胸弾む幻想世界へ! おすすめのファンタジー小説

一言でファンタジー小説と言っても王道の中世ヨーロッパ風のファンタジーから、和風ファンタジーや中華風ファンタジーなど多種多様なものがあります。今回はおすすめの人気ファンタジー小説を集めて観ました。ワクワクと心躍る空想の世界をお楽しみください。
「獣の奏者」上橋菜穂子

児童文学のノーベル賞にあたる、国際アンデルセン賞作家賞受賞! 世界的注目作家の新たなる代表作。リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すが――。苦難に立ち向かう少女の物語が、いまここに幕を開ける!
人に馴れないはずの獣と心を通わせ、共に成長する少女の物語
獣の奏者は、エリンという少女が主人公の物語です。
好奇心旺盛なエリンは、人には馴れないとされる獣が何を考えどう生きているのか知りたくて、さまざまな試行錯誤を繰り返していきます。そうして、王獣というこの物語上における架空の獣と次第に心を通わせていきます。登場人物達の心的描写が、人間らしくリアリティのある表現で描かれており、非常に没入感のある作品です。
テレビアニメからこの作品を知りましたが、アニメでは描かれていないエリンの歩む一生が詰まっているので、読み終わった後は、まるで一つの大河ドラマを見た後の様な、壮大なスケール感を感じます。読んでいる間、その場面や情景が頭にイメージとして浮かびましたし、エリンの生き様には心を打たれました。特に物語後半、母としてのエリンは子供に何を伝えられるか模索する姿には胸が熱くなりました。(20代女性)
「獣の奏者」の関連テーマ
「アルスラーン戦記」田中芳樹

猛勇なる騎士軍団を誇り、不敗の国王が君臨するパルス王国。蛮族ルシタニアとの戦いでも、その勝利を疑う者はなかった。だが、味方の裏切りから、軍団は一日にして崩壊。王国は滅亡してしまう。からくも生き残った王太子アルスラーンは、勇者ダリューンや軍師ナルサスらとともに故国奪還を目指すが…。壮大な歴史ファンタジー・シリーズ第一弾。
新しい時代を築いた英雄たちの物語
中世の時代に侵略された国を取り戻すため主人公アルスラーンと仲間達が奮闘する物語。
主人公のアルスラーンは国の王子でありながら温厚で繊細だが困難に立ち向かう芯の強さも秘めている少年。仲間に恵まれ困難を乗り越えることで学習成長していく姿は理想の人物像をイメージさせる。奴隷制度を廃止したり貴族の既得権益を廃止したりと改革にいそしみ市民に愛されるキャラクターとして描かれています。(40代男性)
「黄金の羅針盤(ライラの冒険)」フィリップ・プルマン

《あらすじ》
両親を事故で亡くし、オックスフォード大学寮に暮らすライラは、明るく活発な少女。連れ去られた友だちと、監禁されてしまった北極探検家のおじを救うべく、ライラは黄金の羅針盤をもって北極に旅立つ…。カーネギー賞受賞作。
独特な世界観の中で、少女が冒険に出る物語
普通の現実とは似ている部分があっても、ダイモンと呼ばれる精霊がいる少し異なる世界観が独特で良かった。その中で、主人公の少女のライラの周囲で様々なことが起きるので、彼女が一体どんなことに巻き込まれていくのかストーリー展開がとても気になった。また、そうしたことを通じて主人公にも変化があるので、面白かった。(30代女性)
「十二国記」小野不由美

「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。
中華風異世界骨太ファンタジー
はじめは元祖、異世界転生モノかなと思いきや、なんと逆パターンで、本来その異世界に生まれるはずだった命が悲しくも日本にやってきてしまった、という発想が奇想天外で、でもすごく筋が通ってて受け入れられるストーリーだった。
初めの1冊目は主人公が女子高生で、異世界を冒険する中でたくさんの悲しみや怒りや虚しさに触れつつ、成長するストーリーで、共感できる。
「烏に単は似合わない(八咫烏シリーズ)」阿部智里

