思わず笑っちゃう、笑える小説27選
十七歳だった!
作者:原田宗典
<あらすじ>
17歳。楽しくてムチャムチャ充実している一方で不満だらけ。自意識過剰で、恥しくって、キュートな愛すべき時代。身悶えしながら書いた恋文で呼び出し川原での早朝デート。不良志願の第一歩、隠れ煙草。下半身の“暴れん坊将軍”に苦しめられ、深夜の自動販売機で決行するエッチ本購入作戦。カッチョ悪い小豆島家出事件の顛末。思い出すたび胸の奥が甘く疼く、ハラダ君の愉快でウツクシイ高校青春記。
原田宗典の青くてトホホな時代の記録
この本は作者の原田宗典さんの高校生時代の出来事を書いたエッセイ本です。少年時代の原田さんの願望が、妄想通りに行かないリアリティに共感できます。
原田さんが家族と喧嘩して家出をする話にて、原田さんは海辺の町に向かいます。そこで可愛い女の子と出会ってワンナイトラブをした後に切ないお別れ…というドラマのような展開を期待しますが、実際に出会ったのは寂しい雰囲気の定食屋で働いているおばちゃんだけで、その後も何も起こらずに空しい気持ちのまま、家出は一日で終了しました。この妄想と現実の格差が見所です。
次に、昔存在したエロ本自販機へエロ本を買いに行った話で、もしも、ご近所にエロ本を買ったことが広まったらどうしようと、不安になった原田さんは妄想を展開していきます。実家から勘当された後、ヤクザの下っ端になるしか居場所がなくなって、敵対組織に鉄砲玉として突っ込んで撃たれて、痛みに苦しみながら母を思って死んでいく……いや、そこまではいかんやろと突っ込みたくなるけれどエロ本は欲しい、読みたいけれども周囲にバレるのが凄く怖い、そんな作者の気持ちに共感できる面白さもあります。(20代女性)
名探偵の掟
作者:東野圭吾
<あらすじ>
完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーダニットからハウダニットまで、12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?本格推理の様々な“お約束”を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ。
これは短編連作の小説で、主人公の探偵、天下一大五郎が次々と事件を解決していく物語です。各話は独自のミステリーテーマを特色としており、密室、アリバイ、見立て、二時間ドラマ、フーダニットなど、多様な謎が展開されます。物語全体はミステリを茶化したパロディとして進行し、ミステリー好きには特に笑えます。さらに、各話や連作全体を通じて、一貫したストーリーが練られており、読み応えのある作品となっています。(40代男性)
ツチヤの軽はずみ
作者:土屋賢二
<あらすじ>
笑えないものは何もない。本邦初の「お笑い哲学者」が贈る爆笑エッセイ集。試験も不況もリストラも、ついでに妻も笑い飛ばそう!
お茶の水女子大学 の名誉教授 であり、哲学者である土屋氏の日々の奮闘(?)を綴ったエッセイです。自称「人格者」である土屋氏が、哲学者らしい皮肉とユーモアを交えて、色々なテーマについて語っています。いつもないがしろにされ、虐げられている感じの土屋氏に笑ってしまいます。連載エッセイをまとめたものなので、一話一話が短く、スキマ時間にクスリと笑いたい方にお勧めです。クスリで済めばいいのですが。(30代女性)
ボッコちゃん
作者:星新一
<あらすじ>
スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群!
表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
ボッコちゃんロボットです。
マスターはお店に座らせてお客の相手をさせます。
ボッコちゃんは外見は本物の女性みたいで、おまけに美人。さらに酔わないし飲んだお酒は回収できるので経済的。ただ、お酒を回収できることで悲劇的な結末になります。
それは…ボッコちゃんに惚れてしまった男性が一生懸命の気をひこうとしますが、ボッコちゃんはロボットなのでとにかく素っ気ない。それで怒った男性はある行動に…(40代女性)
超・殺人事件
作者:東野圭吾
<あらすじ>
人気推理作家を悩ませるのは巨額の税金対策。執筆経費を増やすため、小説の舞台を北海道からハワイに変えたり、ゴルフやカラオケの場面を強引に入れたり、物語はおかしな方向へ――。(「超・税金対策殺人事件」)
見切り発車で書き始めたが思いつかない結末、うっかり使い回してしまったトリック、褒めるところが見つからない書評の執筆。
作家たちの俗すぎる悩みをブラックユーモアたっぷりに描いた、切れ味抜群の8つの作品集。
小説家の苦悩、自虐、葛藤。
短編小説で、小説家視点での苦労が描かれています。自動で書評を作成してくれるマシンや、無駄遣いしたものを確定申告で経費に計上できるように小説のなかの小説を支離滅裂な強引なストーリーにしてしまったり、名探偵が名推理のためにわざと推理を外すへっぽこ刑事の苦悩など。むしろ東野圭吾自身の自虐ネタのようで、面白いです。(30代男性)
ジャズ大名(「エロチック街道」に収録)
作者:筒井康隆
<あらすじ>
見知らぬ夜の街。裸の美女に案内されて、奇妙な温泉の洞窟を滑り落ちる……エロチックな夢を映し出す表題作。江戸末期、アメリカより漂着した黒人たちと、城をあげてのオールナイト・ジャムセッションが始まる! 底抜けに楽しい傑作「ジャズ大名」など、幻想小説、言語実験、ナンセンス、パロディ、純文学にいたるまで、著者独自の迷宮的世界を見事に展開する、変幻自在の18編。
抱腹絶倒狂乱のジャズ時代劇
江戸末期、米のの南北戦争が終結して、解放奴隷が故郷目指して乗った船が難破し日本に漂着。取扱いに困った藩は黒人たちを座敷牢に閉じこめるが、藩主が彼らの音楽にハマり、徐々に家臣たちもそれに追随。このあたりからが笑えるところで、擬音語のオンパレードで城中のジャズフェス状態を描写。ジャズ演奏に忘我する侍たちの姿を想像しただけでもかなり笑える。(50代女性)
バールのようなもの
作者:清水義範
<あらすじ>
ニュースでよく耳にする"バールのようなもの"って一体何だろう──テッテー的に追及した爆笑短編ほか、著者真骨頂の傑作小説集
「バールのようなもの」っていったい何?
普段ニュースで何気なく耳にする「犯人はバールのようなものを持っており・・・」という表現が引っかかる主人公。「バール」ではなくあえて「バールのようなもの」と、ぼかした表現をするのは何故なのか、「バールのようなもの」というのは「バール」とはまた違う似たようなものという意味だろうが、それはいったい何なのか確かめたくなる主人公の妄想や行動がシュールで笑える。(40代女性)