歴代【芥川賞】受賞作からのおすすめ9選

2022年7月30日

おすすめ!芥川賞受賞作

1935年から直木賞とともに始まった芥川賞。大衆性やエンターテイメント性がある作品に贈られる直木賞にたいして、芥川賞は優れた純文学の新人に贈られる賞です。
純文学と聞くと難しそう、敷居が高そうというイメージがあるかもしれませんが、いまでは「純文学」とか「大衆小説」とか明確に区別されてるものでもありませんので、その違いは曖昧です。
ですので、芥川賞作品でも読みやすくてユーモアに溢れてる作品もありますので、気になる作品がありましたら難しそうと避けずに、読んでみてはいかがでしょうか。

「コンビニ人間」村田沙耶香

コンビニ人間

<あらすじ>
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。

現代の価値観と「普通」

36歳大学卒業後18年間コンビニでずっとバイトをし続ける未婚女性の話。そこに新人の男性が入ってきてそんな人生は恥ずかしいと言われて・・・
実際友達(男性)で同じような友達がいるので考え深かったです。その方は私から見たら容姿も整っているし頭もいいのになぜかずっとバイト生活。一体この人は何がしたいのかそれとも何もしたくないのか?自分自身のとってそれが「普通」なのかそうではないのか?生き方の多様性を認めるということはそれぞれのありかた・働き方・プライベートを認めるということなのか?
一体何が「普通」で何が普通ではないのか?それはいったい誰が決めるのか?そんな問題提起を考えさせられる小説です。(30代男性)

普通という単語は何だろう

現在において物事も生き方も多様性が必要というところに、とてもマッチした作品でした。それをコンビニという誰もが身近に感じる場所をメインに書かれているので、更に読みやすかったのかもしれません。多数派だからそれが普通なのか、少数派は普通ではないのか。そもそも普通とは何なのか、を考える良い機会になった作品です。(50代女性)

コンビニを通して社会の中で「ふつうに」生きようとする主人公の物語

私たちの生活に馴染みのあるコンビニでしか生きられない主人公。社会の中で生きづらさを抱えている人たちの苦しみを理解することができました。社会との接点を見つけながら何とか「ふつうの」社会で生きていこうと努力する姿は、むしろ人間味溢れる気がしました。自分の生き方や考え方と違うからとうだけの理由で切り捨てるのではなく、相手を理解しようとすることが大切だと感じました。(40代男性)

「コンビニ人間」の関連テーマ

「蹴りたい背中」綿矢りさ

蹴りたい背中

<あらすじ>
“この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい”長谷川初実は、陸上部の高校1年生。ある日、オリチャンというモデルの熱狂的ファンであるにな川から、彼の部屋に招待されるが…クラスの余り者同士の奇妙な関係を描き、文学史上の事件となった127万部のベストセラー。史上最年少19歳での芥川賞受賞作。

思春期の葛藤や心情を描いた物語

思春期といった難しい年代の心情を非常にリアリティのある文章で書かれていますし、読んでいるとどんどん入り込んでしまうような世界観と表現力があるので、最後までこの世界観に没頭しながら読むことができました。また、作品全体的にテンポ感があり非常に読みやすいですし、揺れ動く感情なども鮮明でとても共感しやすかったです。(30代男性)

気持ち悪く乱暴な思春期の物語

清く正しく爽やかな青春小説ではありません。もっと生々しく乱暴な思春期の物語です。思春期にしか感じる事のできない不器用でやや気持ちの悪い性衝動が表現されています。これは恋愛の話ではありません。思春期の感情はとても複雑で愛だの恋だのそんな簡潔な言葉で表現出来るものではないようです。主人公たちが思春期でなければこれはステキな恋愛小説になっていたはずです。(30代女性)

孤独を抱えた女子学生の複雑な恋心

この小説の主人公と同じく私も教室で1人でいた時期があったので、共感しすぎて切なくなりました。誰かと親密なりたい、でも人と携わるのは煩わしい。そんな心理描写が巧みに描かれています。学生の男女関係がメインとなりますが、主人公が素直になれなくて、同級生の男子に対する愛しいような憎いようなという複雑な恋心を抱くのがまた学生時代の自分を思い出して泣けてきます。(30代女性)

「蹴りたい背中」の関連テーマ

「ブラックボックス」砂川文次

ブラックボックス
《あらすじ》を見る

社会に馴染めない主人公の苦悩や葛藤が伝わってくる

最初は暴力的な主人公に対してややひいた視点で見ていたのですが、社会になかなか馴染めない主人公の苦悩が露になってからはどんどん物語の世界に引き込まれていきました。本当はダメだと分かっているのに自分の感情を抑えられない葛藤もリアルに伝わってきて、心情描写が細かくて分かりやすいです。もしかしたらこういう人は世の中にたくさんいるのかもしれないという現実感があるところも、この作品の魅力だと思いました。(20代男性)

「蛇にピアス」金原ひとみ

蛇にピアス

<あらすじ>
「スプリットタンって知ってる?」そう言って、男は蛇のように二つに割れた舌を出した―。その男アマと同棲しながらサディストの彫り師シバとも関係をもつルイ。彼女は自らも舌にピアスを入れ、刺青を彫り、「身体改造」にはまっていく。痛みと快楽、暴力と死、激しい愛と絶望。今を生きる者たちの生の本質を鮮烈に描き、すばる文学賞と芥川賞を受賞した、金原ひとみの衝撃のデビュー作。

痛みだけがリアルだと思う女の子の話

主人公のルイは彼氏アマの紹介でシバさんに出会い、シバさんにスプリットタンにしてもらったり、入れ墨を入れ始めながらアマと幸せな生活もスタートさせますが、幸せは長く続きませんでした。ミステリー小説ではないので、事件が解決することは無く、モヤっとした終わり方で、一体なぜだ、という疑問が残り、余計に心に残ったように思います。(50代女性)