人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか? あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場!
八咫烏と猿の戦いを描く和風ファンタジー
人間界とは別に八咫烏たちの世界が存在していて、そこには同じように階級がある。日嗣の御子と呼ばれる皇太子の妃決めから物語が始まる。よくある妃になるためのドロドロの戦いかと思いきや、読み進めていくと思いがけない展開があってどんどん次が楽しみになる、そんな小説だった。
シリーズはそれぞれに名前がついており、妃の話、家臣の話、そして3巻目でようやくシリーズ通しての主人公日嗣の御子の話。1巻づつが大きな前振りだったんだと最後で気づかされる。ああ、この決戦を書きたかったのか、と納得する結末。(30代女性)
「魔女と金魚」中島桃果子

《あらすじ》
無色透明のビー玉の囁きを通して、街中の音を捨い、占いをして暮らしている魔女・繭子。浮気調査、失せもの探し、そして自分のままならない恋…。
ファンタジーとリアルが入り交じった、人間味溢れる魔法使いの物語
この本を購入したきっかけは帯でした。
「自分を持て余しながら不器用に生きている全ての女子へ」と書かれており、生きる理由なんて、やるべきことなんてなんにもないよ、でもなんとなくこのままじゃだめだなって思いながら生きていた私は思わず手に取りました。
この本の主人公、繭子もそういう子なんです。
元彼が忘れられない、元彼にいい感じの女がいる、仕事も中途半端で毎日がつまらない。そんなよくある悩み事を、この本は全然ありきたりじゃなく書くのがこの本最大のポイント。
魔法使いの主人公、童話に出てくるような町、ファンタジー要素がいっぱいで、リアルな心情が書かれていても読んでて全然胸焼けしないんです。
またすごくおしゃれな表現をするんです。
若い女の笑い声をレモンを絞ったような爽やかな声とか、想像するだけでそのページいっぱいが柑橘の香りになりました。読み手にまで魔法をかけてしまいます。
不器用に生きている全ての女性に是非手に取ってほしい一作です。(20代女性)
「夢みる宝石」シオドア・スタージョン

里親のひどい折艦をのがれた捨て子のホーティ少年は、愛する人形とともにサーカス団の一座に保護される。団長は、へんてこな人間を集めるかたわら、不思議な能力をもつ水晶を探していた。一見なんの変哲もないその水晶は実は生きていて、痛みや憎しみなどさまざまな感情を表出できる。そして水晶が夢みるとき、土の塊から花や昆虫や、小鳥や犬が生まれるのだった…。
宝石が生命として息づく幻想世界
このファンタジー小説は、SF作家シオドア・スタージョンが発表した珠玉の作品です。
この作品の特にファンタジックな部分といえば、宝石が意志と生命をもった生物であるということでしょう。
宝石たちは、人間(性格にいえば、人間そっくりの生き物)をつくることができ、主人公である少年ホーティは自分がふつうの人間とは違っていることに気づきます。宝石がつくった人間は、「ふつうの人間とかわらない者」と「ふつうの人間とは違う者」とがいます。そして、宝石によってつくられた人間でなくとも「ふつうの人間とは違う者」は多く存在します。
美しく幻想的な世界観に酔いつつ、「ふつう」の範疇からは、はずれた仲間たちと行動をともにするホーティを応援したい気持ちになります。
はたしてホーティは何者なのが、最後までドキドキする面白い小説です。(40代女性)
「宮廷のまじない師」顎木あくみ

白髪に赤瞳、幼い頃より鬼子とおそれられた市井のまじない師・珠華と絶世の美男子である若き皇帝・白焔が、新たな怪異の謎に迫る。 国の一大行事「星の大祭」を前に、幽霊の噂が人々を騒がせているという。真偽を確かめるべく、珠華は白焔とともに祭りの開催地である栄安市へと向かうが……。
呪いと霊が跋扈する後宮、オカルト騒ぎの収拾にゴーストバスター&お局退治の達人、珠華は今日も大忙し
民間の女の子が後宮にあがる中華ファンタジーです。
占い、まじない、主人公独特の力、そして幼なじみはマヌケ、皇室の男性たちは才色兼備で容姿端麗とよくある話に見えますが、ストーリーがしっかりしている上、雰囲気が華やかでどんどん読んでいけます。ヒロインが負けず嫌いで周囲のイケズをものともせず蹴散らす話が大好きならこれはオススメです。(50代女性)
「幻想郵便局」堀川アサコ

