にとどまらず、そこに生きる人々の希望、絶望、そして強さを描き出します。これらの小説を通じて、読者は過去の日本の文化や社会の一面を垣間見ることができるでしょう。
遊女や遊郭の世界には、人間の美しさや哀しみが凝縮されています。この独特の文化と歴史を持つ世界に深く触れ、新たな発見をしていただければ幸いです。
美しくも切なく、そして強く激しく生きていく女達の波瀾万丈の物語。遊女(遊郭)を題材にした傑作オススメ小説7選です。
「花宵道中」宮木あや子
<あらすじ>
どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。あの日、あんたに逢うまでは―初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑…儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R‐18文学賞受賞作。
遊女たちの悲しくも美しい恋物語
ある遊郭を舞台にした5人の遊女たちのオムニバス小説です。1話目からグッと引き込まれるような心理描写、美しい情景描写に心打たれます。そして他の物語とも緻密に関係性が描かれており、読み進めていけばいくほど物語の背景や遊女たちの関係が深掘りされていき、最後には悲しくも美しい物語や登場人物たちの虜になっているでしょう。
(20代女性)
華やかで悲しい遊女の悲哀を綴る
遊女の悲哀や友情を描いた時代小説。表現がとても美しく艶っぽく行間から色香が滴り落ちます。想い人と添い遂げられなかった遊女もいれば覚悟を持って別れた遊女もいる、遊女の数だけ人生と秘めた情念があると思い知らされる話でした。個人的には「雪紐観音」がいちおしです。濡れ場もけっしていやらしくなく、むしろ耽美に書かれていました。
(30代女性)
籠の鳥たちの切ない恋
遊女たちの恋愛を描いた短編集です。性を売る仕事の中、芽生えた恋心を抱えて揺れ動く心情が細やかに表現されています。また、宮木あや子の描く官能シーンは女性らしい艶やかさがあり読み応えがあります。また、遊女間の関係性も嫉妬や劣等感に苛まれていて深いです。映画化・漫画化もされていて併せて花宵道中の世界観を楽しめます。
(20代女性)
遊女たちの切ない想い
たとえ遊女であれど、その心に芽生える恋情は誰もが経験し得るものと性質的には何も変わりません。しかしながら、遊女という身分故に憚らなければならない、想いを自制せねばならないという、その切なくてもどかしい恋模様に哀れみを抱くと共に魅せられていきます。遊女たちの繊細な心の機微を類まれなる腕前の筆致で描き、R-18文学賞大賞という功績を残した一冊です。
(20代女性)
「吉原手引草」松井今朝子
<あらすじ>
なぜ、吉原一を誇った花魁葛城は、忽然と姿を消したのか?遣手、幇間、楼主、女衒、お大尽―吉原に生きる魑魅魍魎の口から語られる、廓の表と裏。やがて隠されていた真実が、葛城の決意と悲しみが、徐々に明らかになっていく…。誰の言葉が真実なのか。失踪事件の謎を追いながら、嘘と真が渦巻く吉原を見事に紡ぎあげた、次代を担う俊英の傑作。
遊女として生きる現実が詰まった物語
花魁としての全盛期、五町内一、十年に一人の逸材と言われた花魁葛城。そんな彼女が突然失踪してしまうところから物語は始まる。
吉原で働いている人を中心にインタビューという形で物語が展開していくのですっと話が入ってきやすく当時の吉原の街並み、暮らし方がすっと読み手に入ってく作品です。
第137回直樹賞受賞作品なので一度読んで間違いない作品です。
「さゆり」アーサー・ゴールデン
《あらすじ》
さゆり十五歳、男たちを熱くする。元芸妓「さゆり」が晩年、アメリカで知りあった歴史家を聞き役に、祇園で生きた前半生を、花街の華やかさ、哀しさ、そして温もりを込めて語るかたちで綴られた物語。
一人の芸者の数奇な物語
