シェイクスピア以外のオススメ「戯曲」9選

2022年4月13日

オススメの面白い戯曲

「戯曲」とは演劇のために書かれた脚本であり、またその形式で書かれた文学作品のことです。

シェイクスピアの作品が有名ですが(「ハムレット」とか「リア王」とか)、ですがもちろん戯曲はシェイクスピア作以外にもたくさんあります。

今回はシェークスピア作以外の面白い戯曲を、日本の作品も含めて9作品集めました。小説とはひと味変わった物語をお楽しみください。

シラノ・ド・ベルジュラック

作者:エドモン・ロスタン

シラノ・ド・ベルジュラック

<あらすじ>
ガスコンの青年隊シラノは詩人で軍人、豪快にして心優しい剣士だが、二枚目とは言えない大鼻の持ち主。秘かに思いを寄せる従妹ロクサーヌに恋した美男の同僚クリスチャンのために尽くすのだが……。30歳でレジオン・ドヌール勲章を叙勲し、33歳でアカデミー・フランセーズに選出された天才ロスタンの代表作。

人の本質は見かけではなく美はその内面にある

何度となく映画化もされているフランスの最高戯曲であり、だれもが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
シラノは軍人で豪快かつ心優しく詩人、唯一の欠点は大きな鼻。どの程度の大きさかはわからないけども、本人が気にするくらいなのだから相当でしょう。自分が思いを寄せるロクサーヌに思いを伝えることが出来ないまま美男子の恋の橋渡しをするあたりが彼の人の好さを物語っているし、うっとりするような詩の数々は彼の内面の美しさと知性を表しています。シラノのような男性が現代日本にも大勢いることを願います。(40代女性)

純粋な片思いを描いた作品

容姿がよくない男性の片思いを描いた作品です。主人公のシラノはロクサーヌのことが好きなのですが、彼女はシラノの友人でイケメンに恋しています。好きな人が自分の友人のことを好きだったというシチュエーションは身近なように感じます。シラノの純粋な思いに感動することができ、二人が添い遂げますようにと読みながら思ってしまう作品です。(40代女性)

ガラスの動物園

作者:テネシー・ウィリアムズ

<あらすじ>
不況時代のセント・ルイスの裏街を舞台に、生活に疲れ果てて、昔の夢を追い、はかない幸せを夢見る母親、脚が悪く、極度に内気な、婚期の遅れた姉、青年らしい夢とみじめな現実に追われて家出する文学青年の弟の三人が展開する抒情的な追憶の劇。

繊細な心はどこに行けばいいのかを問いかける物語

古い常識にとらわれた母親と、そこで生きる姉と弟。読後に涙があふれだす作品です。
婚期を逃すことを何よりも恐れる母親に、結婚をあきらめている姉という図式は今も昔も変わらないことが見につまされます。その中で、自分だけはしたたかに強く生きていかねばと決意する弟の思いも今と変わりありません。家族であっても、いや家族だからこそ理解し合えず衝突するという小さな事件です。タイトルのように美しい心と、それを砕く現実の対比が素晴らしい作品になっています。(40代女性)

ねずみとり

作者:アガサ・クリスティー

ねずみとり

<あらすじ>
夫婦の山荘に、大雪をついて五人の泊り客、そして一人の刑事がやってきた。折しも、ラジオからは凄惨な殺人事件のニュースが流れはじめる。やがて、不気味なほどの緊張感がたかまり、舞台は暗転した!マザー・グースのしらべにのって展開する、スリリングな罠。演劇史上類をみないロングランを誇るミステリ劇。

どんでん返しがおもしろい雪山ミステリー

イギリスで今も人気がある劇場作品のひとつ。1952年の初演以来、コロナで中断されるまで連続で上映されていた、超ロングランの作品。日本でもマウストラップなどのタイトルでなんども演劇化されている。アガサクリスティーならではのどんでん返しの展開と、登場人物たちの心理戦が、分かっていてもみていてはらはらする。(30代女性)

雪山ミステリー「次に、とられるねずみは、だあれ」

雪山ミステリーの戯曲です。ミステリーの女王といわれている、アガサ・クリスティーが書いているだけあって、ミステリーとしても非常におもしろいです。雪山のゲストハウスで、怪しい客たち、発生する事件。ミステリーの王道の展開は、ミステリー好きなら必ず読みたいと感じるはず。劇中に出てくるマザーグースの歌が、イギリスっぽいアクセントをきかせて、事件を盛り上げてくれます。
ミステリー好きなら必ず読んだほうがいい、イギリスの文化が好きな人も、読んで損はないと思います。イギリスを代表する推理劇のひとつ。(20代男性)

