山を舞台としたオススメの小説・エッセイ10選

2022年3月20日

山を舞台とした小説&エッセイ

山々はただの地形ではありません。それは冒険、発見、そして自己発見の場でもあるのです。山を舞台にした物語は、その雄大な自然の美しさとともに、人間の内面と外界との葛藤を見事に描き出します。
山々がもたらす自然の驚異、そこで遭遇する人々との出会い、そして内省と自己超越への旅は、読者にとって新たな視点と感動を与えてくれることでしょう。

そんな山登りが楽しくなるライトなエッセイから、命懸けのハードな登山、山が舞台の山岳ミステリーまで、様々な山の姿を教えてくれる山岳小説&エッセイの10作品をご紹介!

マークスの山

作者:高村薫

<あらすじ>
「マークスさ。先生たちの大事なマ、ア、ク、ス!」。あの日、彼の心に一粒の種が播かれた。それは運命の名を得、枝を茂らせてゆく。南アルプスで発見された白骨死体。三年後に東京で発生した、アウトローと検事の連続殺人。“殺せ、殺せ”。都会の片隅で恋人と暮らす青年の裡には、もうひとりの男が潜んでいた。警視庁捜査一課・合田雄一郎警部補の眼前に立ちふさがる、黒一色の山。

過去と今を結びつける残酷な現実

過去の山岳事故から紡がれるミステリーです。連続殺人事件を紐解く内に過去の山岳事故の全容が明らかになっていくストーリーです。上下2巻からなる非常に読み応えのある内容の詰まった小説です。今起きている事件と過去の山岳事故を行ったり来たりするストーリー展開は読んでいて全く飽きることがありません。読了後、伏線の回収にもう一度読んだくらいおもしろい小説でした。

「マークスの山」の関連テーマ

山女日記

作者:湊かなえ

<あらすじ>
こんなはずでなかった結婚。捨て去れない華やいだ過去。拭いきれない姉への劣等感。夫から切り出された別離。いつの間にか心が離れた恋人。…真面目に、正直に、懸命に生きてきた。なのに、なぜ?誰にも言えない思いを抱え、山を登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長篇。

人生に向き合う女性たちの物語

女性が抱える複雑な心境を巧みな筆致で描いた、著者の思いが詰まった一冊です。年齢や境遇がそれぞれ違うように、悩みや考えていることもまた人によって様々です。
本作では、山を登ることに決めた彼女たちの切実で現実味のある心境にフォーカスすると同時に、厳然とした自然の美しさにも目を向けているため、読み応え抜群です。

「山女日記」の関連テーマ

バッグをザックに持ち替えて

作者:唯川恵

<あらすじ>
取材のためのはじめての登山が辛くて、山なんてやめた…はずだった。それが浅間山を皮切りに、谷川岳や八ヶ岳、そして富士山、ついには標高五〇〇〇メートルを超えるエベレスト街道を歩くまでに。何が楽しいのか?辛いのにどうしてまた登ってしまうのか?山道具から下山後の宴会まで、さまざまな山の魅力を描いた傑作エッセイ。

登山初心者への指南書

肩越しの恋人など恋愛小説家として有名な唯川恵さんが、ご自身の経験を綴った物語です。暑さに弱い愛犬のために軽井沢への移住を決意した著者がひょんなことから浅間山に登ります。しかしあまりのしんどさに断念、もう二度と登山はしないと決めていたのですが、愛犬の死をきっかけに再び山へと挑戦していくストーリーが描かれています。

天空への回廊

作者:笹本稜平

<あらすじ>
エベレスト山頂近くにアメリカの人工衛星が墜落!雪崩に襲われた登山家の真木郷司は九死に一生を得るが、親友のフランス人が行方不明に。真木は、親友の捜索を兼ねて衛星回収作戦に参加する。ところが、そこには全世界を震撼させる、とんでもない秘密が隠されていた。八千メートルを超える高地で繰り広げられる壮絶な死闘―。大藪賞作家、渾身の超大作。

不屈な男の孤高な戦いの物語

エベレスト山頂近くに人工衛星が落下し、その衛星回収作戦の渦中で行方不明になった親友を救出するためにエベレストに挑む主人公が謀略に巻き込まれていく展開だが、あくまでも親友救出を目指し、人間を歯牙にもかけない大自然の脅威は勿論、国家間の思惑にも単身で立ち向かっていく主人公の不屈の闘志がひしひしと伝わってくる。