就職浪人中の安倍アズサは、「なりたいものになればいい」と親から言われてきたけれど、なりたいものってなんだかわからない。そんなときに特技欄に“探し物”と書いて提出していた履歴書を見て、アルバイト決定の連絡が。アルバイト先は、山の上、ぽつんとたたずむ不思議な郵便局。そこで出あった不思議な人々と不思議な世界とは……。
ファンタジーと現実感が同居。
あくまでファンタジーの括りに属してはいるものの、その実現実感も同居しているため、どこか不思議に思っても身近にも感じられるため、ファンタジー作品の中では稀有な位置づけるあるとさえ思いました。
とは言え、普通の域を超えている郵便局とあって、読んでいてシンプルに楽しいです。局員や客たちの性格も個性があって大変引き込まれます。(20代女性)
「煌夜祭」多崎礼

魔物が歩き回り、人を食うという冬至の夜――漂泊の語り部たちが、十八の諸島を巡って集めた物語を、夜を徹して披露する煌夜祭が開かれる。そして今年も冬至の夜が訪れ、廃墟となった島主屋敷跡で、二人だけの煌夜祭が幕を開けた。
語り部たちによって紡がれる、魔物にまつわる物語
とある島々に伝わる、「煌夜祭」と呼ばれる儀式。そして、島々に存在する魔物。これらにまつわる連作形式の小説です。語り部たちが島々の歴史、逸話を語っていく中で、実際に作中の世界が存在しているかのような圧倒的なリアリティを持って迫るものがあります。
幻想的な設定ながら描写は非常に緻密で、世界観にすぐ没頭することが出来ました。語り部たちは顔を隠し夜通し物語を語るのですが、最後に明かされる大きな秘密に驚きと感動をもらいました。人の生き死にとは何か、物語はなぜ生まれるのか、そんなことを考えさせられる一冊です。(20代女性)
「後宮小説」酒見健一

時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに……。さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。
架空の中国ファンタジーを文豪が描いたらきっとこんな感じになる
架空の中国(唐代?明代くらいのイメージです)の後宮を舞台にした、第一回ファンタジー小説大賞のグランプリ作品です。30年ほど前の作品ですが今読み返しても見事な隙のない作品です。
エンディング近くに「後宮」で起きた「つまらない事を書き留めた(=小説)」とのネタバレ的な表現が登場しますが、とんでもない!文体は終始中島敦を彷彿とさせる格調ある文体。大国の衰亡を、後宮に選ばれた上がった主人公の銀河の心身の成長と共に描かれます。単純な恋愛要素はほぼ薄く、後宮のドロドロした暗闘もメインではありません。女とは何か?命とは何か?国とは何か?歴史とは何か?を静かに深めた傑作です。シリアスとコメディは絶妙に織り上げられ、読後感の涼やかさは群を抜く傑作です。(40代女性)
「幽落町おばけ駄菓子屋」蒼月海里

大学生の御城彼方が1年限定契約で幽落町の住人になったのは去年の春のこと。そろそろ約束の期限が近づいてきて、なんだか落ち着かない彼方だが……。ほっこり温まる謎とき物語!
死者や妖怪も出てくる不思議な駄菓子屋のハートフル物語
御城彼方という主人公が幽落町を有楽町と勘違いをした事から、現世とあの世の中間に位置する場所で不思議な住人たちと出会っていく描写が、怖くなくファンタジーっぽい所が気に入っています。大家さん的な存在の水脈の落ち着いた佇まいの様子と、亡くなった人の問題を彼方も巻き込んで解決していく所も面白いです。最後に彼がこの不思議な地に来た理由が気になる所です。(50代女性)