ワーニャ伯父さん

作者:アントン・チェーホフ

かもめ・ワーニャ伯父さん

それでも生きていく者たちへの人間讃歌に溢れた物語

辛酸を嘗め尽くし、人生に疲れ果ててしまったワーニャ伯父さんとソーニャの二人の生きる姿に胸が熱くなります。本当に人生はつらい事ばかりで、報われることのなさに生きる気力を失いそうになりますが、生き続けることに意味があるのだと思いました。
アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞したことで話題になっている映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇としても本作が登場するので、映画が気になっている人にはぜひ読んでいただきたい一作です。(20代女性)

ファウスト

作者:ゲーテ

ファウスト〈第一部〉

《あらすじ》
『ファウスト』第1部では、学問の無力に絶望した大学者ファウストが悪魔メフィストの助力を得て官能的享楽の限りをつくそうとするが、それは心清き少女グレートヘンの痛ましい悲劇におわる。

高みを求める老学者と、そそのかそうとする悪魔の物語

老学者ファウストが魔術に興味を持ったことがきっかけとなり、悪魔メフィストフェレスと契約することになるという展開が面白いです。ファウストは満たされた人生を求めて、メフィストフェレスはファウストの魂を得るために、何とか彼をそそのかそうと躍起になります。互いの攻防とも思えるような彼らのやり取りが良かったです。(30代女性)

人形の家

作者:ヘンリック・イプセン

人形の家

<あらすじ>
小鳥のように愛され、平和な生活を送っている弁護士の妻ノラには秘密があった。夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたのだ。秘密を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラをののしる。事件は解決し、夫は再びノラの意を迎えようとするが、人形のように生きるより人間として生きたいと願うノラは三人の子供も捨てて家を出る。近代劇確立の礎石といわれる社会劇の傑作。

150年前から女性の自立を考える

女性はカワイイものが好きなので、自他ともに愛するものや味方には溢れんばかりの愛を与えることもあるし何を言われても動じない事がある。
でも、ふと、気づいてしまった時には取り返しのつかない行動に出る事もある。それが「自分を人として見られていない」と感じる時である。
コップに水が溜まり、溢れていくように感情が爆発してしまうと、今までの物が陳腐に感じて大胆にも捨ててしまえるものなのだと思う。
それは、マイ・フェア・レディのイライザしかり、人形の家でのノラなのだと思う。(30代女性)

「人形の家」の関連テーマ

父と暮らせば

作者:井上ひさし

父と暮らせば

<あらすじ>
「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」愛する者たちを原爆で失った美津江は、一人だけ生き残った負い目から、恋のときめきからも身を引こうとする。そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」をかってでて励ます父・竹造は、実はもはやこの世の人ではない―。「わしの分まで生きてちょんだいよォー」父の願いが、ついに底なしの絶望から娘をよみがえらせる、魂の再生の物語。

父と娘の深い愛情の物語

戦後の広島。清く慎ましく暮らす娘と、年頃なのに恋愛に奥手な娘を心配して、あれこれと口うるさい父親の物語。一見普通の親子のようですが、父親にはある秘密があり…、軽妙な広島弁かテンポ良く読ませてくれますが、ラストでは胸を打たれて深く考えさせられます。宮沢りえさん主演で映画化もされた、二人芝居の名作です。(40代女性)

ゴドーを待ちながら

作者:サミュエル・ベケット

ゴドーを待ちながら

<あらすじ>
田舎道。一本の木。夕暮れ。エストラゴンとヴラジーミルという二人組のホームレスが、救済者・ゴドーを待ちながら、ひまつぶしに興じている——。不条理演劇の代名詞にして最高傑作。

フランスが産んだシュールコント

不条理演劇として有名な本作ですが、正直初めて読んだときは驚くほど意味がわからず困惑しました。なぜなら登場人物の言っていることは半分以上が支離滅裂のように聞こえるし、物語も冒頭から最後まで何ひとつ進まないのです。ですので二周目を読むときにはもう少し肩の力を抜いて、登場人物たちのやり取りに身を任せてみました。すると不思議と笑えたのです。物語というと起承転結があるというのを当たり前に思っていたそれまでの価値観が覆された一作です。不条理とは何か知りたい人はまず本作をおすすめします。(20代男性)

サロメ

作者:オスカー・ワイルド

サロメ

<あらすじ>
妖しい月光の下、継父ヘロデ王の御前で艶やかに舞ってみせた王女サロメが褒美に求めたものは、囚われの美しき預言者ヨカナーンの首だった――作家・平野啓一郎が、これまでの「悪女(ファム・ファタール)」としてのサロメ像を一新し、原文に忠実に、無垢で残酷な少女としてのサロメの激情と悲劇的結末を浮き彫りにする新訳。

死の輪郭に触れる描写

物語が善悪、愛や憎しみ、生、死などを表現するものとしてもっとも他者に伝えやすいものであることは間違いない。けれども、いずれも人と人との関係を描くことで訴えかけるものが多い。
私はそれに優劣があるとは思っていないが、本作は少なくとも前述した触ることができないものを扱ったテーマを人との関係性で表現したのではなく、あくまで描写のみで完成している作品だと評価している。
サロメの言葉にはそれだけの力があったのだ。(20代男性)

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