「海峡の光」辻仁成

海峡の光

<あらすじ>
廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。少年の日、優等生の仮面の下で、残酷に私を苦しめ続けたあいつが。傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。そして今、監視する私と監視されるあいつは、船舶訓練の実習に出るところだ。光を食べて黒々とうねる、生命体のような海へ…。海峡に揺らめく人生の暗流。芥川賞受賞。

人間存在とは結局他者との関わりである事を描いた作品

「人間存在の本質に迫った作品」という選考者の発言をよく覚えていますが、だからと言って身構える必要もありません。言葉は少々悪いですが、「読み物」としても気軽にお勧め出来る作品です。
某施設の職員である「私」、私と浅からぬ因縁を持つとある収容者。常に「私」の視点で施設の日常や収容者の様子が物語として綴られるわけですが、元々、音楽出身の方で作詞も手掛けていたせいか、言葉の操り方が上手い。
勿論、単なる日記に留まらない文学性を内包しているのも言わずもながです。支配する筈の側が実際に心を囚われている、というのはよくある話ですが、人とは、移動等の制限がなければ自由なのか、逆を言えば、身体的制約があると即不自由なのか。

そして、この作品では、とある「台詞」が終盤の展開に大いに関連していくことになります。それは、内面の自由、矜持とも言える物でもあり、他者との関係において、自身の存在意義に関わる譲れない事柄でもあります。
本作も最終的には、自分と他人との位置付けという普遍的な主題に行き着く作品とも解釈出来るわけですが、深堀せずとも、美文に導かれるまま、物語の筋を追うだけでも充分楽しめる一冊だと思います。(50代男性)

「火花」又吉直樹

火花

《あらすじ》
売れない芸人の徳永は、、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。
神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。
笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。

漫才師のお話なので、漫才シーンがあります。その漫才がめちゃくちゃ面白いです。読んで理解する前に、ページを埋める字面が視界に入っただけで面白くて笑えます。日常の会話シーンでボケはじめる主人公とツッコミを入れる相方や、主人公の師匠との会話シーンも笑えます。
漫才師の夢を追う若者たちの青春小説で、笑えるシーンだけでなく、胸が痛くなるようなシーンもある、人間を描いている小説です。(20代女性)

「限りなく透明に近いブルー」村上龍

限りなく透明に近いブルー

<あらすじ>
1976年、24歳にして芥川賞、群像新人賞を受賞した村上龍のデビュー作『限りなく透明に近いブルー』。基地の街、福生(ふっさ)で暮らす若い男女の荒廃した日々を描いた本作品は、その衝撃的な内容と斬新な表現方法で、当時の文芸界に大きな衝撃を与えた。発売から40年以上経った今でも色褪せることなく、幅広い世代に支持を得ている、村上龍の代表作。

アパートの一室で、仲間たちとのクスリやセックスや暴力で荒廃していく主人公の葛藤

初めて読んだのはかなり昔で、当時さっぱり分からなかったのですが、30代になって改めて読んでその世界観にすごく惹かれた作品です。当時はよくわからなかったものが、大人になって少しなにか見えた気がして、面白いと感じた小説です。
主人公のリュウの葛藤は、現実でも感じるものと似ている部分があると思います。それがこの小説に惹かれた最大のポイントだと思っています。作品は、アパートの一室で主人公リュウや複数の仲間たちがクスリやセックスや暴力などで荒廃していく状況が描かれていきます。主人公は仲間達の行動を、その部屋にいながらまるで別の所から見ているようでした。ストーリーをこうやって書いていても本当に不思議な小説だと思います。(30代男性)

福生でよく起こる、ある日常。それは渇きと衝撃

これが作者の体験した、青春の日常だとすると、今の落ち着いた思慮深げな姿からは想像できない強烈な日々を送っていた。その強烈な日々を、悪ぶるでもなく、自慢するでもなく、乾いたように淡々と描く内容には衝撃を受けました。次から次へと、色んな事象が起こる中、文中の登場人物に思い入れや情景を浮かべることができないのですが、最後の数ページで情景が目に浮かぶところに心を掴まれました。(50代女性)

「葬送」平野啓一郎

葬送
《あらすじ》を見る

ショパンとドラクロワの交流

ショパンと画家のドラクロワの時代の二人の交流を通して1世紀前のヨーロッパが描かれる秀作。作家の平野啓一郎は、人間心理の描写を得意としており、この作品でも登場人物や歴史的事実に関する考察が鋭く描かれている。日本の作家の中でも、古典文学から現代劇までの作品を手がけられるのは彼くらいだろう。それくらい貴重な作家です。(40代男性)

「闘牛」井上靖

闘牛

《あらすじ》
社運を賭した闘牛大会の実現に奔走する中年の新聞記者の情熱と、その行動の裏側にひそむ孤独な心情を、敗戦直後の混乱した世相のなかに描く芥川賞受賞作の『闘牛』。

日本国内で闘牛のイベントを成功させようとする物語

芥川賞受賞作品は堅苦しい純文学というイメージを持たれているかたにも井上靖が書いた「闘牛」は、おすすめしたいなぁと思えるほど、この小説は面白い作品でした。
なぜなら、小説として話の続きが気になる展開でストーリーが進んでいく、『純文学でありながら娯楽性も高い』というハイブリッドな作品だからです。
この小説は、主人公が日本国内で闘牛のイベントを成功させようと奮闘する姿を描いた物語です。
登場人物にはそれぞれの思惑があり、闘牛イベントに向けて、その思惑が交差していくさまは読んでいてドキドキすること間違いなしの大傑作です。(40代女性)

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