一人の芸者の数奇な運命を描いた1997年に出版されたアーサー・ゴールデンの世界的ベストセラー。チャン・ツィイー主演で2005年にアメリカで映画化されたこともある名作です。作品では、第二次世界単線前の日本の京都を舞台に、9歳で身売りされてしまい芸者として生きるしかなかった1人の女性の波乱万丈な人生が描かれています。
「滔々と紅」志坂 圭
<あらすじ>
天保八年、飢饉の村から九歳の少女、駒乃が人買いによって江戸吉原の大遊郭、扇屋へと口入れされる。駒乃は、吉原のしきたりに抗いながらも、手練手管を駆使する人気花魁、艶粧へと成長する。忘れられぬ客との出会い、突如訪れる悲劇。苦界、吉原を生き抜いた彼女が最後に下す決断とは…
江戸吉原の世界を少女が生き抜く物語
9歳の少女、駒乃の住む村が飢饉におそわれ、口減らしのために江戸吉原の遊郭へ売られることになる。苦界とされる遊郭独特のしきたりの中で、先輩の遊女の生き様を目の当たりにする。忘れられない客との出会いや、突然の悲劇を経験しながら駒乃はたくましく生き抜いていく。成長し、人気の花魁となった駒乃が下す決断とは。
「山妣」坂東眞砂子
<あらすじ>
明治末期、文明開化の波も遠い越後の山里。小正月と山神への奉納芝居の準備で活気づく村に、芝居指南のため、東京から旅芸人が招かれる。不毛の肉体を持て余す美貌の役者・涼之助と、雪に閉ざされた村の暮らしに倦いている地主の家の嫁・てる。二人の密通が序曲となり、悲劇の幕が開いた―人間の業が生みだす壮絶な運命を未曾有の濃密さで描き、伝奇小説の枠を破った直木賞受賞作。
男女の愛憎と母親の愛情
山妣(やまはは)は、山奥に住む老婆であり、里の人々にとっても本当に居るのかいないのか謎の存在でした。遡ること数十年前、鉱山町の遊郭で働く遊女がいました。この遊女の客には様々な男がおり、ある男が盗んだ金塊の存在を知り、それを奪い男とともに遊郭から逃げる計画を立て、実行したのです。
しかし、男からは裏切られ、追手から逃れるために雪深いさらに奥地に逃げ込み、宿していた子も生み落とし、育てるのです。山姥と化した遊女が母親として生き、運命に翻弄される子たちの物語は、奇想天外であり、遊郭から始まった愛憎の悲劇に幸せは訪れるのでしょうか。
「吉原炎上」斎藤真一
<あらすじ>
明治20年、18歳で東京の吉原遊廓に身売りした、岡山の没落士族の娘・内田久野。前の年に別れた恋人・勇吉との再会だけを心のよすがに、遊女としての哀しい運命に耐えてひたむきに生きた、その姿を、開化期の廓風景の中に鮮やかに再現する。久野の義理の孫でもある画壇の鬼才が、10年の歳月をかけた鎮魂のドキュメント画文集。
女を売る女郎がそれぞれに夢見たものは何か?
吉原の遊郭に売られた女たちの物語です。遊女なら花魁まで上り詰めたい、もしくは逃げ出したいと思う者もいる。借金を返済して遊郭を後にするもの、身請け人を待つもの、結婚をゆめみるものなど様々な女性の心情が綴られている物語です。生々しさはありますが、人間味が丸裸で記されていてその時代にタイムスリップしたような感じです。
映画化もされていますが、是非原作も読んでみてください。
「吉原ラメント」美雨季
<あらすじ>
ニコニコ動画で超話題!重音テトのボカロ楽曲「吉原ラメント」がノベル化。吉原一の才色兼備と名高い花魁・花紗音は、忘れられない大切な人・徹との想い出を守るため、とある「秘密」を抱えていた。そんな花紗音の前に、一人の若侍・慧が客として現れる。慧に徹の面影を重ねてしまう花紗音。彼女の淡い恋心は、激しくかき乱されていく―。
大人気楽曲のノベライズ化
本作の元となった楽曲、吉原ラメントはニコニコ動画内にてかなりの再生数を誇っています。満を持してのノベライズ化であるため、楽曲の艶やかな雰囲気に魅せられた人の心を確実に掴むこと間違いなしです。楽曲のイメージを壊すことなく、それでいて楽曲だけでは描ききれなかった細かな点までを堪能できるのは大変素晴らしいです。