恐怖の骨格

作者:森村誠一

<あらすじ>
財閥・紀尾井グループ会長の令嬢姉妹が搭乗していた小型飛行機が、北アルプス後立山で消息を絶った。それを聞いた姉妹の婚約者は、公にせず、別々に捜索隊をたて、秘密裏に現場へ向かう。会長が死の床にあり、その財産を独占するための絶好の機会と捉えたのだ。何人も寄せつけない「幻の谷」で、過酷な自然を舞台に様々な人間の野望と思惑が交錯する傑作山岳推理。

人間ドラマ。サスペンスストーリー

紀尾井グループの会長は全身癌に侵されている。
その娘姉妹が乗った飛行機が北アルプスで墜落。姉妹にはそれぞれ婚約者がおり、生存の安否に遺産相続が絡むサスペンスストーリー。
人間関係がやや複雑ではあるが、それはそれで読み応えがあった。
資産問題の話なので、人間の汚い部分が見えるが、一昔前の時代にはよくあるストーリーで中高年世代にオススメ。また、厳しい山の自然描写や登山家の気概も読み応えがあった。

青春を山に賭けて

作者:植村直己

《あらすじ》
大学時代、ドングリとあだ名された著者が、無一文で日本を脱出し、五大陸最高峰に初登頂し、アマゾン筏下りに成功するまでの青春記

植村直己の青春冒険記

植村直己の破天荒な生き方に感動し貪り読んだのを覚えています。彼は考える前に動いています。全くの無一文で日本を出て、現地で一生懸命働き、お金を貯めて登山に臨みました。輝かしい彼の実績でもある五大陸最高峰に初登頂した時の青春冒険記と言えます。彼の持つ凄まじいパワーに満ちた夢へ挑戦は、私たちにも力強い勇気を与えてくれます。

パーティ

作者:山田悠介

<あらすじ>
4人の少年たちは、小学生の頃から友情を育んできた親友だった。しかし彼らは、ある事件をきっかけに、離ればなれになってしまう。だが今日、謎の手紙に誘われ、頂上に神様がいると言われている“神獄山”で再会する。身体の弱い転入生の少女を4人で守ろうとした、罪ある過去を思い出しながら、過酷な山道を登り始め頂上を目指す。果たして山頂で彼らを待ち受けているものとは? そして“罪ある過去”とは──?

各々が罪と向き合う物語

かつて仲良くしていた友との再会、しかしそれは喜ばしい感動の再会ではなく、全員がある目的の元で集まっただけに過ぎなかったのです。過去と現在を行き来する中で、彼らに隠された、その真実が浮き彫りになります。果たして彼らは無事に頂上まで辿り着き目的が達成されるのか、ラストまで気が抜けない臨場感と緊張感溢れる作品です。

凍雨

作者:大倉崇裕

《あらすじ》を見る

タフで気高い山男の意地

親友の命日に登山を決意した主人公が偶然、山を舞台にした犯罪組織の抗争を目の当たりにしてしまうが。図らずも親友の残された妻子がその抗争に巻き込まれてしまう。
亡き親友のためにも妻子を守るべく男は抗争に飛び込んでいく・・
損得抜きで行動する主人公の熱さ・ひたむきさが作品の芯となっていて、一気に読ませてくれる

山小屋ガールの癒されない日々

作者:吉玉 サキ

《あらすじ》
仕事、暮らし、恋、人間関係、そして人生への向き合いかた…山小屋で10年働いたライターがつづる山の上での想定外の日常!

山小屋バイトで過ごした日々のエッセイ

仕事がうまくいかず、心の調子を崩してしまった吉玉サキ。
そんなとき、山小屋でのバイトを終えて帰ってきた幼なじみのチヒロに、山小屋で働くことを勧められ北アルプスの山小屋で働くことになる。
サキは登山をしたことがないだけでなく、アウトドアもスポーツもしない、自然にも興味がなかったが、やがて山の社会に馴染み10年山小屋で働くこととなる。
山小屋での日常、体力勝負の怒涛の日々、住み込みで共に働く仲間との友情、ライターへの夢などを綴ったエッセイ。

脱獄山脈

作者:太田蘭三

脱獄山脈

復讐への熱い思い、逃避行中の山でうまれる男女の友情物語

脱獄山脈はタイトルどおり、刑務所を脱獄した4人と途中で出会った訳ありな女性がいっしょに奥多摩、奥秩父、北アルプスと山を越えていくお話です。脱走者のひとりである主人公は妹を殺された復讐のために、山で身を潜めながら目的地へと向かいます。
4人とも刑務所に入るくらいなので悪い人たちかと思いきや、そうでもなく、登山中の会話は平和的で、暗い話が苦手な私でも面白く読めました。もちろん途中苦難もありますし、推理小説部分もありますが、難しすぎず、登山がおもしろそうだなとも思えました。結末もスッキリしました。